「金剛城」の名を持つスコータイ王朝の要塞都市
スコータイ本体、シーサッチャナーライと合わせてユネスコの世界遺産に登録されているカムペーンペットは「ダイヤモンド(のように硬い(เพชร=ペット))壁(กำแพง=カムぺーン)」という意味だが、タイ日大辞典では「金剛城」と訳されている。
遺跡は現在の街の中心部から1.5kmほど行ったところにある城壁内と、そこからさらに1.5kmほど離れている城壁の外の2か所に固まっている。
今回は城壁の外のエリアの見どころを紹介したい。
なお、カムペーンペットの歴史や遺跡観光のための交通手段、城壁内エリアの見どころについては、下記リンク先をご参照ください。
城壁内と異なり徒歩での見学は辛い
城壁内を遺跡から国道101号線を進み、お濠を越えるとすぐ城壁外の遺跡の入口に到着する。
徒歩で見学できる城壁内とは異なり、こちらは1.5km四方ほどの広さがありしかも起伏のある森なので、とても歩いての見学はできない。
日本語のガイドブックの地図には「レンタルサイクル」のプロットがあるが、自分たちはその場所を通らず別の入口から入ってしまったので、営業しているのかどうかはわからなかった。
遺跡内では、自転車に乗った旅行者は皆無であったが。
こちらの遺跡公園は自動車の乗り入れが可能なので、自分たちはそのまま自家用車を運転して遺跡群を見学した。
なお、こちらでも入場料を徴収されるのだが城壁内の遺跡公園の入場券を持っていれば別途お金を支払う必要はなく入口でそれを見せれば中に入ることができる。
城壁外エリアの主な見どころ
ワット・プラシーイリヤーボット
入口からほど近くのところにあるのがワット・プラシーイリヤーボットだ。
14世紀から16世紀の間に建立されたと考えられているこの寺院は比較的規模が大きい。
設置されている説明書きによれば
とのことだ。
説明書きの通り、まずは高さのあるしっかりとした基壇と柱の残るウィハーン(本堂)が目に入って来る。
それに比べると、ウボソット(布薩堂)は柱も細くかなり小さい。
が、何と言ってもこの寺院遺跡を印象づけているのは4つの仏像があるモンドップ(仏堂)だ。
写真でわかる通り完全な形をとどめているものはひとつないが、立像が一番保存状態がよい。
座像は脚の部分のレンガのみ、涅槃像に至っては正面に立つと「あ~、ここに涅槃像があったんだな」とかろうじてわかる程度しか残っていない。
個人的にもっとも印象に残ったのは、脚のつけ根から膝の下くらいまでだけが原型をとどめている遊行像で、典型的なスコータイ様式の脚はこの部分だけ見ても美しい。
全体が残っていればどれほど美しかったのだろうか、と思う。
このような四体の仏像が一同に残された遺跡というのは、自分はほかで見た記憶がない。
ワット・プラノーン
ワット・プラシーイリヤーボットのすぐ隣(南側)にあるのがワット・プラノーンの遺跡だ。
ワット・プラシーイリヤーボットを見学しているとそばに大きな遺跡が見えるのですぐにわかるだろう。
掲出されていた説明書きによると、
とのことだ。
説明書きにもあり、またプラ(พระ=仏様)・ノーン(นอน=寝る)という寺院の名前からもわかる通り、ウィハーン(本堂)には涅槃像が納められていたようなのだが、残念ながらその姿を見ることはできない。
タイの寺院で涅槃像を本尊にしているところは非常に珍しいので、もし残っていたとしたらどんな姿をしていたのだろうか、と思う。
なお、一部建物は壁が残っており、それはそれでまたタイの仏教遺跡としては貴重なものだ。
ワット・チャーンローム
カムペーンペットの城壁外の遺跡群は非常に広範囲に点在しているが、このワット・チャーンロームはその最奥部に位置している。
先に見た、ワット・プラシーイリヤーボットとワット・プラノーンの遺跡から自動車で雑木林の中を走る。
道はゆるくアップダウンしながら、最後に小高い丘のようなところを昇っていくとワット・チャーンロームが見えて来る。
寺院の名前のチャーン(ช้าง)は「象」、ローム(ล้อม)は「取り囲む」という意味で、その名の象がぐるりと取り囲んだ基壇を持つチェディ(仏塔)が有名な遺跡だ。
掲出された説明書きによると、
とのことだ。
ちなみに、この時の旅でチェンマイからカムペーンペットに向かう途中で立ち寄ったシーサッチャナーライにも同名の遺跡があって見学を済ませていたので、果たしてどのような違いがあるのか楽しみであった。
