ルアムミットとは
色とりどりのゼリー、タピオカ、タロイモ、メロンなどのフルーツ、求肥(白玉粉に砂糖や水飴を加えて練ったもの)のようなものなどさまざまな具に砕いた氷を乗せ、ココナツミルクと砂糖シロップベースの蜜をかけたタイ風のみつ豆とでもいうようなスイーツ。
ルアムミット(รวมมิตร)は「ミックス」というような意味だが、実際には具のひとつひとつに名前があり、ルアムミットを売る店にはそれらがお品書きに個別に書かれていることが多いので、好みのものを3種類だけとか全部乗せとか指定して注文することも可能だが、どれが何という名前かを確かめたことがないため、詳細については残念ながらよくわからない。
スーパーのフードコートなどでも売られており、普通は外国人が「ルアムミット」と言えばお店の人が適当に具材を混ぜて作ってくれるのでそれに従うのが楽だが、選べるような店なら指さしでもいいだろう。
見た目からも想像がつく通り非常に甘いが、氷が入っているのでそれを溶かして蜜を薄めながら食べるとよい。
暑い日のおやつにするとピッタリ、といったカンジの甘味だ。
そんなルアムミットがおいしい、地元の人にも人気のお店2軒を紹介する。
トンラムヤイ市場内のルアムミット屋
これまで、いろいろな店でルアムミットを食べてきたが、「One And Only」と言ってもいいほど、絶品のルアムミットを売っている店。
トンラムヤイ市場のウィチャヤノーン通りに面した入口近くにあまり目立たぬようにあるが、現在50代の友人によれば「自分が小学生の頃からある」と言う。
後日、店主のおばさんに確認したところ「ここで営業して54年になるよ」ということなので、超老舗と言っていいだろう。
写真で見てもわかる通り、店先にはフルーツやパン、ケーキなどの菓子類が並んでおり「どこにルアムミットがあるのかな?」という感じだが、大きなボウルに入れられて店主らしきオバサンの前にドーンと置かれており、ここで食べる場合にはそこからおたまですくって器に盛ってくれる。
上に紹介したような基本的な具に三角形の餅が加わっているのが、ここのルアムミットの特徴だ。
餅といっても日本のように搗いてのびるようにしたものではなく、もち米の原形をとどめたまま固めたもので、どちらかというとおはぎの中身(半殺し)に近い。
しかし、ここのルアムミットを絶品ならしめているのは、蜜の味だ。
通常のココナツミルクと砂糖シロップのほかに牛乳が(たぶん)かなり入れられていて、独特の風味を作り出している。
一般的な蜜は、どうしてもココナツミルクのしつこさが表に出てしまうのだが、牛乳を加えることでそれを消し、さっぱりとした後味が残るように工夫されている。
店はカウンター形式となっていて椅子がいくつか置かれ、その場でも食べられるようにはなっているが、周囲には乾物を売る店などがたくさんあるため、ものすごいニオイがしている。
それが気になるなら、クラップバーン(กลับบ้าน=家に帰る=お持ち帰り。アオパイ=เอาไป=持って行く、サイトゥン=ใส่ถุง=袋に入れるとも言う)にした方がいいと思う。
器がなければ、市場の中にれんげも含め売っている店があるので、それを買って日本に持って帰ってお土産にしてもいいだろう。
また、お世辞にも清潔とは言えるような環境ではないので、お腹の弱い人や心配な人は避けた方がいいかもしれない。
チェウワン
店はルアムミットの専門店ではなく、クエティオ(麺)をメインにしたやや大きめの食堂といった感じだか、地元の人の間ではルアムミットがおいしい店として有名だ。
店に向かって右角に大きなショーケースが置かれており、その中にルアムミットの具がいくつも並べられている。
ガラス製のボウルに盛られたさまざまな具は、色・形・ツヤどれをとってもすばらしく、この店がかなりのこだわりを持って吟味していることが一目でわかる。
ここは、上記トンラムヤイ市場の店とは異なりルアムミットは1種類ではなく、中に入れる具の組み合わせをガラスケースの上に出されているメニューボードの中から選んで注文する。
残念ながらタイ語表記のみで、自分の能力では個々の具すべてを理解することができなかったのだが、1~3までの番号の後ろに具が羅列され、最後に値段が書かれている。
小ぶりの涼しげなガラスの器で供されるルアムミットは、上にかき氷がかぶせられており目の前に出された瞬間には中身を見ることはできず、氷をスプーンで崩していくと具が顔を現すように作られている。
シロップの甘さは控え目だが、ココナツミルクの味はしっかりしている。
どちらかというと、具材そのものの味を楽しんでもらいたい、ということなのだろうか。
しかし、ただ単に甘味を薄くしたというわけではなく、この店では蜜にほのかなバニラの香りを漂わせており、それが全体を包み込んで具材たちを調和させていると同時にルアムミットというひとつのスイートとしての完成度を高めている。
掲げられているメニューボードにはルアムミット以外にもいくつかの甘味がメニューに載っているほか、正面にか掲げられた看板には店名とともに「タプティムクローブ」と書かれており、メニューボードの一番最初に書かれているのもタプティムクローブ(栗に似たカヤツリグサ科の植物の球根、または白い小カブラほどの大きさの芋の一種を細かく刻んで粉をまぶし、煮てからシロップを入れて食べる【養徳社「タイ日辞典」第1巻P819】)なので、店の一番のウリはそちらなのかもしれないが、食べたことがないので詳細は不明。
単純な比較で言ってしまうと、トンラムヤイ市場の店の倍以上の料金で量は半分だか、ひとつひとつの素材の質から氷のかき方に至るまで、チェーウォンのほうがはるかに洗練されている。
さしずめ、高級ルアムミットというところだろうか。
甘味好きの方には、双方の店を試して「一口にルアムミットと言っても、こんなに違いがあるんだ」ということを実際に体験してみてほしいところだか、旅行者が利用するとなると、特に衛生面という点からこちらの店のほうがおすすめできるかもしれない。
場所柄外国人客も多いのだろう、麺類などの食事メニューは英語のものも用意されている。
おそらく簡単な英語くらいは通じるのではないかと推測されるので、食事のついでにデザートがわりにルアムミットをいただく、というのがいいかもしれない。
個人的には、麺類は値段も高目で特別おいしいとは思わなかったが……。
なお、店名のチェウワン(เจ๊อ้วน)は「太った(ウワン)お姉さん(チェ)」という意味だ。
今まで店に何回も足を運んでいるが、どの人が店主(太ったお姉さん)なのかはまだ自分はわかっていない。
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