タイの重要な仏教祝日アーサーラハブーチャ(三宝節)とは
昨日、7月**日は太陰暦8月の満月の日で、タイでは「アーサーラハブーチャ」と呼ばれる重要な仏教祝日であった。
日本語で「三宝節」と呼ばれるこの日は、お釈迦様が悟りを開いた後にサールナート(鹿野苑。現インドのウッタル・プラデーシュ州)で初めて仏教の教義を説き(初転法輪)最初の子弟ができた日で、これにより、仏・法・僧の三宝が揃った日ということで、人々はそれを祝って寺院にお参りに行く。
この三宝は、すなわち悟りを得た仏陀がいたとしてもその教えである法がなければ、そして仏と法が存在したとしてもそれを聞きさらに広めていく僧(修行する出家者)がいなければ教義を伝えていくことができないということで、仏教を構成する最も基本的な要素と考えられている。
ちなみに、タイで寺院などにお参りに行くと、人々が仏像の前にひれ伏して3回地面に頭をつけるようにしてお祈りをしているのを見かけることがあるが、これはその三宝に祈りを捧げるという意味がある。
また、自分が昔住んでいたネパールの首都カトマンズに住むネワール族(多くが大乗仏教徒)の人たちの間でも、同様に三宝節を祝うお祭り(マチェンドラナート)があり、街の中を練り歩く山車を見に行ったりした記憶がある。
盛大に祝うタイヤイ(シャン族)寺院ワット・パーパオへ
この日の寺院はどこでもお参りの人でにぎわっているが、とりわけタイヤイ(シャン族)がこの日を盛大に祝うとということで、自分は毎年チェンマイ市内中心部、お濠の外側北辺にあるタイヤイ(シャン族)寺院、ワット・パーパオに行くことにしている。
昨年はあいにく雨が降ってしまったので行くことができず、自宅の近所の寺院でお参りをしたので、今年は2年ぶりの訪問だ。
例年、寺院の前のお濠沿いの通りはチェンマイ各地から大勢のタイヤイ(シャン族)の人達がソンテウ(乗り合いピックアップトラック)をチャーターしてやってくるため大混雑となる。
今年は、それを避けるためほぼお濠をはさんだ向かい側の道路脇にバイクを止めることにした。
それでも、空いている場所を探すのに少し苦労したのだが。
バイクを降りたら、歩いてお濠を渡って寺院に向かう。
お濠の土手の日陰には、寺院にやって来たタイヤイ(シャン族)の人が座って休んでいた。
寺院の一帯の通りはソンテウ(乗り合いピックアップトラック)がずらりと駐車していて、予想通り大渋滞となっていた。
お濠の内側とを結ぶ道路は自動車通行止めになっており、警官が何人も出て交通整理にあたっている。
ワット・パーパオは入口に建つ楼門も、一般のタイ様式とは異なる。
門を抜けて早速中に入ると、やはり今年も人が大勢出ていた。
中央遠景に見えるのが本堂だが、こちらももちろんタイヤイ(シャン族)様式だ。
個人的にこの寺院で一番好きな、半分埋まって傾いた仏塔門。
毎年のことだが、タイヤイ(シャン族)の民族衣装を着飾ってお参りに来ている人がとても多い。
衣装だけでなく、実は顔立ちも一般的なタイ人とは微妙に異なっている。
判別がつくようになると気がつくのだが、チェンマイの食堂の店員、市場やショップの売り子、建設現場や田畑などで働く肉体労働者などには実にタイヤイ(シャン族)が多い。
タイ人がもはや就きたがらないいわゆる3K(きつい・汚い・危険)労働、あるいは給料の安い仕事などはおよそタイヤイ(シャン族)がいなければ成り立たなくなっているように思う。
そんな過酷な仕事に携わる彼らが、貴重な休みで仏教の日を祝うために目いっぱいオシャレをして来ている、というところだろうか。
色々な色柄の民族衣装を身にまとった彼ら彼女らを眺めながら、本堂の中に入って、本尊にお参りする。
本堂の中にも、やはり大勢の人がいた。
本堂の中央に安置された仏像もやはり顔立ちが普通のタイ様式とは異なる。
仏像の前には僧侶が座り、供物を受け取り人々に祈りを捧げていた。
