今年の7月27日はアーサーラハブーチャー(三宝節)で、自分はいつもの年と同じようにチェンマイ市内中心部にあるタイヤイ(シャン族)の寺院に行ってお参りを済ませたが、その翌日7月28日はカオパンサー(เข้าพรรษา=入安居)であった。
「タイ日大辞典」によれば、カオパンサー(入安居)とは
≪雨季に入る≫坐夏節、坐夏安居節。陰暦8月黒分の第1日で公休日。この日タイの人々は寺にもうで布施やローソク行列(แห่เทียน)を行う。この日より3ヶ月の雨季の間、僧侶は遠出したり頭陀行をつつしみ寺にこもる。また、この期間中だけ出家する人も多い。
とのことである。
チェンラーイ県の片田舎にある実家からチェンマイ市内中心部の観光スポットでもある有名寺院ワットプラシンに預けられ、チェンマイ大学に入学するまで長年デックワット(寺院の子供=寺小姓)として寺院や僧侶の雑用をこなしながら勉学に励んだという自分のタイ語レッスンの先生によれば、「寺にこもる」ということではなく、本来の意味は修行のために森に入ってはいけない(=この時期活発に活動する虫や動物などを殺生しない)ということらしいのだが。
実際に、今住んでいる自宅のすぐ裏にある寺院のお坊さんも、安居期間中でも普通にサイバート(托鉢)には出かけている。
余談はさておき、アーサーラハブーチャー(三宝節)と違ってこのカオパンサー(入安居)はお坊さんのための(儀式などを行う)日なので、前日ほど人々がお参りに繰り出すということはない。
それでも、上記タイ日大辞典にもあるように、ロウソクをもって寺院に奉納しに行く人も多い。
チェンマイ市内で言えば、中心部のピン川沿いにあるワットチャイモンコンには多くの人が訪れ、お参りをしたりピン川に放生(功徳を積むために魚やカエルなどの生き物を逃がしてやること)をしている。
自分も例年そちらを訪れるか、そうでなければ家の裏にある寺院にちょこっとお参りをする程度で済ませてしまうのだが、今年はカミさんと一緒にドライブがてら少し遠出して名刹と呼んでもよい寺院まで行くことにした。
目的地は、チェンマイから国道108号線をまっすぐ南に60kmほど行ったところにある「ワットプラタートシーチョームトーン」だ。
コンムアン(チェンマイ人)の間では、カオパンサー(入安居)の時にお参りする寺院としてはもしかしたら市内のワットチャイモンコンよりもはるかに名が知れ渡っているかもしれない。
寺院にある説明書きによれば、
ワットプラタートシーチョームトーンは、タイ北部の巡礼にとって最も重要な寺院のひとつである。
年代記によれば、この寺院の創建はプラボローマタートチョムという大変崇拝されていた僧侶によるもので、西暦749年までさかのぼるという。
ウィハーン(本堂)は少なくとも1466年からこの場所にあり、現在残っている建物は1817年にできたものだ。
本堂の内部中央には、チェディ(仏塔)のような形をした美しい木彫で豪華に装飾が施されている金色の漆喰製の「クー」という名前で知られている、仏陀の遺骨の入った箱を収めたものが置かれている。
ここに収められている仏陀の遺骨は頭蓋骨の一部であると言われている。
本堂の奥は小さな博物館になっており、非常に多くの小さな仏像類が収蔵されている。
また、この寺院には1495年から1526年まで当地を治め、この寺院の後援者であったムアンケーオ王が寄進した「仏陀のベッド」と呼ばれるものがあったと言われているが、現在その所在は明らかになっていない。
とのことである。
上記リンク先の寺院の紹介ページに記載しているが、実はこの寺院は子年生まれの人の護寺としても極めて有名なほか、寺院の裏手に広大な瞑想道場を併設しており、外国人も受け入れていることからファラン(欧米人)でここに住み込んで瞑想の修行をしている人も多い。
いつもならガラガラな駐車場もこの日はまったく空きがなく、どうにか寺院の周りの路上に車を止めてお参り道具を購入してまずはチェディ(仏塔)の周りを3周(「3」は仏法僧に祈りを捧げるという意味がある)した後は、ウィハーン(本堂)に入って中央に置かれた「クー」の前で祈りを捧げた。
その横ではお坊さんにロウソクなどを捧げる人が大勢いたが、自分たちはそれはせずに本堂奥にある小さな博物館や「クー」の周囲に置かれている仏像をじっくり見ることにした。
お詣りを終えると、外には宝くじ売りがずらりと並んでいて(タイでは、こうした参拝後に宝くじを買うのはごく普通のことだ)それを横目に眺めつつ、自分とカミさんは屋台のアイスクリームを食べて涼をとった。
このワットプラタートシーチョームトーン、自分はチェンマイ盆地にある寺院の中でも最も好きなもののひとつでもっと頻繁にお参りしたいのだが、さすがに家から60kmも離れていると、サクッと立ち寄るというわけにもいかないのが悲しい。
でも、せめて月に1回くらいはプチドライブがてらお参りしたいなあ、と今回改めて思い直したのだった。
寺院は国道沿いにあり、チェンマイ市内からバスや黄色いソンテウ(乗り合いピックアップトラック)が出ていて旅行者でもアクセスは比較的容易なので、ぜひこういう場所も訪れてほしいと思う。
寺院の周囲には食堂や土産物店も何軒もあるほか、少し離れた場所にはロッジやホテルもあるので泊りがけで訪れることも可能だ。
寺院中心部概観
正面からチェディ(仏塔)を見る
子年生まれの人の護寺なので、チェディ(仏塔)入口にはネズミの像が立っている
ネズミの像の足元には奉納された小さなネズミが
チェディ(仏塔)の前で履物を脱いで祈りを捧げる人
【動画】チェディ(仏塔)の周りをお祈りしながら歩く人々
修復され新しくなったウィハーン(本堂)概観
入口からウィハーン(本堂)内部を見る
ウィハーン(本堂)の中で祈りを捧げる人々
仏陀の遺骨の入った箱を収めた仏塔のような「クー」
ウィハーン(本堂)の端でタムブン(徳積行)する人々
ずらりと並んだ宝くじ売りの露店
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