正面の門の遺跡から中に入ると、まずは説明書きにもあった池がある。
おそらく今は水が入ることはない涸れ池なのだろう、底の部分からは何本も木が生えている。
池を横目に見ながらさらに進んでいくと、象が基壇を支えているチェディ(仏塔)がひときわ目立つ遺跡中心部が現れる。
象は全部で68頭いるそうだが、残念ながら完全な姿(復元を含め)で残っているものはひとつもなく、脚と頭の一部だけというものがほとんで、中にはパッと見象だとはわからないものも多い。
シーサッチャナーライのワット・チャーンロームは38頭なので、こちらのほうがはるかに規模が大きくてチェディ(仏塔)自体の迫力はあるのだが、保存状態は向こうのほうがいいと思う。
このチェディ(仏塔)は、四方にある階段を使って上に登ることができる。
高さがある上に足元が微妙に傾いていたりしてけっこう怖かったが、周囲の雑木林やすぐ近くにある小さなウィハーン(本堂)やチェディ(仏塔)を見渡すことができて、気持ちがよかった。
チェディ(仏塔)のすぐ脇にあるウィハーン(本堂)の遺跡も基礎部分と柱、それにご本尊が安置されていたのだろう中央付近の一段高くなった部分が残るだけだが、なかなかしっかりとした造りになっていたと想像できる。
チェディ(仏塔)とウィハーン(本堂)が元の形だった創建当初は、さぞかし壮観な寺院だっただろうと思う。
ワット・シン
これまで紹介した3か所の遺跡で、ガイドブックに紹介されているレベルの遺跡はすべて見たことになるのだが、城壁外のエリアにはまだまだ見ごたえのある遺跡がある。
そのうちのひとつが、このワット・シン(獅子寺)だ。
場所的には、このワット・シンは先に紹介したワット・プラシーイリヤーボットのすぐ北側に位置しているのだが、ルート的にはワット・プラシーイリヤーボットから丘の南側にある道路を進んでそれ沿いにある寺院を見て最奥部のワット・チャーンロームへ、そして今度は丘の北側の道路を降りて来て……という順に見学するのが便利で、それに従うとここにたどり着く。
雑木林の中にご本尊も残った立派なウィハーン(本堂)の遺跡がある。
お顔もかろうじて残っているという感じで、このまま雨ざらしだとどんどん崩壊していくことだろう。
タイの遺跡の場合、「形あるものはいずれ失われていく」という仏教的な(?)考えもあるのか、屋根をかけたり立ち入り禁止にしたりして積極的に保存していこうという方向性はあまり感じられない。
おかげで、見学する我々も往時の様子をよりリアルにしのぶことができたり、すぐ間近に近づいたりすることができるわけだが。
鉄棒で支えはしてあったがかなり上のほうまで残った柱もある。
しかし、見た目はかなり立派な遺跡なのだが説明書きとかがまったく見あたらないのが残念だ。
ウィハーン(本堂)の裏側のモンドップ(仏堂)も外観がかなり残っていて、中の仏像の保存状態もよかった。
四方に形の違う仏像があるワット・プラシーイリヤーボットは確かによいが、このワット・シンも建物や仏像の保存状態においては決してひけを取っておらず、せめて簡単な説明看板でもあればもう少し理解を深めることができたのに……と少し残念だった。
ワット・アワート・ヤイ
遺跡公園のメインの入口近くにある遺跡がワット・アワート・ヤイだ。
公園の中に入ると一番最初に見えるので、ここをまず見学してもいいと思う。
説明書きによれば
とのことだ。
実はこの遺跡を見学している途中でデジカメが故障してしまい、写真が2枚しか撮れなかった。
が、なかなか見ごたえのある寺院遺跡だったので、こちらの遺跡公園にに入ったらまず立ち止まって見る価値はじゅうぶんあると思う。
カムペーンペットの遺跡公園は街の北郊外にあってその周辺にホテルはないため、泊まる場合は新市街になります。
その新市街のほぼ中心部にあり隣が夕方からタラート(市場)になるので食事などにも困らず使い勝手がいい、そして何より遺跡観光用の貸自転車も用意されている「ナワラート・ヘリテージ・ホテル」は、カムペーンペットではトップクラスの宿。
普通の日本人旅行者なら問題なく宿泊できるクオリティなので、おすすめですよ。
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