自分も、持って来たサンカターン(สังฆทาน=供物)を捧げ、ラップポン(รับพร=お経を唱えてもらう。直訳すると「祝福を受ける」という意味)したらお参りは終了だ。
境内に出ている露店を冷かして歩く
本堂を出たら、境内に並んでいる露店を冷かして歩く。
こちらも、すごい人出である。
売られているTシャツにはミャンマー語が書かれている。
着心地は???だが、日本からの旅行者にとっては珍しくていいお土産になりそうなアイテムだ。
ミャンマーにはシャン州という州があることことからもわかる通り大勢のタイヤイ(シャン族)が住んでいるが、ミャンマー政府によって同化政策が進められ、教育などはすべてミャンマー語で行われているほか、役所などで使われるのもミャンマー語になっている。
そのため、タイヤイ(シャン族)といえどもタイヤイ(シャン族)語のできない人が若者を中心に増えているらしい。
自分たちの国を持たない民族の悲しさだ。
お参りにやって来た人々が着ているような民族衣装も売られている。
日本の縁日にも出ていそうな射的屋。
タイヤイ(シャン族)料理を食べる
自分がこのワット・パーパオに来る理由はもちろんお参りもあるのだが、タイヤイ(シャン族)料理が食べられる、というのも大きい。
大勢のお参り客を見越して、境内の一角には毎年タイヤイ(シャン族)料理を出す露店が軒を連ねている。
もともと炊事の設備などまったくない寺院の境内なので、見た目に「これは衛生的にどうなのよ???」と思うような店もあったりして、毎回ひと通り見て回ってから食べる店を決めることにしている。
今年も同じように何軒かを見て回ったが、ひときわ清潔そうな店があった。
店の大半は、客が多くて手が回らないのかテーブルの上に食べ終わった食器などが放置されていたり、落ちた食べかすがきれいに拭かれていなかったりするのだが、この店はエプロンをつけた店員が何人もいて客が席を立つとすぐに片付けをしていた。
箸やレンゲ、調味料もキチンと容器に入れられている。
キッチン周りも確認したが、こちらも合格だ。
メニューはタイ語とミャンマー語で書かれていた。
やはりタイヤイ(シャン族)語ではなくミャンマー語の文字をあてているが、もちろん自分はさっぱりわからないので、タイ語を見て食べるものを決めた。
で、本当はカーオフン・ウンを食べたかったのだが、何と売り切れ。
しかたがないので、「カーオソーイ・シーゲート」というものを頼んでみた。
カーオソーイは、チェンマイを代表する料理のひとつだが、シーゲートというのが何なのかがわからず、興味本位で選んだ。
出てきたのは、これ。
バミーヘン(スープなし中華の麺)にムーデーン(焼き豚)と揚げ麺を乗せたものであった。
普段食べているカーオソーイとはまったく違う食べ物だが、あっさりしていてこれはこれでおいしくいただけた。
スープもかなり薄味だ。
カーオマンガイ(タイ式海南鶏飯)やカーオラートゲーン(ぶっかけ飯)などについてくるスープと同じものだった。
化学調味料の味がたっぷり感じられるのは、この手の店ではしょうがない。
そして、付け合わせの漬物はこれ。
高菜の唐辛子漬けだ。
タイヤイ(シャン族)料理には必ず、と言ってもいいくらいついてくるのだが、以前メーサーイでタイヤイ(シャン族)料理を食べた時に店のおばさんがもともとは雲南のものだ、と教えてくれた。
実際、金曜の朝にナイトバザール近くのムスリム街で開かられる、「チンホー(馬に乗った中国人=隊商雲南人)定期市」でもたくさん売られているので、おそらくタイヤイ(シャン族)だけのものではないのだろう。
カーオフン・ウンが食べられなかったのは少し残念だったが、今年のアーサーラハブーチャ(三宝節)もここに来ておいしい食事ができたのは大満足であった。
昨年と違って今年は太陽が照りつける天気となり、汗をダラダラ流しながら食事を終えて自宅へと戻った。
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