一人でも使えるチェンマイの街中華食堂
チェンマイ(タイ)にいると、「一人だと量が多かったりして食べるのがむずかしい料理」というものが実は結構あり、その筆頭が本格的なシーフードや中華料理だ。
シーフードレストランで「魚の丸揚げを半身だけくれ」というオーダーはまず相手にされないし、中華料理の店でスープを頼んだらそれだけでお腹がガボガボになってしまう。
後者について言えば、料理がすっかりタイ化した「アーハーンタームサン(อาหารตามสั่ง=客の注文に応じて料理を作ってくれる安食堂)」であればそれなりのものは食べることができるが、それだとどうしてもぶっかけ飯の類になってしまい、「中華料理を食べた~」という気分にはならないだろう。
お粥屋という手もないわけではないが、その手の店のおかずはやはりお粥向けに特化されており、これまた100%の満足感は得にくい。
今回紹介するティパロット(味露飯店)は、そんなニッチな(?)希望に応えてくれる食事処だ。
見た目こそオープンエアで飾り気がないものの、カーオパット(炒飯)を筆頭にどの料理も満足度が高い上に値段も安く、レストランというよりも「街中華食堂」といった感じで気軽に楽しめる。
そして、一品の量が多くないので一人で食事に来ている人も多い。
自分が一人で行った時の食事は、こんな感じだ。
もともとはお堀の東辺外側を走るチャイヤプーム通りのちょうどソムペット市場からお堀をはさんだ向かいあたりにあり、小さくて目立たないが常にお客でいっぱいだったのだが、再開発(現在その場所は小さなショッピングモールになっている)に伴い2005年に現在の場所に移転してきた。
自分は旧店時代からよく行くお気に入りだったのがある日突然なくなってしまい残念に思っていたところ、市内をドライブ中に偶然ここに移って来ているのを見つけ、それ以来駐車がしやすくなったこともあり、さらに頻繁に行くようになっている。
ターペー通りから徒歩でもアクセス可能
店は、チェンマイ市内やや北部のラタナコーシン通り沿いにある。
ピン川にかかるラタナコーシン橋西詰の信号のある交差点を背にして、30~40m行った左側だ。
ターペー門からだと、まっすぐ北に向かいお濠北東角(チェーンシープーム)からアサダートン通りに入り最初の信号を右折、ナイトバザールからならピン川沿いにずっと上流方向に向かうとラタナコーシン橋西詰に行きつく。
ただし、いずれも車両の場合は一方通行の関係で一直線には進めない。
通りに向かって旧店でも掲げていた大きく「味露飯店」と書かれた赤い看板が出ており、店の前には車やバイクが常に何台も止まっているのですぐに見つけることができるだろう。
半オープンエアの店内。好きなところに座ろう
店舗は、大きく店舗裏の狭い駐車場に通じる道をはさんで左右に分かれている。
向かって右側は従来からある半オープンエアの席、左側は2012年にできたエアコンつきのVIPルームだ。
前者は金属製のテーブルとプラスチックのイスで、清潔感がある。
壁のところどころには扇風機が取り付けられているので、暑い時には風のあたる席に座ったほうがよい。
後者は、「VIPルーム」と呼ぶのが恥ずかしくなるくらいのシンプルな造りで、小学校の教室を半分くらいにした程度のワンルーム。
一応利用料がかかるのだが、ひとりあたり5THBとタダみたいなものだ。
こちらはたぶん予約して来店したのだろう、大人数のお客さんが座っていることが多い。
英語や日本語併記のメニューがあったのだが……
メニューは、以前は英語併記や日本人のお客さんが作ってくれたという日本語併記のものがあったのだが、現在はタイ語オンリーのものと中国語併記のものだけになっているようだ。
外国人とわかる(中国人と勘違いされる)と中国語併記のメニューを持って来るかもしれないが、載っている料理はタイ語のものの1/4くらいなので、タイ語ができないと選択肢が狭まってしまうかもしれない。
オープンエアの席の奥にあるキッチンの前には色々な食材が並んでおり、それを指差して料理法を指定して注文することもできるが、店員は忙しそうにしていることも多くあまり愛想よくかまってはもらえない。
また、キッチンの脇には大きな蒸し器が置かれており、その中にはスープのどんぶりが入っている。
中に何が入っているかはすぐそばの柱につけられたプレートに書いてある(下の写真だとニガウリと豚スペアリブの蒸しスープ)。
メニューにはトムヤムスープやヤムウンセン(春雨の和え物)などタイ料理もあるが、特においしいわけでもないのでこの店ではやはり中華だけをオーダーすることをおすすめする。
おすすめ料理……何はなくともまずカーオパット(炒飯)!
