「インド亜大陸以外のヒンドゥー文化に触れる」という今回の旅行のテーマ(というほど大げさなものではない)にそって、一番の目的地であるインドネシアのソロ(スラカルタ)近郊にある遺跡に行く前に、乗り継ぎで立ち寄ったクアラルンプールでも、ヒンドゥー教にちなんだスポットを訪れることにした。
向かったのは、クアラルンプールの近郊にあるバトゥ・ケイブスというヒンドゥー寺院だ。
ケイブス(Caves)という名の通り、洞窟の中にあるらしい。
KLセントラル駅からKTMコミューターという電車のその名も「バトゥ・ケーブス-タンピン路線」というのに乗って30分ほどで終点のバトゥ・ケーブスに到着。
終点なので乗り過ごすこともなく、ここの駅で降りる人はほぼ全員寺院に行く人なので、みんなの後についてノンビリと歩いて行く。
クアラルンプールからすぐ(北に15kmほど)なので、洞窟といってもたいしたことはないのだろう、と思って寺院に近づいて行ったら……ビックリしてしまった。
急に切り立った岩山の頂上に向かって、長~い階段がついている!
しかも、入口には超巨大なヒンドゥー教の神像が立っている。
この像は2006年に安置され、42.7mの高さを誇り世界一の大きさをうたっているらしい。
でも、確か牛久大仏って100m以上あったような気が……
この洞窟寺院、洞窟の存在自体は昔から現地の人たちには知られていたようだが、記録としては1878年にアメリカ人の博物学者、ウイリアム・ホーナデイによって発見されたことになっている。
その後、1890年にクアラルンプール中心部のチャイナタウンのすぐそばにあるスリ・マハマリアマン寺院を建立したK.タムブサミー・ピライが洞窟の中にムルガン神(シュバラマニアム神という名前でも知られている)の像を安置したのが寺院の始まりらしい。
このムルガン神もシュバラマニアム神も、ネパールのカトマンズに住んでいた時には一度も聞いたことがない名前だったので調べてみたら、シバ神の息子で戦の神とされており、主にタミル人の間で広く信仰されているそうだ。
だから、カトマンズでは聞かなかったのね。
洞窟寺院に向かう階段は全部で272段あるそうだ。
チェンマイにも当地最大の観光スポットであるドーイ(山)・ステープ寺院があるけれど、階段のほかにリフト(斜めに上がっていくエレベーターのようなもの)がある。
が、ここには階段以外の手段はないようだ。
休憩を入れつつ登っていくが、日ごろチェンマイでバイクや自動車ばかりを使っていてほとんど歩いていないツケがこういう時に出ることになる。
途中、何度も水分補給をしながら上まで歩を進めた。
ところが、階段にはかなりの数のサルがいるではないか!
ヒンドゥー教の信者の間でなぜか人気の高いハヌマーン神の顔がサルということで、インドでも牛同様に大切にされている感じのある動物だが、牛に比べるとはるかに頭がよく、階段を登って来る人が食べ物を持っていたりすればあっという間に襲われてしまうようだ。
それを知らずに食べ物をビニール袋入れて手に下げて階段を登って来た人がサルに襲撃され、悲鳴をあげていたりする。
この階段を行き来する時は、食べ物を見せるのは危険だ。
階段を登り切ったところから、洞窟が始まる。
内部は2段になっており、ものすごく広い空間だ。
あちらこちらにヒンドゥー教の神様の像が置かれていたり、祠が造られていたりする。
ヒンドゥー教の寺院の中には、信者以外は入れない場所(あるいは寺院そのものが異教徒立ち入り禁止)があることも多いのだが、ここにはそのようなところはないようだ。
洞窟の上から水がしたたり落ちていて滑りやすくなっている床に気をつけながら、奥のスペースまで見学した。
インドのヒンドゥー教の有名寺院というと、たいていはお参りに来た信者たちが大騒ぎをしながらお参りする、というような感じでワサワサと落ち着かない雰囲気なのだが、平日の午前中ということもあったのだろう、人も比較的少なめで洞窟の中は静かな感じだった。
ひとくちにヒンドゥー教と言ったって、国によっていろいろと姿形を変えていくのは自然なことだろうから、これがマレー式ということなのかもしれない。
果たして、この後に行くインドネシアのヒンドゥー寺院(遺跡だけど)はどんなところなのか、ますます楽しみになって来たのだった。
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