「タイには3回正月がある」と言われている。
西暦の1月1日、太陰暦のいわゆる旧正月、そしてタイの旧暦の正月にあたるソンクラーンだ。
3つの正月の中でも一番盛大に祝われているソンクラーン(現在は4月13日~15日に固定)は、元々は新年を祝うため家族が集って仏像や年上の家族親族にお清めを行ったりする期間であった。
このお清めで仏像や年長者の手に水を注いだりする慣わしが転じて、今では街なかで誰彼お構いなしに水鉄砲やホースなどを使って水をかけあうことから「水かけ祭り」とも呼ばれている。
チェンマイはこの水かけが特に派手なことで知られている一方で、コンムアン(คนเมือง=都人=チェンマイ人)はソンクラーンを「ピーマイムアン(ปีใหม่เมือง=都(昔の城壁都市国家)の新年)」と呼び独自の風習を守って新しい年を祝っている。
自分はこの時期は大気汚染もあって国外に出ることが多かったが、久しぶりに去年今年と2年連続でチェンマイにいて水かけに参戦した。
もっとも「参戦」と言っても、スクーターに乗ってウロウロして一方的に水をかけられるだけだが。
出かけたのは、去年同様市内南部のチェンマイ-ラムプーン街道(国道106号線)の並木道とチェンマイから30km南にある古都ラムプーン。
例年どちらもお濠沿いやニマーンヘミンと違って外国人はまったくおらず、しかしかなり激しいローカルな水かけが繰り広げられる。
動画はスクーターにアクションカメラを取りつけて撮影したが、自分はYouTuberではないので編集などはほとんどしていない。
国道106号線の水かけは去年の半分のにぎわい(4月13日)
チェンマイとラムプーンとの間を結ぶ古い街道(国道106号線)のヤーン(インドゴム)の大木の並木道では、毎年地元民による激しい水かけが行われる。
場所はノーンホーイ交差点とコーンサーイ交差点の間で、主に荷台に水タンクを積み人を乗せたピックアップトラックと道路脇に陣取っている人たちとの戦い(?)だ。
車両がないと参加が難しいからか、市内から大した距離ではないにもかかわらずまったく外国人を見かけない。
例年はおよそ4kmほどの道を車両が数珠つなぎになりながら水かけを繰り広げつつ徐行して進むという状態で、自分も去年はずぶぬれになりながら通過した。
が、今年は地震なのか不景気なのか理由はわからないが空いていた。
去年のような激しい水かけが行われていたのはメーピン警察署からワットノーンプンまでの全体の半分ほどの距離で残りは車両が少なくかなりのスピードで通過する感じ、道路脇の水をかける人たちも場所によってはまばらだった。
少し拍子抜けしてしまったが、それでも体全体がずぶぬれになるほど水をかけてもらい気分はさっぱりだ。
去年も思ったが、一番いいのはお濠沿いと違って水が臭くないことかも。
ラムプーン旧市街は悪天候で閑散(4月14日)
今年のチェンマイはソンクラーン初日の4月13日夕方から天気が崩れ嵐となり、その後も激しい雨が明け方まで降り続いた。
ソンクラーンの期間中に雨が降るというのは実は結構あって過去にも経験しているが今年は久しぶりで、それも長時間降り続くというのは自分的には記憶にない。
翌朝のテレビでチェンマイ県の山間部が洪水に見舞われ被害が出たのがニュースになるくらいの雨だったようだ。
今年のソンクラーン2日目の朝は雨はあがったとはいえ上空は雲に覆われ気温も低くとても水かけ日和とは言えなかったが、家に引きこもってもしょうがないのでチェンマイから30km南にある古都ラムプーンにスクーターで向かった。
国道106号線をラムプーンに向かいお濠を越えて旧市街に入ったが、いつもならそのあたりで待ち構えて水をぶっかけて来る人たちがいない。
旧市街の中も何となく人が少なくて、やはり天気の影響なのだろう。
