どんなお店?
ピン川左岸のレストラン街の一番ナワラット橋に近いところに2010年にオープンした高級フュージョン(創作タイ)料理レストラン。
すぐ並びにあるピン川沿いのレストラン御三家、リバーサイド、グットビュー、ギャラリーが観光地化してしまい、特に中国人旅行客が激増してからはすっかり雰囲気がぶち壊しになってしまったのに対し、こちらはそれに比べるとかなり高級路線であることから客層もよく、フュージョン(創作タイ)料理という少し変わったほかでは食べられないものが楽しめることから、特に裕福なタイ人の間で人気が高い。
ちなみに、経営しているのは、チャルンラート通りをはさんで向かいに建つ高級ホテルのラリンジンダ・ウェルネス・スパ・リゾートだ。
ロケーション
ターペー門からターペー通りを東にまっすぐ進む(実際には一方通行なので直進は不可)。
ナイトバザールのあるチャーンクラーン通りとの交差点を通り過ぎると道はチャルンムアン通りと名前を変えるが、そのままさらに進んでピン川にかかるナワラート橋を渡り、すぐのところにある信号を左折して200mほど行った左側。
手前にワーウィー・コーヒー(カフェ)、向かいにラリジンタ・ウェルネス・スパがある。
TEL:053-302788
WEBSITE:https://thedeck1.com/
川沿いのオープンエアのフローリング席がおすすめ
通りから見ると店はかなり横に長く、入口以外は木の壁に覆われている。
門をくぐって2~3段階段を昇ると、背の高い草を立てかけた三角枕が置かれたベッドのようなディスプレイがあり、そこを回り込むと外観同様横に細長い店内を見渡すことができる。
客席はピン川に向かって高低差をつけて2つのエリアに分けられており、直接川に面していない奥まった席からもその流れを眺められるようになっている。
席は入口から向かって左2/3ほどがオープンエア、残りが屋根のある屋内となっているが、天気がよければ絶対に前者のほうがいいだろう。
板張りの床の川沿いの席(おそらく店名のDeckはここを指している)は、ピン川に向かって2人がけのビニール製のモダンなデザインのソファが置かれ、さらに左右に1人がけのイスというコの字型のセッティングになっている。
テーブルが大きく、カップルには最適な雰囲気だ。
当然だが無料wi-fiが提供されていて、タイミングによっては座っているほとんどの客がバソコンを開いて食事をしており、その様子は一種異様さすら感じさせるが、そのためにテーブルが大きくなっているのかもしれない。
オープンエアの一部の席には大きな布製のパラソルが置かれているほか、雨が降ってくると電動でロールスクリーン状の屋根が張り出してくる。
ただし、すべての席を完全に雨から防げる構造にはなっていない。
多少の雨なら問題にはならないだろう、といったところだろうか。
右手奥、間接照明が上手に使われ雰囲気を醸し出している屋内席の突き当たりには壁一面を使った大きなワインセラーがあり、実際多くの客がワインを飲んでいる。
コックのセンスがいかんなく発揮された料理
メニューは、ワインと料理のものの2つに分かれている。
前者は英語のみ、後者は一部写真がついたものでタイ語英語併記になっている。
ワインはシャルドネ、ソービニヨン・ブラン、ロゼ、スパークリング・ワイン、シャンパンなどに区分けされ、日本のちょっとしたレストランにひけを取らないラインアップだ。
フルボトルで安いものだったら700~800THB、高いものだと5,000THB近くするものまで用意されている。
1,000~2,000THBが中心価格帯なので、気軽に頼めるのではないだろうか。
料理のほうはDeck1 Special、Appetizer、Salad、Soup、Main Courceなどに分かれており、最終ページはベジタリアン料理となっている。
Main Courceは何ヶ所かにバラけて紹介されており、少々見にくいのが難点。
値段はだいたい300~500THBといったところだ。
料理はタイでは「フュージョン」と呼ばれているヌーベルキュイジーヌ風創作タイ料理が中心で、まさにタイ料理と西洋料理のミックスといったところだが、変にこねくり回している感じはなく割となじみやすい味になっており、「へ~っ、この素材でこんな料理を作ることもできるんだ」と感心させられる。
コックの料理のプロとしての創造力とセンスがいかんなく発揮されている、とでも言えばいいだろうか。
以下に、食べてみた料理の感想を記す。
*ガイホー・バイトゥーイ……この店のメニューの中では、数少ない(?)普通のタイ料理だ。ただし、鶏肉、バイトゥーイの葉ともかなりいいものが使われており、普通のレストランとはやはり一線を画している。特に鶏肉につけられている下味が、ちょっと濃い目でありながらくどくはない絶妙な加減でとてもよい
