ホテルのエントランスを出た直後に転倒
インドネシアの(ソロ)スラカルタの2週間近い旅も、残りあと3日となった。
最終日は午後の早い時間の便でマレーシアのクアラルンプールに移動するので、実質的にはあと2日だ。
1日はソロの街歩きをもう一度楽しむことにして、この日はまだ未経験の鉄道に乗ってジョグジャカルタに行ってみることにした。
いつもはレストランで食べる朝食も抜いて早めに出かけることにし、もうすっかり顔なじみとなったドアマンに挨拶してホテルの建物を出て、前の通りに止まっているベチャ(タイで言うところのサームロー)に乗って鉄道駅に向かおうとスロープを歩き始めた途端にいきなり転倒してしまった。
何かにつまづいたわけでもなく転んだ理由がわからないのだが、とにかく不意だったので手をついてかばうこともできず、スロープを転がるように1~2m落ちただろうか。
一瞬何が起きたのかわからなかったが、とにかく立ち上がろうとすると足首に激しい痛みが走った、と同時アドレナリンがドッと出たのだろう、身体がものすごく熱くなってきた。
立ち上がりたいのだが自分の身体をコントロールできず、横座りのような形でしばらく動けずにいた。
ホテルのワンボックスカーで病院に運ばれる
幸いなことに転倒したのがホテルの敷地内だったので気がついたのだろう、ドアマンがしばらくすると駆け寄って来て「だいじょうぶですか?」と声をかけてくれた。
「だいじょうぶです」と答えたものの、いかんせん自分一人では立ち上がることができない。
その様子を見ていたドアマンがいったんホテルの建物に戻りスタッフを呼んでくれたようで、2~3人の男性がすぐにやって来た。
足首が痛くて動けないことを伝えると、ひとりがホテルから車いすを持って来て座らせてくれた。
まだ興奮しているのか事態を把握しきれていない自分に代わってスタッフが「病院に行ったほうがいいですよ。ホテルの自動車で連れていきますね」と言って、しばらくするとワンボックスカーを運転してやって来て、二人がかりで自分を車に乗せてから車いすも積み込んで走り始めた。
インドネシアの地方都市の病院のレベル、費用は?
着いたのは、ホテルから6~7分のところにある結構大きな病院だった。
おそらく、ホテルと提携か何かをしていて事前に連絡も行っていたのだろう、病院の前に車が着くと中から職員が出て来てスタッフと何ごとかを話すと、車いすを押して病院の中へと連れて行ってくれた。
もちろん、ホテルのスタッフも同行してくれる。
着いたのは、救急室(エマージェンシールーム)と思われた。
カウンターを中心にして周囲にカーテンで仕切られた病室が並んでいて、家族も付き添っているところが多かった。
すぐに、車いすからストレッチャーに移動、横に寝かされてしまった。
何か、すごい大ごとになってきたぞ……
看護婦と思われる女性がやってきて、検温と脈拍を計った後、怪我をした経緯などを確認しメモを取っていた。
この写真を見て改めて思ったのだけど、左の足首が思いっきり腫れてるなあ……
インドネシアだから当たり前だけど、看護婦の方もチャードルをかぶってるし、白衣ではなく聖なる緑色のコスチュームだった。
チェンマイ(タイ)の大きな病院だと、まず受付で真っ先にパスポートを確認(たぶん料金踏み倒し防止のため)されるのだがそれはなかった。
たぶん、外国人の患者が来ることなどめったにないのだと思う。
やることがないので、天井の写真を撮ってみた(笑)
しばらくすると医師の男性がやって来て、少し足首を動かしたりして痛みなどを確認すると、看護婦の女性に何かを指示した。
ストレッチャーが押され、別の場所に移動するようだ。
看護婦はまったく英語はできないようで、ホテルから付き添ってくれた2人のスタッフのうちのひとりも通訳代わりについて来てくれる。
着いたのは「検査室」と書かれた場所だったが、その後運ばれた部屋はレントゲン室だった。
何か、一昔二昔前という感じの機械で「これで撮影したら結果が出るまでどのくらい待たされるのだろう?」と思っていたのだが、撮影が終わると技師の人から(通訳代わりのホテルのスタッフ経由で)「15分か20分くらいで結果が出るので、医師から聞いてください」と言われホッとした。
実際には30分ほど通路のような場所で待たされることになった。
