1990年に、大学教授、教師、一般市民有志により設立されたチェンマイ都市問題研究所を母体とし、2001年に財団法人化された都市開発研究財団によって発行された、チェンマイの歴史をマンガで解説した小冊子。
同財団は、明確な方向性なく急速に発展を続けてきたチェンマイの現状を憂慮し、都市化に伴う諸問題の研究・分析、一般市民への情報提供などを行っているが、本書もその一環として青少年や一般市民に郷土の歴史をわかりやすく伝えることによって郷土愛をはぐくむと同時に、チェンマイに残る貴重な文化遺産を守り続けてほしいとの思いから作られた、と前書きには記されている。
本文(マンガ)自体は28ページ建てで、おじいちゃんと孫娘が会話しながらチェンマイの歴史と今日的な問題点を読者に説明する、というスタイルになっている。
ボリュームがボリュームなので、決してチェンマイの歴史を詳細に記しているとは言いがたいが、1ページ1ページにタイトルがつけられており、チェンマイの起源からマンラーイ王のチェンマイ建都、ビルマ(ミャンマー)による支配とトンブリー王朝の協力下でのその撃退、タイ王国への併合から第2次世界大戦中・戦後にかけての街の変化、そして今日の急激な発展とそれによって引き起こされているさまざまな問題などがわかりやすく描かれている。
「チェンマイの歴史概説」というテーマに絞り込んでタイ語や英語で書かれた書物はいろいろとあるが、日本語で読めるものということになると、この本は現在唯一の存在であると思われ、そういった意味では貴重な1冊だろう。
値段も、出版そのものがビジネスベースではないため、とても良心的だ。
初版(2003年)は1,000部しか印刷されておらず、おそらく現在は入手が極めて困難と思われるが、興味のある人はもし見つけたらすぐに手に入れよう。
なお、以前日本では東京・神田神保町のアジア書店で手に入れることができたのだが、現在は閉店してしまっている。
編集:イッサラー・ガンデーン
マンガ制作:シリワット・ルアンタウィー
訳者:坂本真理
ISBN:974-90886-0-3
価格:50THB(寄付)/300円
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