朝から大人気の南部タイ料理食堂
チェンマイ市内やや南部のチェンマイ・ラムプーン街道(国道106号線)沿いに「89プラザ」というショッピングモールがある。
TOPSスーパーマーケットを核店舗にさまざまな飲食店があり、夜にはフードトラックがずらっと並ぶなど一日中にぎわっているが、その一番奥の目立たない場所にある南部タイ料理食堂が今回紹介する「カーオホームゲーンタイ」だ。
絶品のゲーンリアン(カボチャや野菜のエビ味噌ミントスープ)をはじめどの料理もエッジが効いた素晴らしい味で朝の開店直後からにぎわっており、11時を回るころには多くのおかずが売り切れてしまう人気店で、自分は最低週1回は通うお気に入りの店になっている。
モールは国道の両脇に広がっているが店は市内方向から来て右側にある。
モールの中央あたりにあるTOPSスーパーマーケットに向かって左側の一方通行の道を入ると奥に広い駐車場があるが、店はその右奥に並ぶ食堂街(と言っても4~5軒が並んでいるだけ)の一番左にある。
料理ケース前で注文したら野菜やハーブを取って席で待とう
店内は小学校の教室をひと回り小さくしたくらいの広さで、シンプルにテーブルが並べられている。
正面が大きなガラス窓になっているので店内は明るく、掃除なども行き届いているので気持ちよく食事ができるのもいい。
そして、正面には料理が並んだケースが置かれている。
右のケースには丸い鍋に入った汁物のおかずが、左のケースには炒め物や揚げ物などが並べられている。
店内の壁に料理が書かれたメニューボードがあるが、基本はケースの中の料理を見て選ぶスタイルなのでいきなり指差し注文でもまったく問題はない。
店はタイ語以外通じない。
料理は一人で行った場合にはいわゆる「ぶっかけ飯」になるが、複数で行った場合はどんぶりや皿に入れる(=みんなで取り分けて食べる)か聞かれることがある。
また、ゲーンリアンなど汁ものはぶっかけにできずどんぶりに入れてしか注文できない。
注文が終わったら、右手にあるガラスケースから生野菜やハーブ類を皿に盛ってテーブルにつこう。
いつも感心するのだが、この店の生野菜とハーブは本当に質がよい。
特にホーラパー(โหระพา=タイ北部で特に好まれるバジルの一種。チェンマイ語ではボーラパーとも言う)はタラート(市場)で売られているものに比べてはるかに茎が太くて葉っぱが大きく、味もイヤなえぐみがほとんどなくハーブのさっぱり感のみで自分はいつもたくさん食べてしまう。
しばらくすれば店員さんが注文した料理を持って来てくれる。
イチオシはゲーンリアンだが、何を食べても峻烈なおいしさ
この店のイチオシは、何と言ってもゲーンリアン(แกงเลียง=カボチャや野菜のエビ味噌ミントスープ)だ。
ゲーンリアンは南部タイ料理ではあるものの全土的に非常にポピュラーな料理でチェンマイでもタラート(市場)のおかず屋などで普通に売られているほどだが、この店のゲーンリアンはそれらとは明らかに一線を画した味だ。
メインの具材であるカボチャをはじめ、小エビ、ベビーコーン、青菜やタケノコが入っていることが多いが、そのすべての質がよいことが食べてみるとすぐにわかる。
そして、ほかの多くの店では火を通し過ぎなのか煮崩れた具材が溶け込んでしまってスープは味が濁ってしまっている上に舌触りが少しザラッとしているのに対し、この店のゲーンリアンはひとつひとつの具材がキチンと形をとどめ、それをまとめ上げているスープはガピ(エビ味噌)の風味がしっかりしていて料理としての完成度が抜群だ。
早めに売り切れてしまうことが多いが、残っていたらぜひ試してほしい。
ゲーンリアン以外のどの料理も「エッジが効いている」あるいは「峻烈」という言葉がまさにピッタリの、素材やスパイスそれぞれの味が立っていて輪郭がくっきりとしていながら、それでいて個々が自己主張せずにひとつの料理としてのまとまり具合が絶妙と思える仕上がりになっている。
何を食べても間違いはない。
店に並んでいる料理は日によって異なるのでここで色々おすすめしても実際に行ってみたら食べることができなかった、という可能性もあるのだが、これまでに自分が店で実際に食べたものの中で特に感心したものをいくつかあげておく。
クアクリン(超激辛豚肉そぼろ)
ここのクアクリンは、辛いのが大好きな自分が食べても汗が噴き出して頭がボーッとしてしまうくらいの超激辛なので注意。
