標準タイ語と大きく異なるカムムアン(คำเมือง=チェンマイ語)
チェンマイ旅行のリピーターや自分のように住んでいる人なら、現地の人々が話す言葉がいわゆる標準タイ語とは大きく違っていることは知っていると思う。
カムムアン(คำเมือง)と呼ばれるこの言葉は、直訳すれば「昔の城壁都市国家(เมือง=ムアン)」の「言葉(คำ=カム)」ということになるが、その優雅な口調から自分は「都言葉」と呼んだほうが近い気がする。
日本で言えば、京都弁のようなものだろうか。
その筆頭は、このサイト(ブログ)の名前にもなっている女性が使う「チャオ(เจ้า。標準タイ語だとカ(ค่ะ))」だと思うが、それ以外にも標準タイ語のร(ロー=R)の音が欠落してฮ(ホー=h)になるとか、否定の「マイ(ไม่)」が「ボ(บ่ะ)」になるとか、数字の20が「イーシップ(ยี่สิบ)」ではなく「サーオ(ซาว)」になるとか、どちらかというとイサーン(東北タイ)語やラオ(ラオス)語と共通するところが多い。
また、ひとくちにカムムアン(チェンマイ語)と言うが、実際は北部各地方(都市)で微妙に異なっており、チェンマイよりも昔から栄えているラムプーンの人はしばしば「ラムプーンのカムムアンはチェンマイのとは違う」と、自慢げに言うことがあったりもする。
さらに、文字も見た目は少しミャンマー語にも似た独自のいわゆるラーンナー文字があり、道路標識や寺院、商店などの看板で見ることができるが、今日では実際に読み書きできる人はほとんどいないらしい。
ここで紹介する「すぐにはなせるチェンマイ語会話」は、そんなカムムアン(チェンマイ語)を知りたい人向けの、おそらく唯一日本語で書かれたテキストブックだ。
タイ語の知識ゼロだと使うのはむずかしいかも
「すぐにはなせるチェンマイ語会話」は
(1)基本会話
(2)応用会話
(3)日本語チェンマイ語単語集
の3つのパートで構成されているほか、巻頭に発音上の注意やチェンマイ文字タイ文字比較表などがついている。
基本会話と応用会話のパートは、日本語がまずありその下にカタカナでカムムアン(チェンマイ語)訳、右にタイ文字で標準タイ語とチェンマイ語での訳が掲載されている。
標準タイ語、カムムアン(チェンマイ語)に関係なくカタカナで表記されたものは読んでもまず通じることがないので、この本を使ってカムムアン(チェンマイ語)で現地の人と話してみようと思うなら、やはりタイ語の文字が読めることが前提になるだろう。
日本語タイ語単語集のパートは上記から標準タイ語が省かれ、日本語、カタカナ表記のカムムアン(チェンマイ語)、タイ文字表記のカムムアン(チェンマイ語)で構成されているが、チェンマイではカムムアン(チェンマイ語)をタイ語文字で表記することが極めて少ない(限りなく話し言葉に近い)ので、この本に書かれている単語を見せてもたぶん通じないのではないだろうか。
そういった意味では、タイトル通りこの本は「カムムアン(チェンマイ語)を話す」ために使うというのがいいのだろう。
正直言うなら、カムムアン(チェンマイ語)よりも……
と、ここまでこの本について紹介してきてこう言ったら身もふたもないのだが、個人的な経験で言えばもしカムムアン(チェンマイ語)を話したいという人がいたなら「その前にまずは標準タイ語をより完全なものにしたほうがいいと思うよ」とアドバイスしたい。
理由はいくつかあるのだが、
(1)カムムアン(チェンマイ語)をほんのちょっと使えるようになると、たいていの相手は「カムムアン(チェンマイ語)がしゃべれるのか!?」と驚いて、そこから早口でベラベラとカムムアン(チェンマイ語)オンリーでこちらに話しかけてくる。
が、こちらはそんなに流暢に話せるわけではないので、結局はコミュニケーションを続けることができず標準タイ語に戻さざるを得なくなる。
(2)タイ北部以外(特にバンコク)でカムムアン(チェンマイ語)を話すと、露骨に田舎者扱いされたりバカにされることがある。
大昔だったら男性からは「お前チェンマイから来ただろ。向こうで何してた?(女遊びしてただろ)」とニヤリとされたりすることもあったが、さすがに今はそんなことはないまでも店やレストランの店員などから不愉快な態度で接せられることは珍しくない。
チェンマイに長くいると話す相手はたいてい地元の人たちで、ネイティブとしてチェンマイ訛りがあったり単語の中にカムムアン(チェンマイ語)が混じったりして、相手はわざわざ「それは標準タイ語では***と言う(発音する)んだよ」とか教えてはくれないので、自然とカムムアン(チェンマイ語)が身についてしまい避けるに避けられないところはあるが……
(3)役所などの公式な場では標準タイ語(それも礼儀正しいていねいな言葉)を使うのが基本。それができるようになると、相手のこちらに対する態度や応対が変わって来る(=得をする)ことがある。
などをあげることができる。
自分はチェンマイでカムムアン(チェンマイ語)を教えてくれる語学学校や先生は聞いたことがないのだが、仮にあったとしてもそれよりも標準タイ語のレベルをより上げることに授業料は使いたいと思う。
入手は極めて困難と思われるが
自分がこの本を手に入れたのは以前エアポートプラザにあった東京堂書店だが、今では日本語の書籍を扱う店がないし、ひょっとすると古本屋などにあるのかもしれないが、それこそ古本屋自体をチェンマイで見かけることがもうほとんどない。
あるいは、日本語学科のある大学や日本人の集まる会員組織は日本語の書物を豊富に所蔵しているところがあったりするので、そういうところを探してみると見つかるかもしれない。
入手は極めて困難だとは思うが、パラパラとめくって暇つぶしに使ったり「へ~っ、カムムアン(チェンマイ語)はこう表現するのか」と新しい発見をしたりというような使い方はできると思う。
興味がある人は、チェンマイ中の日本語の本を置いてある場所を探し回ってみよう。
著者:小此木國満
ISBN:なし
価格:不明
コメント