どんなお店?
チェンマイの南部はるか郊外、ラムプーンとの県境に近いサーラピーという街の国鉄線路沿いにある、「チンホー(馬に乗った中国人=隊商雲南人)伝統の味」がウリのカオソーイの店。
記事のタイトルでは「カオソーイブンユン」としているが、正式な名前は「スワンヨートルアン・カオソーイ・ブンユン(สวนยอดเรือนข้าวซอยบุญยืน)」という。
特に自家製の中細麺が抜群で、トロッとしたあんのようなものにくるまれた鶏肉が乗せられたあっさりめのスープとの組み合わせは絶妙な出来ばえ。
自分はここが大のお気に入りで、最低2週間に1回は食べに来ている。
とても不便なロケーションにあるが、チェンマイ市内からわざわざ食べに来るだけの価値があると思う超おすすめの店だ。
ロケーション
タイ国鉄の線路左側の道沿いでわかりやすいロケーションだが、チェンマイ市内からだと10km以上離れている。
公共交通機関が通らないので、行くならバイクか自動車、体力のある人なら自転車など自前の足が必要だ。
一番簡単な行き方は、チェンマイ駅から南に向かって線路左側の道路をひたすらラムプーン方向に進み、およそ9kmでサーラピーの駅に着くのでそこを通り越してさらに2.5kmほど行った左側になる。
しかし、この道は新しく造られた木陰もない殺風景な直線道路で車が猛スピードでバンバン走り抜けていて楽しくないので、チェンマイ-ラムプーン通り(国道106号線)のヤーン(インドゴム)の並木を眺めながらマヒドン通りとの交差点からだと約7km(3つ目の信号を越して約700m)進むとサーラーピー駅に続く細い道(道路沿いに小さな英語の看板が出ている)があるので左折、駅に突き当たったら右折して線路沿いに進むと道はT字路で行き止まりとなるので踏切を渡りすぐ右折して再び線路沿いに500m行くというのがおすすめのアクセス方法だ。
線路沿いに出ている「カオソーイブンユン」と書かれた看板が目印になる。
注文はカオソーイ一択で
店は日本の学校の教室を一回り大きくしたくらいの平屋建ての茶色い東屋で、店の前にはムーサテ(豚串焼き)のグリルが置いてあり、小さなステップを上がって店内に入る(タイトル下の写真)。
中に入ると右手がキッチン、正面と左手が座席になっている。
テーブルは全部で10ほどあるだろうか。
昼時でも自分が行った時に満員というようなことが一度もないので、適当に好きなところに腰かけよう。
店は構造的な理由なのか、人が歩いたりすると床が揺れてどうも落ち着かないのがちょっと問題。
初めていくとビックリするかもしれないが、地震ではない(笑)
店は線路沿いに建っているので、チェンマイでは珍しく通過する列車を眺めながら食事をすることができる。
キッチンの奥の壁にメニューが貼ってあるのだが、もちろんタイ語のみで店員にも英語はまったく通じない。
といっても、基本的にはカオソーイとムーサテ(豚の串焼き)しかない。
カオソーイの具は、ガイ(鶏肉)、ヌア(牛肉)、エンヌア(牛すじ)、エンムー(豚すじ)、ムーデーン(叉焼)、ルークチン(つみれ)、ノーンガイ(ひな鳥)、シークロンムー(豚スペアリブ)と豊富にメニューには書かれているが、実際にはガイ(鶏肉)とヌア(牛肉)以外は用意されていないことがほとんどだ。
また、バミー(中華麺)とクエティオ(米麺)もあるが頼んでいる人を見たことがない。
珍しいところではカオソーイのスープのみ、クエティオ(米麺)のカオソーイというのも品書きに載っているが、頼む人がいるのだろうか……。
ムーサテ(豚串焼き)は本数により小中大の3サイズが用意されている。
とにもかくにも自家製生麺のカオソーイを食べてみよう
店の一番のウリである「チンホー(馬に乗った中国人=隊商雲南中国人)伝統の味」のカオソーイとはどんなものであろうか。
まず一般的なカオソーイと決定的に違うのは、自家製の生の中細麺を使っていることだ。
一般的なカオソーイの店が平たい生麺を使っていてコシがなくどちらかというとネチャッとした食感であり、また同じような中細麺を使ったカオソーイを出すことが多い雲南中国人(ムスリム)系の店であってもたいてい乾麺を使っていてゆで加減もあってかやはりコシがほとんど感じられないのに対し、普段我々がイメージするところまでは行かないにしてもかなりしっかりとした噛みごたえがあるところは、より日本人の好みに合っていると思う。
そして、普通は平麺によくからむようにスープは少しだけとろみのあるこってりしたものなのに対して、この店のスープはサラサラでココナツミルクがたくさん入っているにもかかわらず非常にあっさりしている。
このようなサラッとしたスープになるのは、おそらく普通のカオソーイの店がスープのベースにカオソーイの素、と呼んでもよいようなナムプリック(=ペースト。市場などでも普通に売られている)をたくさん使っているのに対し、この店はこの出来合いのペーストをまったく使っていないか、使っているにしてもほんの少しだけだからなのではないだろうか。
なので、普通のカオソーイが好きな人にとっては「コクが足りない」と感じてしまうかもしれないが、このあっさりとしたスープと乾麺との組み合わせの感じは、個人的には九州の熊本ラーメンにも通じるものがあるようにも思う。
また、面白いことにここの鶏肉はとろみのついたあんのようなものに周囲がくるまれている。
あん自体にはほとんど味がないように思うが、サラッとしたスープにトロッとした鶏肉、そして歯ごたえのある生の中細麺という組み合わせが自分をここまで頻繁に通わせる最大の理由だと思う。
肉厚のムーサテ(豚串焼き)もおすすめ
また、サイドディッシュのムーサテ(豚串焼き)も、この店ではかなりおすすめだ。
串に刺さった豚肉は大ぶりで脂身がついておらず、タレと付け合わせの唐辛子酢漬けのキユウリとホームデーン(日本では赤玉ねぎと称されることが多いが、実際にはエシャロットの一種)も非常にいい味を出している。
とりわけタレは、ピーナツをはじめとする材料の味が非常に濃く、自分がカオソーイの店に限らずカーオマンガイ(タイ式海南鶏飯)の店などさまざまな場所で食べたことのあるムーサテのタレの中でも出色の出来と言えるだろう。
カオソーイ一杯の量は少ないので、ぜひこのムーサテも一緒に食べてみてほしい。
わざわざ食べに来るだけの価値のある店
このカオソーイブンユン、実はチェンマイから南に100kmほどのところにあるラムパーンの街に本店があるそうで、ここは一応チェンマイ支店という位置づけのようだ。
しかし、チェンマイ市内ではなくなぜこんなに不便なロケーションに出店したのか理由はよくわからないが、わざわざここまで食べに来るだけの価値のある店であることは間違いない。
普通のカオソーイとは一味も二味も違った「チンホー(馬に乗った中国人=隊商雲南中国人)」伝統の味をぜひ試してみてほしい。
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