タイ語のメニューにはそれだけが独立して掲載されていることからもわかる通り、この店の最大のウリは何と言ってもカーオパット(炒飯)だ。
ムー(豚肉)、ガイ(鶏肉)、クン(エビ)、プー(カニ)などから具を選ぶことができるが、中でもカニチャーハンがピカイチだ。
カニの風味が濃く、ご飯はパラパラに仕上がっているのに具はしっとりとして重量感を失っておらず、絶妙な全体のバランスにはいつ行っても言葉が出ないくらいの感動を受ける。
屋台や一般の店で出されるカーオパット(炒飯)の多くが、具の切り方が大雑把なためにご飯との釣り合いが取れていなかったり、トマトの水分が出てしまいベチャッとなってしまっているのに対して、この店では写真でもわかる通りトマトは使わずメインを含めたそれぞれの具は細かく切られ、米とのバランスが考えられている。
そして、おそらく何よりも火の扱い方がすばらしいのだろう。
サイズは大中小あるが、ほかの料理も食べることを考えれば2人なら小で充分だ。
唯一の問題点としては油にピーナツオイルを使っていることで、その風味が苦手な人(結構多い)は残念ながら自分とはまったく逆の評価を下しているので、該当する方はこの店は避けたほうが無難かもしれない。
カーオパット(炒飯)の次に気に入っているのは、豚レバーとニラのつぼみ(ดอกกุ้ยช่าย=ドーククイチャーイ)の炒めものだ。
中華式ニラレバと呼べばいいだろうか。
自分は旅行者時代にこの店で初めてニラのつぼみという食材を知ったのだが、見た目はニンニクの芽にもちょっと似ているもののそれよりもずっと柔らかく、日本で普段食べられているニラの葉よりもずっと繊細な香りと味がする。
それにこれまた柔らかなレバーのスライスを組み合わせて炒め、醤油ベースのタレにからめたこの料理はまさにレバニラそのもの(これが日本のもののルーツ?)だが、そのおいしさは日本のそれを完全に凌駕している。
カーオパット(炒飯)を頼んでいても思わず「白いご飯ください!」と叫びたくなる味だ(笑)
そのすばらしい出来ばえを生んでいるのは何なのだろうか、と食べるたびにいつも考えるのだが、やはりひとつにはカーオパット(炒飯)にも共通する火の扱い方にあるのではないかと推測しているのだが、どうだろう?
ほかの一品料理も中華系なら何を頼んでもたいていレベルの高いものが出て来て期待はずれだったことがないが、以下に写真で紹介するので参考にしてほしい。
豚バラ肉のカリカリ揚げとカイラン菜の炒めもの
ニガウリと豚スペアリブの蒸しスープ
豚骨と大根の蒸しスープ
豚三枚肉のカリカリ揚げと黄ニラの炒めもの
ホーイチョー(カニ肉の湯葉巻き揚げ)
ティラピアの丸揚げ唐辛子あんかけ
プラームックパットポンカリー(イカのカレー粉炒め)
ムートートクラティアム(豚スペアリブのニンニク揚げ)
パットホーイラーイ(タイあさりのミント炒め)
きくらげの卵炒め
土曜日や休日前は早めの来店を
ナイトバザールやターペー門など市内中心部から少々離れてはいるものの、歩けないことはない程度の距離の場所にあり、ピン川のすぐそばで大通りに面しているのでチェンマイが初めての旅行者でも行きやすい。
客のほとんどは中国系タイ人で、テーブルをつなげておじいさんおばあさんから赤ちゃんまで、一家全員で食事に来ているのを目にすることもしばしばだ。
営業時間は17時~23時となっているが、土曜や休日前などは19時過ぎに行くと満席のこともあるほか、遅い時間になると一部の食材が品切れになってしまうこともしばしばなので、なるべくなら早い時間に行ったほうがいい。
チェンマイにはすばらしい味と雰囲気の高級中華料理レストランも何軒かあるが、冒頭に記した通りやはり中華料理なので人数が揃わないとなかなか敷居が高い。
が、このティパロット(味露飯店)は写真を見てもわかる通り一品の量が少ないので、少人数はもちろん一人で行っても十分料理を楽しむことができるだろう。
値段もリーズナブルなので、ぜひ気軽に食べに行ってみよう。
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