ぜひ1泊してほしいメーサローンでのおすすめホテル
タイ最北部、チェンラーイ県の標高約1,100mの山中にある小さな村メーサローン。
第2次世界大戦後に勃発した中国共産党との内戦に敗れ雲南からミャンマー経由で敗走してきた段希文将軍率いる国民党93師団第5軍の兵士とその家族がたどり着き開いた村で、長らくタイ政府の力が及ばない半独立国のような状態でケシ栽培など麻薬製造および密輸に携わりながら大陸の中国共産党への反攻に転じることをもくろんでいた。
しかしそれはかなわず、武装解除と引き換えにタイ政府から居住権を与えられ国籍を取得するとつながりの深い台湾から寄贈された苗木を使ったお茶やタイ王室(ロイヤルプロジェクト)からの援助による高原野菜の栽培を生業とするようになった。
現在は観光地化が進み、風光明媚な景色と合わせて雲南料理を楽しんだり茶葉や山岳民族グッズを買って帰るというのがこの村を訪れるツーリストの典型的なパターンだ。
ほとんどの観光客はチェンラーイからの日帰りで訪れ1~2時間滞在するだけだが、ここは一般的なタイとは異なり特に朝開かれる定期市は近隣の山岳地帯からやって来た少数民族などが集い他の場所とはまったく異なる雰囲気を醸し出している。
なので自分がメーサローンを訪れる時はたいてい1泊するのだが、最近定宿となっているのが今回紹介する「アマメーサローン」だ。
オープンしてからまだそれほど年数もたっておらず設備が新しく、部屋からの眺めが抜群な上に宿のおばさん手作りのおいしい中華料理の朝食という申し分のない宿で、幅広い旅行者におすすめできると思う。
ちなみにホテル名のアマは阿媽と書き台湾語で「おばあちゃん(実際にはお年寄り以外にも使う)」という意味らしいのだが、タイの国民党の落人村では店の名前でよく見かける。
おそらく、朝食も作ってくれるこの宿のご主人と思われる女性のことを指すのだろう。
下村の中心部にあり朝市もすぐ目の前
現在のメーサローンは「上村」と「下村」に分かれている。
観光客が多く訪れるのは上村で、平らな土地が多く自動車を止めるのが楽なこともありみやげ物店やレストラン、カフェなどが集中しているほか学校や銀行もあってメーサローン中心部と呼んでもいいだろう。
一方の下村は傾斜地がほとんどで最近の多くの旅行者は素通りしてしまうが、元々はこちらがメーサローンの中心で村で唯一の7-11や若干の飲食店のほか、上記の朝市もこちらで開かれている。
「アマメーサローン」は、その下村のほぼ真ん中にある。
住所:169 Moo1,T.Mae Salong Nok,A.Mae Fa Luang
TEL:081-1621216
チェンラーイからのアクセスとして一般的なメーチャンからの国道1130号線経由で来た場合、店舗が増えてメーサローンの下村の中心に着くと左側に7-11がある。
道路右側は谷のようになっているが、「アマメーサローン」は7-11を背にしてこの谷の左斜面に位置している。
7-11を通過してほんの20~30m進むと道は左にカーブして上村へと続く坂を登るのだが、その曲がり角にホテルの看板が設置された細い道があるので入って行く。
道はほんの数10mなのだが斜面を切り開いて無理やり作った感じで、小さめの自動車でも運転が思わず慎重になってしまう。
進んで行くとそのまま駐車場に入る感じになる。
フロントや朝食会場、客室棟(への通路)は建物手前の階段を上がった2階にある。
上階に着くとそこは広々としたロビー(というかただの空きスペース)になっており、デスクがポツンと置かれている。
自分は何度かここに宿泊しているのだが、いつもパスポートチェックもなくチェックイン自体はただ部屋のキーを渡されるだけの簡易版(?)だ。
部屋はテラス付き。山々の眺めが抜群
フロントを過ぎてホテルの建物の裏に回り込むようにして客室へと向かうが、かなりの山の急斜面に位置していることがわかるだろう
ホテルはできてからまだそれほど年数がたっていないので、白を基調にした客室は非常にきれいだ。
ベッドも清潔感があってマットレスがヘタっているようなこともない。
ベッドのサイドテーブルをはさんだ並びには、ゴロッと横になってもだいじょうぶなくらいの大きなベンチソファが置かれている。
宿のご主人と思われるおばさんに聞いたところ、インテリアなどはバンコクの大学に行っている息子がチョイスしたとのことで何となく納得した。
