隔離措置施設(ASQ)選びは最重要!
ツーリストの方はもちろん、自分のようにチェンマイ(タイ)で生活していて日本から戻るという人にとっても最大の難関(?)は隔離措置施設(ASQ)での滞在ではないだろうか。
現在、タイに入国するすべての渡航者は到着後15泊16日の隔離措置施設(ASQ)での滞在が義務とされており、期間中2回もしくは3回(施設による)のPCR検査によって陰性の確認が行われた後でないと、自由に行動することはできない。
ほとんどの隔離措置施設(ASQ)では初回のPCR検査で陰性になるまでは部屋のドアから出ることすら許されないなど措置は厳格なので、16日間の滞在が快適でないとフラストレーションが溜まるだけでなく、ヘタをするとメンタルヘルス的に問題を引き起こしてしまう危険性をはらんでいる。
実際、隔離期間中に飛び降り自殺してしまった人(隔離との直接的な因果関係は記事からは不明)も複数いてニュースになったりもしている。
現在、バンコクの隔離措置施設(ASQ)には、120カ所以上が登録されている。
なお、パタヤやチョンブリー、プーケットなどにも隔離措置施設はあり、こちらはALQと呼ばれている(直行便がないため、日本人はプーケットは利用が困難)。
施設についてリサーチしたり、候補を絞り込んだりするのに役に立つサイトなどはこちらにまとめてあるので参考にしてほしい。
そちらにも記したが、自分はFaceBookのASQフォーラムを眺めつつ、THAIestとMinistry Of Public Healthで個別施設の詳細情報を確認しつつ、施設に直接Eメールを送って予約を入れた。
まず最初に候補を絞り込む時、自分が考えた条件は以下の通り。
(2)なるべく広い部屋で、できればリビングルームとベッドルームが分かれている
(3)部屋に洗濯機や電子レンジ、シンクあるいはキチネットがある。バスタブにはこだわらない
(4)タイ料理が豊富(日本食は不要)
(5)市内である必要はない(隔離終了後自分はチェンマイに飛ぶため)
(6)予算は5万THB前後
(1)~(3)を満たそうとすると、必然的に選択肢は普通のホテルではなくサービスアパートメント形式の施設となる。
で、候補として6カ所に絞り込んで設備やサービスなどで不明な点、滞在予定日の空室の有無などについて施設にEメールで問い合わせた。
返事の戻りかたなどでスタッフの応対も何となく感じがつかめるのではないかと思ってはいたが、中にはまったく回答のない施設もあったりして結構差があるのには驚いた。
そして最終的に順位をつけてまずは1位の施設に予約したい旨連絡をしたのだが、何と自分の滞在予定日は満室。
まあ、いろいろ情報収集していけばよさげに見えるところはみんな同じなのだろう。
なので、そこはあきらめて2番目に連絡を入れたのが今回滞在した「THE VERTICAL SUITE」だ。
なお、料金は総額60,000THBで、予約時に50%のデポジットが必要だ。
スワンナプーム空港と市内の中間ほど
「THE VERTICAL SUITE」は、スワンナプーム空港とバンコク市内中心部とのちょうど中間ほどに位置している。
自分が成田を発ちスワンナプーム空港に到着、ホテルの車に乗り込んだのは夜の22時頃だったのだが、ものの15分ほどで着いてしまった。
シーナカリン通りという現在BTS(スカイトレイン)の新路線の工事が行われている非常に交通量の多い道路に面しており、向かい側には大規模ショッピングセンターが立ち並んでいる。
自分はその大通りに面した側の部屋に滞在したのだが、確かにバルコニーに出るとかなりの騒音が聞こえてくるものの、窓を閉めてしまえばほとんど聞こえてこないのでうるさくて困る、というようなことはまったくなかった。
セパレートされた寝室とリビングダイニング
名前の通りVERTICAL(垂直)な25階の建物は細長く、1フロアにわずか4室しかない。
自分が滞在した部屋はおそらく標準的なものだが、リビングダイニングルームとベッドルーム、バスルームという構成で85平方メールの広さがある。
ドアに貼られた部屋の見取り図を見ると、小さな物置部屋とサブのバスルームもあるのだが、どちらも鍵がかかっていて入ることができなくなっていたので、実際に使える面積はそれよりも狭いと思われるが。
【動画:バンコクの隔離措置施設(ASQ)THE VERTICAL SUITE】
部屋に入って廊下を進むと、リビングダイニングルームが広がっている。
全体で16畳ほどの広さだろうか、リビングは2人分のソファとテーブル、55インチの大型テレビに小さなライティングデスクがある。
テレビはいわゆるスマートテレビで、ネットフリックスやアマゾンプライム、YouTubeなどがダイレクトで見れるようになっているが、ログイン画面の表示がタイ語のみなので人によっては辛いかも。
