ガパオライスが大人気の食堂
自分が日本を離れているうちに、いつの間にか向こうで大人気になっていたタイ料理のひとつが通称「ガパオライス」だ。
一時帰国すると、コンビニのお弁当売り場やファミレスにも普通に置いてあるのを見るし、タイ料理にほとんどなじみのない友人知人に会っても「この前ガパオライス食べた~」とか聞くので、すっかり定着しているのだろう。
もちろん当地(チェンマイ)でも「アーハーン・タームサン(อาหารตามสั่ง=注文に応じて料理を作ってくれる安食堂)」を中心に、ガパオライスは街じゅうどこでも食べらえる手軽なメニューのひとつだ。
今回紹介する「トゥクソム・ガパオタート」は、少しわかりにくい場所にあるため自分のように食べに来る客こそそれほど多くはないものの、エッジの効いたガパオライスが大人気で朝の10時半ごろでもデリバリーサービスの注文の着信音が鳴りっぱなしでバイクが何台も店の前に止まっているという大人気の食堂だ。
ちなみに、店名の「トゥクソム・ガパオタート(ตึกส้ม กะเพราถาด)」は「オレンジ色(ソム=ส้ม)の建物(トゥク=ตึก)・お盆(タート=ถาด)のガパオ(ガパオ=กะเพรา)」という意味になる。
場所はわかりにくいが看板を目印に
店はチェンマイ市内やや東部のマヒドン通り(国道1141号線)沿いにあり、グーグルマップで見るとここになっているのだが、現在はそこから60~70mほど東に移転した。
実際の店は、地図で見る以上に複雑な場所にある。
市内(空港方面)から来た場合は鉄道にかかる陸橋を渡るのだが、店はその下にあり通り過ぎてしまう。
なので、いったんスーパーハイウェイとの立体交差の側道に入ってUターン、マヒドン通りを空港方面に戻るようにして鉄道との立体交差を渡らずにまた側道に入ってさらにもう1回Uターンして150mほど進んだ先に店がある。
ヘタをすると、店は見えているのにすぐそばをグルグル回りかねないロケーションだ。
鉄道線路沿いの道を使うとすると、チェンマイ駅方面から来た場合はマヒドン通りとの立体交差すぐ手前を側道に入るように左折して少し進めば店だ。
ラムプーン方向から来てもここの立体交差下は右折が可能なのでそのまま曲がればよい。
立体交差が終わる少し手前に、銀色のお盆に盛られたガパオライスの写真がついた大きな看板が出ているので、すぐにわかると思う。
バイクは店の前や横に、自動車は店の向かいの大通りに近い場所に止めることができる。
店の前にはいつも数台のフードパンダなどのデリバリーサービスのバイクが止まっているが、入口の脇にはそのドライバーのため(注文が重なると出来上がるまで時間がかかる)の飲み水が置かれていて、人気の高さを物語っている。
ガパオライスだけで17種類もある
店内は、まったく何の変哲もない普通の食堂だ。
メニューは壁に掲出されているほかに紙にプリントされたものもあるが、両者に載っている料理が微妙に異なっているのはご愛敬ということで。
基本は前者を眺めて注文することになる。
壁のメニューの上の2行にガパオライスの具が書いてあり、3行目以下はカーオパット(炒飯)、カーオトム(お粥)ほか一品料理になっているが、ここに来たらガパオライス以外の選択肢は事実上ないので、そこだけ紹介する。
*หมูสับกากหมู(ムーサップガークムー=豚ひき肉と豚バラ肉カリカリ揚げ)
*หมูสับวันเส้น(ムーサップウンセンー=豚ひき肉と春雨)
*หมูสับเบคอน(ムーサップベーコン=豚ひき肉とベーコン)
*หมูชิ้น(ムーチン=豚小間切れ)
*ไก่(ガイ=鶏肉)
*หมูยอ(ムーヨー=ベトナム式豚ソーセージ)
*เบคอน(ベーコン=ベーコン)
*เนื้อสับ(ヌアサップ=牛ひき肉)
*กุนเชียงหมูสับ(クンチアンムーサップ=中国式の甘いソーセージと豚ひき肉)
*แหนมหมูสับ(ネームムーサップ=発酵した豚生ソーセージを細かくしたもの)
*ไส้กรอก(サイクローク=東北タイ風ソーセージ)
*ซี่โครงอ่อน(シークロンオーン=子豚のスペアリブ)
*ลูกชิ้น(ルークチン=つみれ)
*กุ้งสด(クンソット=生エビ)
*ปลาหมึกสด(プラームックソット=生イカ)
*ปลาดอลลี่(プラードーリー=マトウダイ)