*ガイトート・サムンプライ……「ハーブのカリカリ揚げ」という近年非常にポピュラーになった料理だが、普通であれば魚を使うところをこの店では鶏肉で作っている。ハーブの大きさや細切のしかたなどが揃っていてベースになる鶏肉との量のバランスも、考えられており、それゆえ非常に美しい盛りつけになっていて上品な印象を受ける
*ローストダックのヤム……スライスされたローストダックに揚げた中華緬を乗せ、上からバルサミコソースがかけられている。バルサミコソースのせいでタイ料理っぽさは感じられないが、肉の柔らかな食感と揚げた中華麺の食感がいいコントラストを作り出している
*サーモンのグリル・ワカメソース(Crisp Salmon And Wasabi Mashed Potato With Wakame Sauce)……皿の底にマッシュポテトを敷き、その上に大ぶりの鮭を乗せ周囲にクリームソースを回しかけている。名前にあるわさび入りのマッシュドポテトは、言われないとわさびが入っていることに気がつかない人も多いのではないだろうか。また、ソースのワカメの風味はクリームソースが少し重たいせいで消されてしまっている。全体的な仕上がりは悪くないのだが、どちらかというと東京の下町の洋食屋の料理のようだ
*コンニャク入りシーフードのヤム……この数年タイでも見かけるようになってきた(ダイエット食品として人気があるらしい)コンニャクをウンセン(春雨)のように使った珍しい料理だが、ヤムとして非常にエッジの立ったシャープな味わいで好感が持てる
*3種のキノコのトムヤム……具としてはクン(エビ)やプラー(魚)が一般的だが、ここではキノコだけを使っている。フクロ茸は普通のトムヤムでも入っているがそれ以外に2種類、名前はわからないが小ぶりのしいたけのようなものと細長くて白いキノコが入っている。キノコ自体にそれほど強い風味があるわけではなく、どちらかというと食感を楽しむのかもしれないが、ココナツミルクの入らないクリアタイプのスープ(ナムサイ)が大変上品な味に仕上がっていて絶品だ。ここまで洗練された出来ばえのトムヤムにはそうそう出会えるものではない。個人的にはこの店イチオシの料理だ
*ポピア・クン・トート……フュージョン(創作タイ)料理のレストランでは定番とも言えるメニューで、エビの身をまるごと1尾春巻の皮で巻いて揚げ、カクテルグラスに立てかけるように置いて供される。皮のパリパリ感、エビのプリプリ感と2つの食感を楽しむ料理で見た目にも楽しい。辛いものが苦手な人には、特におすすめできる
*スパゲティ・サイウア……この店で、一番「ヘ~っ」と驚かされた料理だ。スパゲティとサイウア(チェンマイソーセージ)を合わせるというアイディアは、誰が考えついたのだろうか。写真では、クリームソースのスパゲティの上にサイウアをただ乗せただけのように見えてしまうが、ソースにはサイウアをすり潰して練り込んであり、さらにミートソースの具のように細かく刻んだサイウアをパスタの上に乗せてある、とても手の込んだ作りになっている。「サイウアにもこういう食べ方があったのか」と、新たな発見をさせてくれる大変楽しい一品だ
どの料理も、基本的には上品であっさりとした味付けで、器もそれに合わせて真っ白なものが多く、中には船をかたどったものが使われているなど、こじゃれていて楽しい。
少し目先の変わった食事をしたい時におすすめ
チェンマイには、近年フュージョン(創作タイ)料理レストランを標榜する店が続々とオープンしている。
中には、バンコクから鳴り物入りで進出してきたにもかかわらずあっという間に閉店してしまったような店もあるが、このDeck1はロケーション的にも非常に恵まれており、地元のタイ人だけでなく観光客にも行きやすく、またホテルが経営しているということもあり、おそらくオペレーション的にもしっかりしていると思われる。
店の名刺に「The Exotic Scene&cuisine」と書かれているが、そのキャッチコピーに違わぬ大変珍しい、というかユニークな店内と料理でその地位をしっかりと確立しているようだ。
単純なタイ料理ではなく、少し志向の変わった料理を食べてみたい時とか普通のタイ料理には飽きた時などには、特におすすめできると思う。
余談だが、このレストランはリバーサイドでは(たぶん)珍しく、朝食から営業している(営業時間は7時~24時)。
それは向かいに建つ同経営のホテル、ラリジンタ・ウェルネス・スパ・リゾートに宿泊すると朝食はここで食べることになっているからなのだが、宿泊客でない人も普通に利用できるので、ピン川を眺めながらちょっと(かなり?)ぜいたくな朝ごはんを……などという時にも使えると思う。
なお、川沿いの席は人気が高いので、特に週末の夜などは予約したほうがよいとのこと。
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