しかし、食べ続けているとその辛さの奥に隠れている味わい深さが感じられるだろう。
ゲーンリアンに次いで自分が行った時には注文する頻度の高い料理だ。
豚スペアリブの唐辛子ハーブ炒め煮
豚スペアリブをナムプリック(唐辛子ハーブペースト)と一緒に炒め煮にしたもの。
たぶんチリオイルも使っていてこれもかなり辛い。
ムーパットガピ(豚肉のエビ味噌炒め)
シンプルな料理だが、写真のようにサトー豆などが入ってアクセントとなっている。
辛さはそれほどでもない。
ゲーンタイプラー(魚の南部タイカレー)
魚の内臓の発酵スープを使ったこれも激辛のゲーン。
発酵臭がかなり強いので好き嫌いは分かれそうな気もするが、特にご飯に合うひと品だと思う。
パットペットプラードゥッククローブ(ナマズのレッドカレー炒め煮)
ナマズの切り身にハーブや唐辛子、レッドカレーペーストを加えて炒め煮にしたもの。
汁気がほとんどなくなるまで火にかけるので、見た目には魚の揚げたものに見えるかもしれない。
ナマズなので小骨が多いのが難点だが、川魚独特の泥臭さもなくおいしくいただける。
ゲーンパーパクタイ(南部タイ式森のカレー)
これもおすすめの一品。
ココナツミルクを使わないサラッとしたカレーで、色は上のゲーンタイプラーと似ているが発酵したものは入っていないので味はストレート、そして辛さは容赦ない。
入っている野菜はカットが大きめで食感が楽しめるのもまた楽しい。
見た目よりもずっと辛いので、苦手な人は少しだけご飯にかけたりして様子を見たほうがいいと思う。
カイチヨウチャオム(臭菜のオムレツ)
その名の通り、少し独特の臭みがある青菜がたっぷり入った分厚いオムレツ。
これは例外的にまったく辛くない。
そのまま食べてもいいのだが、普通は下記のナムプリックガピをつけて食べる。
豚スペアリブのハーブスープ
プラートートカミン(魚のクミン揚げ)
たぶんプラートゥー(日本ではグルクマと呼ばれるサバの仲間)を素揚げにして上からクミンやスパイスを合わせて揚げたものを散らしてある。
表面はカリッと中の肉はしっとりと仕上がっていて臭みはほとんど感じられず、辛くないこともあってついつい箸が向いてしまう。
キスのような魚の素揚げ
名前はわからないのだが、キスのような魚を少し干物にした後にプラートートカミンに使っているのと同じクミンのフレークをかけたものだ。
魚は一夜干しというよりはもう少ししっかり時間をかけているようで、肉は結構な硬さがある。
かなり硬いが骨や頭までバリバリ食べるのがいい。
デフォルトでついてくるナムプリックガピも抜群の味
料理が運ばれてきた時に、頼んだ記憶のない小さな器に入った茶色っぽい液体が一緒について来る。
これは南部タイ料理ぶっかけ飯屋でたいていデフォルトでついてくる、ナムプリックガピ(น้ำพริกกะปิ)と呼ばれる発酵したエビ味噌をベースにしたディップで、普通は生もしくは茹でた野菜、揚げたり焼いたりした魚やタイ風の野菜天ぷらなどにつけて食べる。
グリーンピースのような生の茄子が入っているナムプリックガピは発酵食品なので好き嫌いが分かれるかもしれないが、この店のものはガピの臭みが出すぎておらずほかの料理同様絶妙の味つけになっている。
これまた見た目に比べるとかなり強烈な辛さなので注意が必要だが、上に紹介したカイチヨウチャオム(臭菜のオムレツ)や付け合わせの生野菜につけて食べたり、ご飯に少しまぶすようにして食べてもおいしい。
もしついて来なかったら、ぜひ店の人に言って出してもらおう。
料理が売り切れる前の早い時間帯がおすすめ
営業時間は7時半から15時30分だがお昼前には売り切れてしまう料理も多く、特に一番人気のゲーンリアンは11時頃に行ってもないことがしばしばだ。
なので、行くのであればブランチとして11時より前に行くのがおすすめだ。
自分は10時頃に行くことが多いのだが、その時間でも店内のテーブルは結構埋まりお持ち帰りの人もひっきりなしにやって来る感じだ。
南部タイ料理は一般的に辛いことで有名で、この店の料理も基本的にどれもかなり辛いのでそれが苦手な人には厳しいかもしれないが、味の完成度はそれを容易に乗り越えてしまうだけのすばらしさがあるのでぜひトライしてみてほしいと思う。
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