テレビや空気清浄機、電気ケトルに無料のインスタントコーヒーなどは普通のホテル並みに揃えられている。
アメニティは最低限のものしかないが、まだタイのホテルでは少ない歯ブラシも用意されているのはうれしい。
ホテルから大通りに出てすぐのところには7-11もあるので、何か足りないものがあれば簡単に買いに行けるので心配ない。
バスルームもタイのこの手の中級クラスのホテルではごく一般的な造りだ。
「アマメーサローン」の部屋の一番の特徴はテラスにある。
部屋を出たところに広々としたテラスがあり、チェアとテーブルがセットされている。
面白いのが、テラスの端に螺旋階段がついていてさらに上に登れるようなっているのだ。
この階段を登り切ったところは狭いもののやはりイスとテーブルがあってくつろげるようになっている。
ここからの眺めはすばらしい。
東方向になるのだが、はるか遠く(写真右遠景)は国道1号線の通る平地をはさんだ向こう側の山々まで見えている。
夜になると、その遠くメーチャン方向の平地の街の灯りまでも望むことができるなど時間帯によって眺めを楽しむことができた。
おばさん手作りの中華朝食はボリューム満点
もしこのホテルに泊まろうと予約サイトを見て「朝食付き」のプランがあったら、ぜひ選択してほしい。
なぜなら、一般的なホテルの画一的なものではなく宿のご主人のおばさんの手作り中華料理がいただけるからだ。
調理の都合があるため、前日に朝食の時間は決めておくことになる。
すぐ近くの朝市は必見なので、その時間を見込んで自分たちは8時半とかにお願いしておくことが多い。
朝食はフロントの脇にあるちょっとガラ~ンとしたスペースだ。
今まで自分が泊った時に他の客を見たことが一度もないのだが、朝食はとにかくおばさんが一人で作るのでここが満室にでもなったら大変なことになると思う。
朝食はものすごいボリュームなので覚悟しておこう。
まずは最初にナムタオフー(豆乳)とパートンコー(揚げパン)が出て来る。
ちゃんとお茶がついてくるところがさすが中国系だ。
食事中はコーヒーではなくこのお茶をずっと出してくれる。
しばらくすると、今度はなぜか厚切りトーストが出て来る。
このトースト、焼き加減もバターの塗り具合も絶妙で、そもそもこんな厚切りのパンをどこから調達してくるのだろう(コンビニかも)といつも不思議に思いながらパクパクといただいてしまう。
豆乳とパートンコーだけでも自分たちにとっては十分な朝食なのだが、厚切りトーストまで出て来て「もうお腹いっぱいだわ」と思う頃にメインの食事が出て来る。
炒めものが2種類に卵焼き、それにお粥だ。
山の中の村なので材料が豊富だったり凝ったところがあるわけではないが、おばさんの料理の腕がいいのだろう、シャキシャキに仕上がった熱々の炒めものは薄味でありながらバランスのよい味で、さっきまでお腹がいっぱいと思っていたのに完食してしまう。
食べ終わると、もう動くのもイヤなくらいにお腹がパンパンだ。
この手作り感とおもてなし度が満点の朝食、なかなか他所では体験することができない「アマメーサローン」の大きな魅力のひとつだと思う。
ホテルの近くの朝市にも食べ物を売る店が出てタイヤイ(シャン族)料理など変わったものもあるのだが、ぜひうまくお腹を調節してこの朝食を楽しんでほしい。
山中の辺境の村の民宿風サービスを味わってみよう
メーサローンは国民党の落人村というその成り立ちからタイであってタイではない、どこか独特の雰囲気を今現在も漂わせておりそれがまた大きな魅力でもあるのだが、1泊することによってそれを一層強く感じることができる。
そもそも宿泊する人があまり多くはなく、辺鄙な場所ということからホテルの設備やサービスもなかなか平地のチェンラーイのようにはいかないが、その分秘境気分が味わえることだろう。
今回紹介した「アマメーサローン」は当地のホテルの中では設備も新しく整っており、何より手作りの中華料理の朝食というまるで民宿に泊まったかのようなサービスを味わうことができるなど、おすすめの要素が詰まっている。
メーサローンを訪れようと考えている人はぜひ1泊することをおすすめする。
そしてその宿として「アマメーサローン」は間違いなくおすすめできると思う。
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