ラムプーンの水かけは、お濠の両脇の道で行われる。
お濠と言ってもラムプーンの旧市街はせいぜい1km*400m四方と言ったところで、チェンマイに比べるとずっと規模が小さい。
水かけが行われるのは、そのうちの南半分といったところだ。
果たしてスクーターで向かってみると……閑散としていた。
いつもなら歩行者、2輪車、自動車が入り乱れて水かけが行われる道も今日はガラガラ。
あまりのさびしさにちょっと拍子抜けしてしまったが、それでもピックアップトラックにタンクを積んで道の脇に止まってる人たちによって全身ずぶぬれにはされてしまった。
ぬれた身体で戻るが、陽が出ていないためいつもならチェンマイに着くころにはすっかり乾いている洋服も今日はぐっしょりのままで不快だしスクーターで風を切ると寒かった。
最終日は水かけせずお寺にお参りして砂の仏塔を築く(4月15日)
タイ旧暦の元旦にあたりソンクラーン最終日の4月15日は、本来であれば水かけはせずお寺にお参りする日なのだが、ただバカ騒ぎしたいだけの人達には関係ないのだろう、やはり水かけは行われる。
だが、ラーンナー(タイ北部)ではこの日を「ワンパヤーワン(วันพญาวัน)」と呼び新年の元旦の縁起のよい日として過去の1年の自分の行いを振り返り新しい1年を始める日として大切にしている人も多い。
この日のお参りで特に大切とされているのが、砂のチェディ(仏塔)を築く儀式だ。
この習慣は大蔵経の中の菩薩が仏様への崇拝として捧げるために砂のチェディを築くという善行をした、という記述に由来しているが、過去1年の間に寺院から出る時に砂や土を足につけてしまっていたものを砂のチェディ(仏塔)という形で返す、という意味もある。
タイ人はこの習慣を仏教の中の因果応報の信仰の教訓として結びつけているらしい。
自分がこの日決まっていくのは、お濠の中の旧市街にあるワットチェットリンだ。
ラーンナー時代は王族から愛され、特に寺院の奥にある池は彼らがしばしば沐浴する場として使っていたという記録も残っている由緒正しい寺院だが、自分がチェンマイを訪れ始めた1990年代初めは廃寺で漆喰がはがれ無残な姿のご本尊が残る本堂と壊れたチェディ(仏塔)などが打ち捨てられていたのだが再建、今ではご本尊と本堂はきれいにお色直しして多くの観光客が立ち寄っている。
一方でこの寺院はチェンマイで最も大きいと言われる砂のチェディ(仏塔)が作られることでも知られておりソンクラーンが始まる前から多くの参拝客が訪れるが、中でも4月15日は朝早くからチェディ(仏塔)に砂を返し、旗を立てて1年の祈願をする人でにぎわっている。
自分も朝早ければ水かけにも遭わずに済むだろうと考え、7時半ごろに寺院に着くようにしている。
立派な楼門をくぐったすぐ先に砂のチェディ(仏塔)がある

例年見上げるような大きさなのだが、今年はいつにも増してさらに大きく感じる

奥で立てる旗をいただき、続いてバケツに砂を入れる


それらを持って仏塔に近づき、お祈りをして旗を刺し仏塔に砂を返す

砂のチェディ(仏塔)がいつもより大きく感じたのは、今年はチェディ(仏塔)の中に入れる構造になっていたからだった

中にはたくさんの旗が奉納されていた

お参りが終わると、多くの人が砂のチェディ(仏塔)の前で記念撮影だ

お参りを終え時計を見たが、まだ時間は朝の8時すぎ。
今年のソンクラーンはあいにくの雨にたたられてしまったが、そのおかげでこの日も大変涼しく風が気持ちよかった。
なのでこのままスクーターでプチドライブに出かけてもいいのだが、まだ今日は15日で特に子供とかは平気で水をかけて来るのでまっすぐ家に帰っておとなしく過ごすことにした。
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