通常のテレビは普通のホテル程度のチャンネル数が映り、NHKワールドプレミアムも入っている。
ライティングデスクは奥行きが狭いうえに自分の部屋はコンセントがWi-fiルーターに占有されてしまっていたので、結局最後まで使うことはなかった。
ダイニングスペースは細長いテーブルとチェアが2客置かれ、電子レンジ、電気ケトル、洗濯機、シンク、冷蔵庫のほかに何と食洗機まで設置されている。
もっとも食洗器を使うほどの食器を出すこともないだろうし、自分の部屋のものはいまだかつて使われたことがないらしく中にはビニール袋に入った備品や取扱説明書がそのままになっていた。
ベッドルームはおよそ8畳ほどでダブルベッドがドーンと置かれている。
足元側の壁はほぼ全面クローゼットになっており、小さめのテレビも取り付けられている。
中にはバスローブやアイロンとアイロン台が入っている。
日本から飛んで来た場合にはそんなにたくさんの洋服を持って来ているわけではないと思うので、スペース的には十分だろう。
バルコニーは狭い。物干しと割り切ったほうがいいかも
リビングルームにはバルコニーが付属している。
といっても広さは2畳ほどで、エアコンの室外機も取り付けられているので余計に狭く感じる。
部屋からチェアを持ち出せば日なたぼっこくらいはできるかもしれないが、やはり窮屈に感じるだろうから物干しスペースと割り切ったほうがいいかも。
周囲に高い建物がなく見晴らしは非常にいいので、自分は暑くない時間帯を見計らって気分転換に時々ここに立って外をノンビリ眺めていた。
ゆったり浸かれる大きて深いバスタブ
バスルームも広く、バスタブとシャワーブースは別になっている。
バスタブは深さがあって、日本の風呂に近い感覚で入れるのがうれしい。
チェンマイの家にはシャワーしかないこともあって自分は隔離措置施設(ASQ)選びでバスタブの有無は重要視していなかったのだが、何かとストレスを感じることが多い隔離期間中は日本から持って来た入浴剤を入れてゆっくりお湯につかるというのが貴重なリラックスタイムになった。
隔離期間中の備品は十分
どこの隔離措置施設(ASQ)でもそうだと思うが、基本的に人との接触を極力少なくするため、部屋にはあらかじめ滞在期間中に使用する十分な量の備品が置かれている。
「THE VERTICAL SUITE」には、シャンプー、コンディショナー、シャワージェルや固形石鹸、綿棒などのバス用品のほか、歯磨きセット、飲料水、インスタントコーヒーと紅茶のティーバッグ、トイレットペーパー、ティッシュがわりの紙ナプキンが用意されていた。
これらは、ルームクリーニングが入れるようになってからは足りないようだと自動的に補充されたので困るようなことはなかった。
ヨガマットの貸出あり、外からの買い物も頼める
どこの隔離措置施設(ASQ)でもそうだが、少しでも快適に隔離できるよう接触しない範囲でのサービスを提供している。
サービスには大きく2種類あり、ひとつはホテル備えつけのグッズの貸し出し、もうひとつは外からの買い物代行だ。
前者は具体的に何が用意されているかわからないのでリクエストベースになるが、今回自分はヨガマットをお願いしたところ10分で部屋のドアの前に置いてくれた。
携帯用の物に比べて厚みのある質のよいもので、自分はヨガではなくストレッチと腰痛体操で使用した。
また、施設に着いた日に部屋に備えつけの物をチェックして、歯磨き、マウスウォッシュ、シャワー用固形石鹸をオーダーした。
手数料は注文1回あたり100THBで朝10時までに注文すれば13時に部屋まで届けてくれる。
さらに隔離生活を送る中で必要なものが出てくるかと思っていたが、自分はこの1回の注文だけで用が足りた。
食事の種類は多くないがタイ料理がイケる
食事のチョイスはあまり多くはない。
朝食が5種類、昼夕食が20種類用意されており、部屋に写真付きのメニューが置かれている。
またこれとは別にキッズメニューが10種類ある。
隔離期間は15泊なので当然同じ食事を複数回頼まざるを得なくなるのだが、せっかくなので自分はメニューにあるすべての料理を頼んでみた。
個人的な印象としてはタイ料理、中でも炒め物などのおかず系とご飯のセットがおいしかった。
逆にイマイチなのは、ゲーンマッサマンやトムカーガイなどのスープ系。
クエティヨウやパッタイなどの麺類はどうしても作ってから時間がたってしまうため、これも微妙な感じだった。
食事は毎回部屋のドアの前に置かれた棚の上に置かれ、配膳が済むとLINEで連絡が送られてくる。
部屋に電子レンジがあるので冷めてしまったものは温めて食べることができるし、陶器の皿やどんぶり、カトラリーもあるので、弁当箱のようなプラスチックの入れ物から食事を移し替えて温めるだけで、気分がかなり変わる。