ガパオライスを注文すると、「辛さはどうしますか?」とかガパオライスの付け合わせの定番である目玉焼き(カイダーオ=ไข่ดาว)をつけますか?とか聞かれる(店員によっては聞かれないことも)。
自分は、ガパオライスを食べる時はこの店に限らず目玉焼きはいつもつけることにしている。
値段は一番基本的なムーサップで40THB、目玉焼きは10THBだ。
メニューはいずれもタイ語でしか書かれておらず店の人にもタイ語しか通じないと思うが、すぐ近くに欧米人の子供や先生がいる有名な学校があるのでひょっとしたら簡単な英語なら対応可能かもしれない。
頼む人がいるのかわからないが、メニューにはスパゲッティとかもあったりする。
化学調味料や黒醤油を使わない正統派ガパオライス
注文を済ませたら、店の奥にセルフサービスの飲料水とスープが置いてあるのでそれらを取って料理の到着を待とう(炊飯器の中にスープが入っている=タイではよくある)。
「お盆(タート=ถาด)のガパオ(ガパオ=กะเพรา)」という店名の通り、ガパオライスは銀色のお盆の上にバナナを葉を敷き、その上に盛られて出てくる。
一番オーソドックスなガパオムーサップ(豚ひき肉ガパオライス)
クンチアンムーサップ(中国式の甘いソーセージと豚ひき肉のガパオライス)
個人的にイチオシのムーサームチャンクロープ(豚バラ肉カリカリ揚げのガパオライス)
この料理はメニューボードには出ておらず店内の壁に貼ってある(値段も高い)だけなので、ひょっとするといつもあるわけではないのかもしれない。
厚めに切られたカリッカリの豚バラ肉とガパオの葉、唐辛子の組み合わせが抜群だ。
チェンマイにあるほかのお店と比べて、色が黒くないのと具材がパラッとしている。
店の入口の上にかかる看板には「化学調味料不使用」と書かれている。
チェンマイ(タイ)で出てくるガパオライスにはたいていシーユーダム(ซีอิ้วดำ=黒醤油)が使われていて、名前の通り黒い色をしているのでこれを入れたガパオライスの具は黒くなるだけではなく、糖蜜が加えられた少しドロッとしたソースなのでどうしてもベチャッとした仕上がりになってしまう。
また、入れすぎると糖蜜のくどい甘さが表に出て来てしまい、唐辛子やホーリーバジルの風味が消されてしまって平板で単調な味わいになってしまう。
この店の「化学調味料不使用」が味の素のようなものだけをさしているのか確認したことがないのでわからないが、このガパオライスを見るとこのシーユーダムもまったく使っていないか使用していたとしてもほんの少しだけなのではないだろうか。
なので、色がきれいでパラパラに仕上がっているだけでなく肉などの具材、ガパオ(ホーリーバジル)、唐辛子などひとつひとつの素材の風味にエッジが立っていて、それらプラスご飯が合わさった「ガパオライス」というひとつの料理としての完成度を高くしているのだと思う。
もし、街なかの安食堂のガパオライスしか食べたことのない人がこの店に来たら、最初は「これが同じ料理なのか!?」とびっくりするかもしれないくらいの出来ばえだ。
市内からわざわざ行く価値あり!
チェンマイから他県にドライブ旅行に出た途中で、あるいはチェンマイ近郊のあまり土地勘のない場所をバイクで走っていてサクッと食事を、というような時には通り沿いにあるクエティオ(米麺)の店か注文に応じて料理を作ってくれる安食堂であるアーハーン・タームサンというケースが圧倒的に多いが、後者に入った場合はかなりの確率でガパオライスを注文する。
それは、ガパオライスならよほどのことがなければ「これはダメだ……」というようなものが出てくることがないので、とりあえずオーダーすれば間違いがないからだ。
それくらいガパオライスは身近で日常的な食事なのだが、だからこそ普段生活しているチェンマイで食べる時にはおいしいものを食べたいと自分は思う。
今回紹介した「トゥクソム・ガパオタート」は、そんなちょっとわがままな自分の要求に応えてくれる、クオリティの高いガパオライスを出してくれる店だ。
チェンマイは、カーオソイをはじめさまざまな郷土料理もあってもちろんそちらもぜひ食べてほしいのだが、もし「ガパオライスが食べたい!」と思った人がいたらおすすめできる店だ。
少しアクセスが悪いが、わざわざ行く価値は絶対にある。
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