特にすることもなかったので、この時間を利用してチェンマイで加入していた海外旅行保険の会社(AIG)に電話して事務的な連絡をした(詳細は下記参照)。
いい加減待ちくたびれた頃、ストレッチャーが再び押されて元いたエマージェンシールームへと戻った。
すると医師の男性が現れて、レントゲンフィルムを見ながら「よかったですね。骨折はしていません。ねんざですので足首を動かせないよう固定します。痛み止めの薬も出しますので、それを飲んで2~3日安静にしていれば、歩けるようになるでしょう」と言って看護婦に何かを告げて去っていった。
それほど大ごとではないとわかって安心したのだろう、医師の説明を聞いたらドッと疲れが出て来てしまい、医師にお礼をすることもできないままに別れることとなった。
看護婦はすぐにサポーターを持って来て、足首にぐるぐる巻いて固定してくれた。
そして、それが終わるとどこかに行きしばらくすると戻って来て、レントゲンフィルムの入った紙の封筒と、何枚かの書類をホテルスタッフに渡して何やら話をした。
ホテルスタッフは「処方箋が出たので、薬をもらって来るから少し待っていてください」と言い、外に出て行った。
後でわかったのだが、病院の出入口の脇に薬局がありそこで処方箋を出して薬をもらってきてくれたのだった。
ちなみに、薬代は病院の請求に含まれていて薬局での支払いはなかった。
付き添ってくれたホテルのスタッフは「これで、後は支払いを済ませれば終わりですよ」と言った。
ここまでまったく費用の話は出なかったのだが、生まれて初めてのインドネシアの旅でかかる額についての知識などまったくないし「さあ、いくら請求されるだろう。まあ、メチャクチャ高い金額言われてもこれだけ大きな病院ならクレジットカードも使えるだろう」とあまり心配せずに車いすを押されて会計カウンターへと向かった。
そして、カウンターの前でホテルのスタッフに見せられた会計の伝票に書かれていたのは……
換算したら、700THB(約2,380JPY)ちょっと。
レントゲン撮ってサポーター支給され巻いてもらって、薬代も含めてこの値段。
チェンマイでこのクラスの病院に救急で運ばれて治療を受けたらいくらくらいになるのだろうか?
正確にはわからないけれど、絶対に700THBってことはないと思う。
病院内で付き添ってくれたホテルスタッフとは別に病院まで来てくれたスタッフは駐車場のホテルのワンボックスカーの中で待っていてくれたのか、支払いが終わって病院のドアを出たら正面に車を止めて待ち受けてくれていた。
ホテルに戻り、車を降りる時に2人のスタッフにチップを渡そうとしたのだが、受け取ってもらえなかった。
そして、車を降りて車いすに乗るとホテルの入口のドアの前にはいかにもマネージャーという感じの女性が立って迎えてくれた。
ホテルは、自分のために朝食を用意してくれていた
マネージャーとおぼしき女性は「お帰りなさい。怪我が大したことなくてよかったですね。朝食はまだでしょう?もうレストランは閉まっているのですが、あなたのために料理を少し残しておいたので食べてください」と言い、スタッフに何かを指示すると自分の乗った車いすは朝食会場のレストランへと向かった。
確かに、今日はジョグジャカルタに行くつもりで朝食を抜いていたので、病院から戻って安心したせいもあって急激にお腹が空いていた。
レストランに着くと、もう客は誰もおらず少人数のスタッフが後片付けをしていたのだが、一角のテーブルにいくつかの皿が広げられていた。
皿には、トーストやベーコンを添えた目玉焼きや野菜のソテーが乗せられ、オレンジジュースの入ったグラスやコーヒーポットも置かれていた。
女性は自分の向かい側に座ると、自分が朝食を食べている間ずっと付き合ってくれて、いろいろと話をした。
自分がノボテルが属するアコーグループの会員であることを知っていて、どうやらそれで色々と特別に取り計らってくれたようだ。
普段はあまり利用することのないアコーグループのメンバーシップだけど、こういう時には意外な効力を発揮する(ホテルによるのだろうが)のだとちょっとビックリすると同時に改めてファンになってしまった。
食事が終わると、「何か必要なことがあれば、いつでも部屋から電話してください。食事もルームサービスが24時間使えるから遠慮しないでくださいね」と言って去っていった。
