カトマンズ観光では絶対はずせない国内最大の仏塔
盆地の中に3つ(パタンの衛星都市だったキルティプールを別に数えれば4つ)の街があり、かつては別々の王都だったネパールの首都カトマンズは、自分が住むタイのチェンマイも太刀打ちできないほどの歴史的建造物や芸術品にあふれていて、ユネスコもカトマンズの盆地(渓谷)全体を世界遺産として登録しているほどだ。
ユネスコがカトマンズ盆地(渓谷)を世界遺産に登録した理由としてヒンドゥー教や仏教、その他土着の宗教が融合し独特な文化が作られていることを挙げているが、その大きな構成要素のひとつとしてチベット仏教ははずせないだろう。
カトマンズはチベット(ラサ)と古くから結びつきがあり、あまり知られてはいないがラサのポタラ宮は建物も内部の仏像などもそのほとんどはカトマンズの先住民族であるネワール族の職人が現地に行って作ったものだ。
また、中国が侵略するまではさまざまな物資も両都市にインドのコルカタを加えた3点交易を担ったネワール商人(キャラバン)によって運ばれていたことからもその関係性はわかるだろう。
そんな人や文化が行き来するカトマンズにチベット仏教の建造物はそれこそ数えきれないほどあるのだろうが、チベット人にとっての「盆地の三大聖地」と呼ばれている場所がある。
そのうちのひとつが今回紹介する「ボダナート」だ(あとの二つはスワヤンブナートとナモブッダ)。
眼が描かれた仏塔の写真はネパールを象徴するものとしてしばしば使われるなど、カトマンズを訪れる旅行者にとっては絶対にはずせないスポットと言っていいだろう。
市内から8km東。バスもあるが楽なのはタクシー
カトマンズの先住民族ネワール人からは「ボウダー」と呼ばれるボダナートは、カトマンズのタメルからだとおよそ7km東にある。
昔は自転車での往復にちょうど良い距離だったのだが、今は自動車やバイクが増えてしまって危険すぎてとてもサイクリングなどできない。
一番安上がりに行く方法は、ラニポカリの北にあるジャマルの停留所から乗り合いバスになるだろうか。
バスと言っても普通のバスもあればワンボックスカーもあり、その時に来たものに乗ることになる(帰路も同じ)。
インド亜大陸の貧乏旅行に慣れている、あるいは自分のようにネパールに住んだことがあるような人ならともかく、普通の旅行者にはこの手の乗り合いバスはかなりハードルが高いだろう(そもそもボダナートに行く車を見つけて乗り込むまでが大変)。
なので、市内との移動は個人的にはタクシーをおすすめしたい。
タメルあたりで客待ちしているようなタクシーだとたぶん相当高いことを言ってくるだろうが、普通であれば500~600NPR(2024年1月のレートで約550~660JPY)前後ではないだろうか。
道路の混雑状況にもよるが、市内から30分くらいはかかるだろう。
【動画】カトマンズ市内の道路の混沌とした様子
途中の道はタイなどとはまた違った種類の狂乱・混沌ぶりで、タクシーの車窓からその様子を眺めていればあっという間に着いてしまうに違いない。
仏塔の周囲は必ず時計回りに歩く
車は何に乗って来てもボダナートの正面入口付近に止まる。
その辺を歩いている人はたいていボダナートにお詣りに来た人たちなので、何となく人の流れについていけば仏塔の入口がわかるはずだ。
門をくぐると正面に仏塔が見える。
仏塔に近づいていくと料金所があるので入場料を支払ってから先に進もう。
大通りから一部だけが見えている時も大きさは感じられるが、仏塔のほぼ直下まで来るとそれはより実感できるだろう。
高さがおよそ36mもある仏塔は3層の基壇と直径約27mの石造りの塔部で構成されている。
ボダナートの起源は明らかではない。
歴史的にボダナートはカトマンズとチベットのラサとを結ぶ交易路上にあり、過酷なヒマラヤ越えを前にして人々が旅の安全を祈った場所とされている(最初の宿場町はさらに東のサンクーという村)。
しかしながら、ボダナート周辺はずっと昔からタマン族(低地山間部に住む主にポーターを生業としていた人々)が住んでおり、チベット人がこのあたりに住み始めたのは1959年の中国によるチベット侵略を受けて逃れて来たのが最初だ。
パタンにもあるが、彼らは難民村を作ってチベットに住んでいた頃と同様信仰生活をベースに仏具や装飾品、カーペットなどの工芸品を製造販売しつつ今日までここで暮らしている。
さて、仏塔の直下まで来たら他のチベット人と同じように周囲を回ってお詣りしよう。
なお(チベット)仏教では右を「聖」、左を「俗」としており仏塔に「俗(=我)」を見せないようにするため、必ず時計回りに歩かなければならない。
自分が暮らしているタイでも同じルールがあるが、当地の仏教ほど厳格ではない。
ここでは皆にしたがって、周りを眺めながらゆっくりと歩いてみよう。
【動画】ボダナートの周りを1周する
仏塔を取り巻く塀にはマニ車がある。
時計回りに回転させるとその数だけお経を読んだことになる(マニ車の中にお経がプリントされた紙が入っている)ので、一部だけでもやってみよう。
仏塔はひとつだけではなく、周囲にいくつもの小さなものをしたがえている。
角度によって、さまざまな表情を見ることができるだろう。
また、仏塔は基壇(4層あるうちの一番下)の上に登ることができる。
ここからの景色はまたぜんぜん違うので、ぜひ上がってみよう。
仏塔北側の一角には、五体投地を行うチベットの人々用のスペースがある。
以前は五体投地をしながら仏塔を回る人たちも多かったのだが、もしかしたら何か規制とかが入ったのか最近は見なくなってここに集中している。
本当に熱心なチベット人信者はここに来るまでの道のりも五体投地しながらだったりするのだが、さすがに近年はここ以外で五体投地している人は見ることがない。
ネパールでもなかなか目にすることができない光景だ。
仏塔の周囲はお土産物屋やカフェ、レストランなどがびっしり並んでいるが、ところどころにゴンパ(僧院)がある。
ゴンパ(僧院)はサキャ派、ゲーリック派、カギュー派など宗派に分かれて建っている。
入口近くには巨大な摩鈴やマニ車がありこちらもお詣りする人が絶えない。
周囲のチベット式ゴンパ(僧院)も見てみよう
ボダナートの仏塔から北に抜ける路地を進むと、チベット仏教のゴンパ(僧院)が立ち並んでいる。
ゴンパ(僧院)は宗派によって分かれており、さらに同じ地域出身者が集まる(特にカムパと呼ばれる東チベット人)ものもあったりする。
中国に侵略されたチベットはもちろん亡命政府があるダラムサラ(インド)もビザの条件が厳しくチベット仏教の修行をしようとする人々は必然的にここに集まるようになった。
多くのゴンパ(僧院)は外国人の修行者にも門戸を開放していて、自分が初めてここを訪れた1981年でもすでに珍しくはなかったが、サフラン色の僧衣に身を包んだ欧米人の修行者をたくさん見かける。
ゴンパ(僧院)は寺院ではないので何か特別なものがあるわけでもないが、建物の雰囲気やさまざまな装飾はどこか日本の寺院とかにも共通するものがありホッとさせられる。
ボダナートに来たら、ぜひ時間をとって散策しよう。
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