急速に都市化が進んでいるチェンマイ。
お濠の中の旧市街やその周辺に残っていた古い建物はどんどん取り壊されて、新しいものへと置き換わっている。
ちなみにこの2~3年、お濠の中に次から次へと新しいホテルがオープンしているが、その多くはもともと住んでいた地主から土地を買い上げて建てたもので、土地を売った地主は大金を手にして郊外(とりわけチェンマイの東隣の街サンカムペーンに通じるバイパスの国道1317号線沿いの高級分譲住宅が人気らしい)の一軒家に住んで悠々自適の暮らしをする、というパターンが多いそうだ。
確かに、自分は一時期この国道1317号線と第2環状道路(国道3029号線)が交わるシーブア ングン パタナー交差点近くのスポーツジムに通っていたのだが、平日の昼間でもベンツやBMWに乗った人(若い人もいれば中高年もいる)がガンガンやって来るので「この辺のムーバーン(分譲住宅街)に住んでいるんだろうけど、いったい何の仕事しているのだろう???」といぶかしく思っていたのだが、もしかしたらこうしたいわゆる「土地成金」で暇を持て余していたのかもしれない。
余談はさておき、ある日チェンマイ市内のチャーンプアック門近くをバイクで走っていたら、ものすごく懐かしくなるような建物を見つけた。
このような、前面がすべて板張りの建物は、チェンマイに限らず田舎の小さな街に行っても本当に見かけることが少なくなってしまった。
入口の上にかかっている看板も、実にレトロな感じだ。
外観だけではない。
売っているものも実にレトロな感じだ。
モーディン(หม้อดิน……土鍋)や木を編んで作ったカゴなどが中心で、いま巷にあふれているプラスチック製の安い雑貨がほとんど見えない。
この手の土鍋とかを今も日常的に使っている普通の家はたぶん皆無で、市場のおかず屋や街なかのノムセン(カノムチン=タイ素麺)屋がディスプレイがわりに使っている程度ではないだろうか。
あまりに懐かしいので店の前にバイクを停めて見ていたら、店の奥から女性が出てきた。
「ごめんなさい。買い物がしたいわけじゃなくて、あまりに建物が古くて懐かしかったのでついつい見とれていました」と言うと、「そうだったの。それなら中も見ていく?」と招いてくれた。
お言葉に甘えて店の中を見せてもらいながら女性と話をしていたら、何とこの家は今から96年前に建てられたものだという。
店の中は、外観ほど古めかしくはなかったが、やはり年季を感じさせる。
話をしていると、生まれた時から住んでいるというおばさんの言葉の端々から、この歴史ある家に対する愛情が伝わってくる。
しかし、当たり前だが老朽化がかなり進んでおり、使いにくい(住みにくい)ということもあって現在売りに出しているとのこと。
だがなかなかいい買い手が見つからないらしく「日本人はお金持ちでしょ? よかったら買いませんか」と冗談ぽく言うおばさんの表情は、どことなく悲しげなカンジだった。
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