チェンマイの自宅にいる時、たぶん一番長い時間座っているのはオフィスチェアだ。
ソファを使っていることもあるのだが、パソコンをいじる時はずっとデスクにいるし、何しろソファに座っていると持病の腰痛がひどくなってくることが多いのでそうそう長い時間耐えられない。
で、ある日いつものようにオフィスチェアに座ってパソコンを操作していると、突然「ガタッ」という音がしてイスの座面が大きく傾いて、あやうくイスから転げ落ちそうになってしまった。
あまりに急なことでいったい何が起きたのかわからず心臓がバクバクしてしまい、少し落ち着きを取り戻してから立ち上がってイスをチェックした。
一見、何か不具合とかがあるようには見えないが……
脚の床に接している部分をよく見たら、一本が床から浮き上がっている
「これはおかしいぞ」ということでイスをひっくり返してみたら、浮き上がっている脚の根元が折れているではないか!
屋台や安い食堂などでよく使われているプラスチックのイスは、特に陽にあたるとだんだんボロボロになってきて、ある日突然バラバラに崩壊するというのは目にしたことがある。
昔、クエティオ屋で麺をすすっていると、前に座っていたおじさんがいきなりフッと視界から消えて、「どうしたんだ!?」と思って立ち上がったら床に尻もちをついて座り込んでいて、立ち上がったおじさんの下には粉々に(本当に粉々になっていた)なったイスが残されていたのだ。
まるでマンガのようなシーンだったが、おじさんは何もなかったかのように別のイスを持って来て座り、お店の人もわびることなくイスの破片を片付けていたのが印象的だった。
ともあれ、自分もタイルの床に落ちて頭や尻を打ちつけなくてよかったのだが、このイスはもうかれこれ7~8年は座っていてとても修理とかでは間に合いそうにないので、新しいイスを買いに行くことにした。
この手のオフィスチェアは、時々大きな道路沿いの露店とかでも売られているのを目にするが、さすがにそういうところでは買う気がしない。
なので、ちゃんとした店を何軒か下見してから最終的に購入することにした。
まずは、市内最大のショッピングモールであるセンタン(セントラル)・フェスティバルの中にある「B2S」という文具店をのぞいてみる。
この店は書籍や文具などを扱う大型ショップで、少しではあるがオフィス家具も置いている。
店内を見てみるとオフィスチェアもあるにはるが輸入物ばかりで、どれも軽く10,000THB(約35,000JPY)を超えていてとても手が出ない。
間違いなく座り心地も商品の質もよかったのだが、あきらめることにした。
次いで向かったのは、市内西部の空港近くにあるショッピングモール、エアポートプラザにある「オフィスメイト」だ。
だいたい値段的には3,000THB(約10.500JPY)前後といったところだろうか。
もっと安いものもあるにはあったのだが、座り心地がイマイチ。
しかし、ここで見て気に入ったものは街の家具屋のような場所でも売っているようなオフィスチェアばかりで、たぶんそちらのほうが値段的には安いのではないかと思われた。
なので街の家具屋も見てみようと思い、エアポートプラザからもそれほど遠くない、以前から存在は知っていたが実際に入ったことはないチャーンクラーン通り沿いの店を最後にのぞいてみることにした。
外観はこんな感じ
店の前をバイクや車でたびたび通りすぎていてイスが豊富に並んでいるのは知っていたが、店の中に入ってみると2階建てのスペースすべてにビッシリと商品が並んでいる。
店の奥からおばさんが出てきて「うちは工場がサンサーイ(チェンマイ北東部郊外)にあって、製造直売なのよ。カーイディー(タイ語で「よく売れる(ขายดี)」という意味で、タイ最大のフリーマーケットサイト)にも出店しているし、何か問題があったら修理とかも全部ここでできるから安心よ」と言う。
おばさんが出てきたほうを見てみると、20代くらいの男性が2人イスを修理しており、ほかにも修理待ちなのだろういくつかのイスが置いてあった。
「これなら安心して買い物ができそうだ」ということで、先ほどオフィスメイトで見て気に入ったようなイスがないか見てみると、見た目も座り心地もまったく同じものが売られていた。
しかも、値段は半額以下である。
速攻で購入を決め、車の後部座席に積んで家に持って帰ったのだった。
購入したのはこんなオフィスチェア
オフィスメイトの店内の写真に写っている、オレンジ色の背もたれのチェアと瓜ふたつだ。
壊れたイスの脚が樹脂製だったのと異なり、金属でできている
前に購入した時は脚の素材などまったく気にしなかったのだが、さすがに今回は重点的にチェックしたぞ(笑)
座面の上げ下げはレバー1本でできるようになっている
背もたれは薄いネットのような素材で頼りない
が、自分にとってはまったく関係がない。
なぜなら、チェアの上に腰痛クッションを置いてしまうからだ
この腰痛クッション、「pinto(ピンと?)」という名前の商品で、「エスリーム技術」というもので座位姿勢を改善し座った時の座圧を分散させることにより、腰への負担を軽減しデスクワークを快適にするクッションだ。
腰痛持ちの自分が、日本にいた時に数え切れないほどの腰痛対策グッズを試した中で最も効果のあったもので、日本の家にもチェンマイの家にも置いていて手放せないものである。
今回のオフィスチェアの買い換えにあたっても、この「pinto」を車に積んで店まで持って行き、実際にこれを置いてから座ってみてフィット感などを確かめた。
これで、ようやく通常モードでデスクに向かうことができる。
チェンマイ(タイ)に住んでいると、日本では絶対に起こらないようなことに遭遇したり目撃したりすることがたびたびあるが、まさかオフィスチェアの脚がいきなり折れるなんて想像もしなかった。
日本だったらPL(製造物責任)法とかに引っかかるかもしれないし、人によっては売ったところに怒鳴りこむかクレームを入れるレベルなのかもしれないが、ここはタイ。
こんなことくらいでいちいち目くじらを立てていたら、暮らしてはいけないのだ。
こういう時にこそ「ボペンニャン(บ่อเป็นหยัง=標準タイ語だとマイペンライ=気にしない、だいじょうぶ)」という言葉があるんだよね、きっと。
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