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スコータイ王朝時代は要塞都市として栄えたカムペーンペット歴史公園の遺跡群(2)城壁外の見どころ

タイのスコータイ時代の要塞都市カムペーンペット遺跡群 カムペーンペット、ピチット&メーソート
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この記事は旧サイトにアップしていたのを改訂・移設したものです

「金剛城」の名を持つスコータイ王朝の要塞都市

スコータイ本体、シーサッチャナーライと合わせてユネスコの世界遺産に登録されているカムペーンペットは「ダイヤモンド(のように硬い(เพชร=ペット))壁(กำแพง=カムぺーン)」という意味だが、タイ日大辞典では「金剛城」と訳されている。

遺跡は現在の街の中心部から1.5kmほど行ったところにある城壁内と、そこからさらに1.5kmほど離れている城壁の外の2か所に固まっている。

今回は城壁の外のエリアの見どころを紹介したい。

なお、カムペーンペットの歴史や遺跡観光のための交通手段、城壁内エリアの見どころについては、下記リンク先をご参照ください

城壁内と異なり徒歩での見学は辛い

城壁内を遺跡から国道101号線を進み、お濠を越えるとすぐ城壁外の遺跡の入口に到着する。

徒歩で見学できる城壁内とは異なり、こちらは1.5km四方ほどの広さがありしかも起伏のある森なので、とても歩いての見学はできない。

日本語のガイドブックの地図には「レンタルサイクル」のプロットがあるが、自分たちはその場所を通らず別の入口から入ってしまったので、営業しているのかどうかはわからなかった。

遺跡内では、自転車に乗った旅行者は皆無であったが。

こちらの遺跡公園は自動車の乗り入れが可能なので、自分たちはそのまま自家用車を運転して遺跡群を見学した。

なお、こちらでも入場料を徴収されるのだが城壁内の遺跡公園の入場券を持っていれば別途お金を支払う必要はなく入口でそれを見せれば中に入ることができる。

城壁外エリアの主な見どころ

 

ワット・プラシーイリヤーボット

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボット概観

入口からほど近くのところにあるのがワット・プラシーイリヤーボットだ。

14世紀から16世紀の間に建立されたと考えられているこの寺院は比較的規模が大きい。

設置されている説明書きによれば

伽藍内の重要な建築物は、前方と後方の2か所にくぼみのある基壇を持つウィハーン(本堂)で「パイティー」と呼ばれている。ウィハーン(本堂)の前には獅子の彫刻と守護神のいる歩道が設けられている。ウィハーン(本堂)の中には大きな仏像が安置されている。ウィハーン(本堂)の後方の基壇には4つの姿勢の仏像があるモンドップ(仏堂)がある。4つとは立像、遊行像、座像、涅槃像だ。ウボソット(布薩堂)に比べてウィハーン(本堂)がより大きく、かつ南側に造られているのは、こちらにより一層の注意を払っていることを示している。一方、4体の仏像の裏はサンカワート(僧房など普段僧侶が生活の場としている寺院内の「俗」のエリア:ガネッシュ注)となっている。

とのことだ。

説明書きの通り、まずは高さのあるしっかりとした基壇と柱の残るウィハーン(本堂)が目に入って来る。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの本堂の基壇
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの本堂の柱

それに比べると、ウボソット(布薩堂)は柱も細くかなり小さい。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの布薩堂

が、何と言ってもこの寺院遺跡を印象づけているのは4つの仏像があるモンドップ(仏堂)だ。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの立像
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの遊行像
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの座像
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラシーイリヤーボットの涅槃像

