伝統文化を継承する「ラーンナー智慧の学校」
チェンマイの街は、その起源を1296年にマンラーイ王による建設までさかのぼる。
北西ラオス、ミャンマーのシャン州東部、さらに中国の雲南省南部なども一時期領土としたラーンナー王国の首都として、19世紀にチュラロンコーン大王(ラーマ5世)によってシャム(現在のタイ)の支配下となるまで、いわゆる平原部のタイとは異なる独自の「ラーンナー(ล้านนา=百万の水田)文化」を築き上げてきた。
今でもその名残は料理やカムムアン(คำเมือง=都言葉)と呼ばれる独特の言語に見られるが、タイ(=バンコク)との同化が進み今日ではその文化風習はどんどん消滅しているといっても過言ではない。
しかし、先祖代々この土地に住む人々の中には、ラーンナー文化を保存・継承しようとする動きもある。
そうした活動を展開する場所が「ラーンナー智慧の学校(โฮงเฮียนสืบสานภูมิปัญญาล้านนา)」だ。
月1度、イベントとともに物販が行われる定期市
その「ラーンナー智慧の学校」で、毎月第1土曜日曜のみ開催される定期市がある。
正式名称は「カード(กาด=チェンマイ語で「市場」)・スープサーン(สืบสาน=伝承し続ける)・クワ(คัว=チェンマイ語で「洗い清める」)・ハック(ฮัก=チェンマイ語で「愛する」)」と言い、意訳すれば「(ラーンナー文化を)愛でて継承する市場」ということになるだろうか。
学校の敷地を開放して、その名の通りラーンナーの伝統工芸・生活用品などを製作するワークショップなどが開催され、その脇には伝統工芸品を売る露店が10軒ほど並ぶほか、チェンマイ料理の屋台も出てそれを食べながら伝統音楽の演奏を聴いたりすることができる。
また、敷地内には小さな博物館や衣類雑貨の販売もするオシャレなカフェもあったりして、規模は小さいもののラーンナーの雰囲気を思う存分楽しむことのできるすばらしいスペースになっている。
個人的には、スケジュールが合うならぜひ訪れてほしい定期市だ。
「ラーンナー智慧の学校」のロケーション
「ラーンナー智慧の学校」定期市は、チェンマイ市内やや北部のラタナコーシン通りから少し奥に入った場所で開催される。
市内中心部からだと、ピン川左岸を走るチャルンラート通り(国道106号線)を北上しラタナコーシン通りとの交差点にぶつかったら右折、200mほど進みバムルンラート通りとの信号つきのT字路交差点を過ぎるとすぐ左手にオアシス・スパと幼稚園に続く路地の入口があるので、入って行く。
市の開催される日には、小さなタイ語の案内看板が出るので目印にしよう。
路地に入ったら道なりに150mほど進んだ先に駐車場があり、その奥が学校になっている。
規模は小さいが5か所に分かれている
「ラーンナー智慧の学校」は学校と名乗ってはいるが普通のとは違うので、敷地はそれほど広くはない。
中に入ると、一番手前のスペースに伝統工芸品を売る露店、左手と正面奥にワークショップのスペース、左手奥の小さな広場のような場所に飲食物の露店と伝統音楽を聴けるイスが並んでいる。
右手の奥に博物館、その手前にカフェがある。
伝統工芸品ショップエリア
主に民族衣装や布地などを売る店が10軒ほど並んでいる。
ラーンナーの伝統的デザインや模様の手織り、あるいは草木染の糸を用いた布地や布地を使用した衣装であったり、非常にクオリティーの高い商品を売る店が多い。
が、その分値段も非常に高く、中には売っている布地が全部2万THB(約68,000JPY)以上、などという店もあったりしてビックリしてしまう。
お店の人たちも知識が豊富で売っている商品にこだわりを持っている感じで、もし布地とかに詳しい人ならきっと話が弾むに違いない。
店数も少ないので買うものはないかもしれないが、見ているだけで楽しくなるエリアだ。
ワークショップエリア
定期市の会場に入って割とすぐの左手の新しく建てられた感じの大きな東屋と突き当り奥のおそらくここに移築してきたと思われる古い家屋の2階を使ってワークショップが開催されている。
ラーンナー地方で伝統的に作られて来た、木材や草花を使った生活用品などの作り方を指導する人に教わりながら作っており、生徒は学生もいれば中高年もいるといった感じだ。
どのような形でワークショップの内容が告知され、参加者を募集するのか詳しくは知らないが、自分が行った時にはその場で参加できるものもあったので、もし興味があるのなら早めに定期市に行ってチェックしてみるといいと思う。
飲食&ライブエリア
敷地の最奥、左側の小さな空き地にはイスが置かれ、周囲には飲食物を売る屋台が数軒並ぶ。
売られているのはちょっとしたスナックのようなものが多いが、中にはサイウア(チェンマイソーセージ)やゲーンハーンレー(豚バラ肉のミャンマー風カレー)などの北タイ料理もあったりする。
が、販売量が少ないのか、自分が行くとどの店も開店休業のようになっていることが多いのが残念だ。
また、小さな演奏スペースのようなものがあり、時間によってはそこでタイ北部の民族音楽の演奏を聴いたりすることもできるので、うまく時間が合えば楽しむといいだろう。
博物館(ギャラリー)
定期市の敷地に入って右手の木で編み込んだ橋を渡った先に、古いラーンナー様式の高床式の建物がある。
この建物は、ラーンナーのさまざまな美術品や生活用品、楽器などを展示した博物館になっている。
専門的な博物館ではなく入場料も取っていないため、展示も全体的に雑然としており説明書きなども貧弱だが、ラーンナーのものをこれだけまとめて見ることのできる場所はチェンマイ市内でもなかなかないので、定期市に来たらぜひ見学したほうがよい。
カフェ兼みやげ物店
博物館へと向かう木橋の手前右側にはカフェがある。
飲み物自体はどこにでもあるカフェという感じだが、店内には洋服類やちょっとした雑貨、お菓子類などのショップを兼ねており、値段も定期市の露店に比べるとグッと手ごろなので一休みがてら寄ってみるといいだろう。
買うものはないかもしれないが、雰囲気を楽しもう
ショッピングがメインの目的ということだと、この定期市は店の数も少ないし果たしてわざわざ行く価値があるか微妙だが、チェンマイという街を理解するためには絶対に欠くことのできない「ラーンナー文化」に触れるということであれば、これほどすばらしい定期市はほかにはないと思う。
月1回2日間しか開催されないので、旅行でチェンマイに来る人にとってはなかなか訪れる機会がないかもしれないが、もしスケジュールが合うならぜひ訪れてほしいと思う。
買うものはなかったとしても、会場全体を包み込むチェンマイ(ラーンナー)独特のまったりした空気感とかに触れるだけでも、十分時間を割く価値はある。
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