この料理を器に入れると……
こんな風にぶっかけ飯屋風になって食欲もそそる
隔離中の義務やルールなど
すべての連絡はLINE経由
スタッフなどとの接触を極力避けるため、すべてのコミュニケーションはLINEを使って行われる。
空港から施設に到着してロビーに入るとカウンターが2つ用意されており、まず提携病院の看護婦による検温、血圧測定、既往症やアレルギーがあるかなどが質問され、その後提示されるQRコードを使って病院のアカウントと友達になる。
続いて、施設のスタッフのいるカウンターに行きチェックイン手続きをするが、そこでもスタッフがQRコードをスキャンするように行って来て友達となる。
チェックインを完了して用意された客室に着くころには双方からLINEでメッセージが届き、隔離期間中に毎日しなければならないこと(翌日の食事注文や1日2回の体温測定と報告)やそのほかの連絡事項が届くようになっている。
上記の備品の貸し出し依頼や外からの買い物の注文も、すべてこのLINEを通じて行う。
自分のようにタイに住む日本人でLINEを使っていない人はすごく少ないと思うが、もしアカウントを持っていなければ日本にいるうちに開設しておいたほうがいいだろう。
隔離中2度のPCR検査
滞在5日目と11日目にPCR検査がある。
検査の前日に詳細なガイドが病院のアカウントからLINEで送られてくるので、それにしたがえば間違いない。
結果は、LINEと書面で届けられる。
実際、陽性になる確率は極めて低いのだろうが、ニュースを見ていると隔離期間中の人から連日10名ほどの陽性者が出ており、中には日本から入国した人もいるので結果が届けられるまでは何となく落ち着かない気分なのは間違いない。
PCR検査で陰性が確認されると、ルームクリーニングが入る。
「THE VERTICAL SUITE」の場合は、7日目、10日目、13日目に清掃が行われる。
こんな状況下で部屋の清掃に来てくれるので、チップは普段よりも多めに弾みたいものだ。
リラックスエリアとジムへのアクセス
1回目のPCR検査で陰性が確認された翌日からは屋上にあるリラックスエリアに出ることができる。
屋根がついてイスが間隔を空けて置かれたテラス風のスペースと、オープンエアのスペースに分かれているが、もともと建物自体が大きくないのでどちらかというと狭く感じるかも。
それでも1週間近く部屋から出られなかった身からすると、解放感のある場所に出て陽の光を浴びたりイスに座って文字通りリラックスできると気分も変わるので、ぜひ利用しよう。
また、2回目のPCR検査で陰性となった後は5階にあるジムを利用することも可能になる。
もっとも、利用可能になってからチェックアウトまでは実質2日しかないので、あまり行く機会はないかもしれないが。
やはりこちらも手狭な感じで置かれているマシンも多くないし、隔離期間中はまともな運動などしていないのでいきなりここで身体を動かすのは危険かもしれないが、自分のように普段ジムでトレーニングしているような人にとってはとてもいい気分転換になると思う。
屋上もジムも利用にあたっては予約が必要で、1回あたり1時間以内の制限がある。
なお、ジムの脇にあるプールは使用禁止となっている(たぶんすべての施設共通)。
隔離証明書
チェックアウトの時に、ホテルから「隔離を終え、途中のPCR検査も陰性だった」旨が記載された証明書を渡される。
チェックアウトの前々日にドラフトがLINEで送られてくるので氏名やパスポート番号などに間違いがないか確認しよう。
ちなみに、この証明書はチェンマイに戻ってイミグレーションオフィスでTM-30の届け出を行う際に必要(係官の裁量による)となる。
こんな人は選択肢に加えてみては?
隔離措置施設(ASQ)は、何回もタイを出入りするのでもなければ複数個所で比較することができないし、特別な状況下でのサービス提供なのでホテル予約サイトに掲載されている平時の宿泊レビューも参考にはならない。
なので、自分が今回隔離期間を過ごしたこの「THE VERTICAL SUITE」が他の施設と比べていいとか悪いとか、おすすめするとかしないとかは安易に言うことができない。
しかし、少なくとも自分は隔離されていた15泊16日の間快適に過ごすことができたし、支払った額に見合うだけのものは得たと思う。
バルコニーの付いた広い部屋が希望でタイ料理が好き、というような方は、選択肢に加えてもいいだろう。
また、自分のように隔離終了後はスワンナプーム空港からのフライトで地方に行く、あるいはバンコク中心部の大都市的な雰囲気(部屋から見える景色)が好きではない、というような人にも向いていると思った。
コメント