【チェンマイ関連書籍レビュー】消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史~

消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史~チェンマイ関連書籍レビュー
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1931年、当時のビルマ(ミャンマー)・シャン州に33あった藩王国(モン、タイ語ではムアン)のひとつ、ロックソックの藩王(ソーボア、同チャオファー)の娘として生まれ、英国、第2次世界大戦下の日本、そして戦後の中央ビルマのビルマ人とさまざまな外部勢力の支配のもとでの生活を経てイギリスへと渡り、現在は同国で平穏な引退生活を送っている女性ネル・アダムス(シャン名サオ・ノン・ウゥ)が自らの生涯を振り返って記した個人史的一冊。

 

英国の支配下にはあったものの、ビルマからは政治的に独立し自治が認められていた子供からティーンエイジャーにかけての時代の何となく優雅でノンビリとした生活のスケッチ、第2次世界大戦時代の日本と英国の支配権争いの中での混乱と逃亡生活、そしてビルマ人の強権的な支配による藩王制崩壊とそれに伴う藩王家の没落と離散といった、彼女の波乱に富んだ人生は、割と淡々とした文体で語られていながら、それでいて読む者に鮮烈なインパクトを与えることだろう。

チェンマイや北タイに関する話が直接的に出てくるわけではないが、文中で紹介されている、かつてその多くのエリアがラーンナー王国に属していたシャン州の風景や、その地で暮らす民族的にもタイ人に極めて近いタイヤイ(シャン族)の風俗・習慣はとても興味深く読めるし、巻末の資料にはマンラーイ王直系のチェントゥン家の系図が掲載されている(その中の数名の方は、チェンマイやチェンラーイで今も存命)ほか、文中にチェンマイ、北タイとの深いつながりをうかがわせる部分もあり、単純に現在の国境線ではこの地域をくくって見ることはできない、ということがとてもよくわかる。

話は彼女が英国に移る手前で事実上終わっているが、現在のビルマ人支配下におけるこの地域の問題点を考察する上でも有用な内容だ。

中に掲載されている、著者のファミリーの昔の写真も非常におもしろい。

 

なお、訳者の方(森博行氏)は、チェンマイのホテルで著者と偶然に知り合い、この本を出版することになったという。

そういった意味でも、チェンマイとは関係の深い1冊と言えるのかもしれない。

 

発行:文芸社
著者:ネル・アダムス
訳者:森博行
ISBN:4-8355-4138-3
価格:1,500円(税別)

 

消え去った世界 ~あるシャン藩王女の個人史~
文芸社
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