写真でわかる通り完全な形をとどめているものはひとつないが、立像が一番保存状態がよい。

座像は脚の部分のレンガのみ、涅槃像に至っては正面に立つと「あ~、ここに涅槃像があったんだな」とかろうじてわかる程度しか残っていない。

個人的にもっとも印象に残ったのは、脚のつけ根から膝の下くらいまでだけが原型をとどめている遊行像で、典型的なスコータイ様式の脚はこの部分だけ見ても美しい。

全体が残っていればどれほど美しかったのだろうか、と思う。

このような四体の仏像が一同に残された遺跡というのは、自分はほかで見た記憶がない。

ワット・プラノーン

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラノーン概観

ワット・プラシーイリヤーボットのすぐ隣(南側)にあるのがワット・プラノーンの遺跡だ。

ワット・プラシーイリヤーボットを見学しているとそばに大きな遺跡が見えるのですぐにわかるだろう。

掲出されていた説明書きによると、

14世紀から16世紀の間に建立されたと考えられている。東の方向を向いた長方形をしており、東屋と池、休憩スペースを備えている。この寺院は大きく2つのエリアに分けることができる。「プタワート」と呼ばれる仏像が収められた建物のある寺院内の「聖」のエリアと「サンカワート」と呼ばれる僧侶が生活する「俗」のエリアで、2つはラテライト(紅土)の囲いで区別されている。プタワートのエリア内にはウボソット(布薩堂)、涅槃像が納められているウィハーン(本堂)、丸い釣鐘型をしたチェディ(仏塔)、仏像が残っているモンドップ(仏堂)など、いくつもの素晴らしい建造物がある。プタワートの北に位置するサンカワートのエリアは、住居、東屋、池、トイレから成っている。スレート製のセマー(結界石)もこのエリアで見つかっているが、それは現在カムペーンペットの国立博物館に収蔵されている。

とのことだ。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラノーンの本堂
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラノーンの仏塔

説明書きにもあり、またプラ(พระ=仏様)・ノーン(นอน=寝る)という寺院の名前からもわかる通り、ウィハーン(本堂)には涅槃像が納められていたようなのだが、残念ながらその姿を見ることはできない。

タイの寺院で涅槃像を本尊にしているところは非常に珍しいので、もし残っていたとしたらどんな姿をしていたのだろうか、と思う。

なお、一部建物は壁が残っており、それはそれでまたタイの仏教遺跡としては貴重なものだ。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラノーンの本堂の壁
タイのカムペーンペット遺跡群のワットプラノーンの本堂の窓

ワット・チャーンローム

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンローム概観

カムペーンペットの城壁外の遺跡群は非常に広範囲に点在しているが、このワット・チャーンロームはその最奥部に位置している。

先に見た、ワット・プラシーイリヤーボットとワット・プラノーンの遺跡から自動車で雑木林の中を走る。

道はゆるくアップダウンしながら、最後に小高い丘のようなところを昇っていくとワット・チャーンロームが見えて来る。

寺院の名前のチャーン(ช้าง)は「象」、ローム(ล้อม)は「取り囲む」という意味で、その名の象がぐるりと取り囲んだ基壇を持つチェディ(仏塔)が有名な遺跡だ。

掲出された説明書きによると、

14世紀から16世紀の間に建立されたこの遺跡は丘の最高点にある。最も大きなチェディ(仏塔)は丸い鐘形をしている。正方形の基壇は幅が31mで、68頭の象の前半分の姿の石灰でできた彫像で装飾されている。四方にそれぞれ1カ所ずつ階段があり、獅子と守護神の彫像が置かれている。八角形の基壇の上のチェディ(仏塔)本体の基礎部分の四方の角には小さなチェディ(仏塔)がさらにつけられている。チェディ(仏塔)本体は素焼きのキンナリー(緊那羅)と白鳥で装飾され、ブッダの生涯が彫刻されている。またチェディ(仏塔)の正面にはウィハーン(本堂)、北東側にはウボソット(布薩堂)が残されている。ウィハーン(本堂)の前には大きなラテライト(赤土)の池があり、寺院建設のために掘られたと考えれている。

とのことだ。

ちなみに、この時の旅でチェンマイからカムペーンペットに向かう途中で立ち寄ったシーサッチャナーライにも同名の遺跡があって見学を済ませていたので、果たしてどのような違いがあるのか楽しみであった。

正面の門の遺跡から中に入ると、まずは説明書きにもあった池がある。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの池

おそらく今は水が入ることはない涸れ池なのだろう、底の部分からは何本も木が生えている。

池を横目に見ながらさらに進んでいくと、象が基壇を支えているチェディ(仏塔)がひときわ目立つ遺跡中心部が現れる。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの仏塔

象は全部で68頭いるそうだが、残念ながら完全な姿(復元を含め)で残っているものはひとつもなく、脚と頭の一部だけというものがほとんで、中にはパッと見象だとはわからないものも多い。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの象

シーサッチャナーライのワット・チャーンロームは38頭なので、こちらのほうがはるかに規模が大きくてチェディ(仏塔)自体の迫力はあるのだが、保存状態は向こうのほうがいいと思う。

このチェディ(仏塔)は、四方にある階段を使って上に登ることができる。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの階段

高さがある上に足元が微妙に傾いていたりしてけっこう怖かったが、周囲の雑木林やすぐ近くにある小さなウィハーン(本堂)やチェディ(仏塔)を見渡すことができて、気持ちがよかった。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの上からの眺め

チェディ(仏塔)のすぐ脇にあるウィハーン(本堂)の遺跡も基礎部分と柱、それにご本尊が安置されていたのだろう中央付近の一段高くなった部分が残るだけだが、なかなかしっかりとした造りになっていたと想像できる。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットチャーンロームの本堂