その後はまたスタッフが車いすを押してくれて、部屋に戻ったのだった。
タイの海外旅行保険会社(AIG)は親切だった
自分は、チェンマイからタイ国外に旅行する時に必ず海外旅行保険に加入している。
今まで実際に使ったことはなかったのだが、今回旅行先で怪我をしてしまい「もしかしたら使うことになるかも」と思い、病院でレントゲン検査の結果が出るのを待つ間に加入していた海外旅行保険の会社(AIG)に電話をした。
AIGのコールセンターには英語の窓口があり、オペレーターにつながると今インドネシアのソロ(スラカルタ)にいるのだが、転んで足を怪我してしまい病院で検査中だと伝えると、先方は病院の名前をたずねてきた。
病院の名前を伝えるとしばらく間があってから「AIGで提携している病院ではなくキャッシュレス対応できないので、診断書と領収書をもらってタイに戻ったらエージェントに渡してください。そうすれば、あとはこちらですべて処理します」と言った。
診断書の用紙は保険に加入する際エージェントの方からもらっていたのだが、どのタイミングで作成を依頼すればいいかわからず(自分では自由に動けなかったし)、結局会計まで持ち歩いてしまったのだが、支払額が700THBちょっとで拍子抜けするほど安く、ヘタをすると診断書作成費のほうが高くついてしまうのではないかと思い、今回は保険を使わないことにして病院を退出した。
個人的には海外旅行保険の件はこれで終わりだったのだが、ホテルに戻って部屋で静養していたら午後になって保険会社から電話があり「その後、病院のほうはいかがでしたか?何か困ったことはないですか?」とたずねられた。
経緯を説明し、「今回は保険は使わないのでだいじょうぶです。ありがとう」と言うと、オペレーターの女性は「怪我がひどくなくて、費用も安くてよかったですね。保険の件は了解しました。もし、何か困ることがあったらいつでも連絡してください」と言ってくれた。
日本の海外旅行保険会社に病気や怪我をして連絡をした経験がないので本当のところはわからないが、わざわざこのような電話をしてきてくれることがあるのだろうか?
個人的にはAIGに対する評価はこれで爆上がりで、タイから国外旅行に出る時には次からも保険はこの会社を使おう、と改めて思ったのだった。
カードを持っているだけで海外旅行保険が使えるこういう時は、やはり大きいホテルでよかったと思う
今住んでいるタイのチェンマイやずっと昔に住んでいたネパールのカトマンズで病院に行ったことはあるけれど、どちらもその土地の事情がある程度わかっていたのに加え、助けてくれる友人知人がいたとか、ある程度言葉ができた(チェンマイだと主要な病院には日本語通訳の方もいらっしゃる)とかでそれほど不安に思ったり不便を感じたりしたことはなかった。
が、今回はまったく初めて訪れた場所を一人旅している途中で、「歩けなくなってしまうかも=もしかしたら予定通りチェンマイに戻れないかも」というかなり心細い状況だった。
が、実際のところは怪我をしたのがホテルの敷地内だったということが幸いして、直後からホテルのスタッフたちがほぼつきっきりでサポートしてくれたおかげで、途中からはまったく心配するようなことはなかった。
今回は、アコーグループの会員だったということもあってノボテルが特段のサービスをしてくれた部分もあったようだが、ちゃんと車いすが用意されていてそれがサッと出てくる、病院と連携していてすぐに車で連れて行ってくれて検査・治療中ずっとアテンドしてくれるなどなど……は、やはり大きなホテルだけのことはあると思う。
そもそも、20代の頃にしていたようなゲストハウスに泊まっての安旅行には身体的にも精神的にももう耐えられないが、今回の一件でますますその思いを強くしたのだった。
最後になるが、ねんざのほうは2日ほど静養したら自力で歩けるようになり、ソロ(スラカルタ)、乗り継ぎのマレーシアのクアラルンプール、チェンマイの空港ではいずれも事前に車いすを手配してそれに乗ったものの、何とか予定通りタイに帰国することができた。
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