今から130年前の明治なかごろ、1890年代から1910年代にかけてタイに渡り写真館を開いた日本人たちの一生を描いた、ノンフィクション。
タイ国立公文書館で見つけた1枚の写真をきっかけに、明治維新から日清、日露、大東亜戦争、そして戦後と、時代の荒波に翻弄されながらも異国の地においてたくましく生き抜いた彼らの生涯を、鹿児島、横浜などの日本各地からバンコク、チェンマイまで丹念に追いかけて作品として上梓した著者の苦労は、並大抵のものではなかったであろう。
そしてそれ以上に、この本の中に登場するタイにやって来た先人たちの生き様は、読者に深い感銘を与えるに違いない。
とりわけ、ラムパーンとチェンマイで最初に写真館を開いた田中盛之助の娘と結婚して、当地でその天寿を全うした波多野秀が文中で語るチェンマイにまつわるさまざまな話は、実に興味深い内容だ。
中に掲載されている古いタイの写真も大変貴重なもので、チェンマイと日本とのかかわりを知る上でも、チェンマイ好きの方はぜひ読んでおくべき一冊だと思う。
発行:めこん
著者:松本逸也
ISBN:4-8396-0072-4
価格:1,800円(税別)
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