チェディ(仏塔)とウィハーン(本堂)が元の形だった創建当初は、さぞかし壮観な寺院だっただろうと思う。

ワット・シン

タイのカムペーンペット遺跡群のワットシン概観

これまで紹介した3か所の遺跡で、ガイドブックに紹介されているレベルの遺跡はすべて見たことになるのだが、城壁外のエリアにはまだまだ見ごたえのある遺跡がある。

そのうちのひとつが、このワット・シン(獅子寺)だ。

場所的には、このワット・シンは先に紹介したワット・プラシーイリヤーボットのすぐ北側に位置しているのだが、ルート的にはワット・プラシーイリヤーボットから丘の南側にある道路を進んでそれ沿いにある寺院を見て最奥部のワット・チャーンロームへ、そして今度は丘の北側の道路を降りて来て……という順に見学するのが便利で、それに従うとここにたどり着く。

雑木林の中にご本尊も残った立派なウィハーン(本堂)の遺跡がある。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットシンの本堂
タイのカムペーンペット遺跡群のワットシンの本尊

お顔もかろうじて残っているという感じで、このまま雨ざらしだとどんどん崩壊していくことだろう。

タイの遺跡の場合、「形あるものはいずれ失われていく」という仏教的な(?)考えもあるのか、屋根をかけたり立ち入り禁止にしたりして積極的に保存していこうという方向性はあまり感じられない。

おかげで、見学する我々も往時の様子をよりリアルにしのぶことができたり、すぐ間近に近づいたりすることができるわけだが。

鉄棒で支えはしてあったがかなり上のほうまで残った柱もある。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットシンの本堂の柱

しかし、見た目はかなり立派な遺跡なのだが説明書きとかがまったく見あたらないのが残念だ。

ウィハーン(本堂)の裏側のモンドップ(仏堂)も外観がかなり残っていて、中の仏像の保存状態もよかった。

四方に形の違う仏像があるワット・プラシーイリヤーボットは確かによいが、このワット・シンも建物や仏像の保存状態においては決してひけを取っておらず、せめて簡単な説明看板でもあればもう少し理解を深めることができたのに……と少し残念だった。

ワット・アワート・ヤイ

タイのカムペーンペット遺跡群のワットアワートヤイ

遺跡公園のメインの入口近くにある遺跡がワット・アワート・ヤイだ。

公園の中に入ると一番最初に見えるので、ここをまず見学してもいいと思う。

説明書きによれば

15世紀から16世紀にかけての建立と推測されている。寺院の境界は今でははっきりと見ることができず、唯一「カムペーン・ケーオ(宝石の塀という意味:ガネッシュ注)」と呼ばれるものがプタワート(仏像が収められた建物のある寺院内の「聖」のエリア:ガネッシュ注)に残るだけである。大きな基壇を持ついくつかの異なる形をした8つのチェディ(仏塔)が両サイドにある。ウィハーン(本堂)は、前後に屋根つきのポーチを持った「パイティー」と呼ばれる基壇の上に建てられている。ウィハーン(本堂)の後方の両脇には16m幅の8角形のチェディ(仏塔)が並び、それぞれの角にはさらに5つのチェディ(仏塔)が建っている。これらのチェディの上部はすべて崩落してしまっている。しかしながら、これまでの研究で釣鐘型をしていたであろうと推測されている。サンカワートと呼ばれる境界線の壁の外側には僧侶用の住居が東屋、池、そして僧侶用のトイレとともに見つかっている。寺院の前には、「ボー・サームセーン(30万の井戸という意味:ガネッシュ注)」という名のラテライト(赤土)の四角形の池がある。

とのことだ。

タイのカムペーンペット遺跡群のワットアワートヤイの仏塔

実はこの遺跡を見学している途中でデジカメが故障してしまい、写真が2枚しか撮れなかった。

が、なかなか見ごたえのある寺院遺跡だったので、こちらの遺跡公園にに入ったらまず立ち止まって見る価値はじゅうぶんあると思う。

カムペーンペットの遺跡公園は街の北郊外にあってその周辺にホテルはないため、泊まる場合は新市街になります。

その新市街のほぼ中心部にあり隣が夕方からタラート(市場)になるので食事などにも困らず使い勝手がいい、そして何より遺跡観光用の貸自転車も用意されている「ナワラート・ヘリテージ・ホテル」は、カムペーンペットではトップクラスの宿。

普通の日本人旅行者なら問題なく宿泊できるクオリティなので、おすすめですよ。

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