今日は「アーサーラハブーチャー」の日である。
陰暦8月の満月の日で、日本では「三宝節」と呼ばれるこの日はお釈迦様が初めて説教を行い(初転法輪)最初の子弟ができた日で、これにより、仏・法・僧(三宝)が揃ったということで、人々はそれを祝って寺院にお参りに行く。
この三宝は、すなわち悟りを得た仏陀がいたとしてもその教えである法がなければ、そして仏と法が存在したとしてもそれを聞きさらに広めていく僧(修行する出家者)がいなければ教義を伝えていくことができないということで、仏教を構成する最も基本的な要素と考えられている。
タイで寺院などにお参りに行くと、人々が仏像の前にひれ伏して3回地面に頭をつけるようにしてお祈りをしているのを見かけることがあるが、この「仏・法・僧」に祈りを捧げるという意味がある。
ちなみに、ネパールの首都カトマンズに住む先住民族のネワール族(ほとんどがネパールで唯一の大乗仏教徒)の人たちの間でも、同様に三宝節を祝うお祭り(マチェンドラナート)があり、自分が住んでいた時、街の中を練り歩く山車を見に行ったりした記憶がある。
タイ語のプライベートレッスンを受けている先生から、「前日にタムブン(徳積行)の準備をして、当日は朝早起きして行きます」と聞いていて、別のお友達にたずねたところ「ワット・パーパオがこの辺では一番人が出るよ」と言う。
なので、前日にタムブン(徳積行)するお坊さんへの食べ物、生活用品や花などを買い、お布施を入れた封筒を用意してプラスチックのカゴに詰め、当日は朝5時半に起きてシャワーを浴びて身を清めて、バイクでお濠の北辺外側を走るマニーノパラト通りにあるワット・パーパオへと向かった。
準備したタムブン用のカゴ
ワット・パーパオは、チェンマイ市内ではお団子型のチェディ(仏塔)が有名なワット・クータオと並ぶ、タイヤイ(シャン)族の寺院である。
独特の建築様式が好きで自分も時々遊びに行くのだが、行ってみてビックリ、いつもは寺子屋で学ぶ子供たちがいるくらいで静かな寺が、寺院前のお濠沿いの通りが渋滞してしまうほどのにぎわいだ。
何とかバイクを止める場所を見つけて寺院の敷地に入る。
寺院にある、傾いた楼門
人の流れに従って本堂のほうに進んでいくと、いやすごい人出だ
奥に見える、重なった屋根の形がタイヤイ(シャン)様式である。
本堂近くにはお供え物や放生用の竹のカゴに入った鳥を売る店などが出ている
何とか入口で靴を脱ぎ、本堂の中に入って階段を登った
実際の本堂は、さらに階段を数段登った先にある。
本堂の入口付近はガラーンとしていた。
中に進んでいくと、まずは寄進するための竹で作られた木の形のようなしたものがあった
この日寺院にやって来た人たちは、男も女も多くが民族衣装を着ている
おそらく、チェンマイにはかなりの数のタイヤイ(シャン族)の人が暮らしているはず(食堂とかで店員として働いている多くの人はタイヤイ(シャン族))なのだが、普段は普通の洋服を着ているし、一部の人を除けば自分には見分けがつかない。
しかし、こうしてタイヤイ(シャン族)の人ばかりが集まると、やはり顔つきとかが微妙に異なることがわかる。
うまく、言葉で表現するのは難しいのだが……。
さらに奥に進んでいくと、メーチー(女性の仏教修行者)の集団が座っていた
たぶん、本当のメーチー(女性の仏教修行者)であれば剃髪もしくは短髪にしているはずなので、どういう集団なのかイマイチよくわからないのだが。
この人たちも、当然タイヤイ(シャン)族なんだろうな……。
さらに先に進んでいくと、大勢の人達が床に横座りしていた。
そして、そのさらに先にいるお坊さんに供え物を渡している
お坊さんは、自分の周りがものでいっぱいになるとお経を唱え始め、人々は顔の前で手を合わせ、一緒にお祈りを捧げる。
それが終わると、座っていた人たちはザサーッと立ち上がって後ろに下がっていき、また別の人たちが前に進んで座りタムブンする、という流れになっている。
お坊さんに渡しきれないのだろう、脇には供物を置くテーブルもあった
タイ文字とミャンマー文字が併記されている。
自分もタイヤイ(シャン族)の人たちに混じってタムブン(徳積行)を済ませたが、すぐに後ろには下がらずに横に進んで本尊を拝みに行った。
タイヤイ(シャン族)顔の(?)ご本尊
仏像の様式とかはさっぱりわからないのだが、明らかにほかの一般的なタイ寺院の仏像とは顔立ちが異なっている。
手前の小さな金色の仏像も、顔立ちだけでなく螺髪の頂点の飾りとかが普通とは違う気がする。
お参りを終えて本堂の外に出ると、今度はその周りを取り囲むように出ている露店を見て回る。
タイヤイ(シャン族)の民族料理の食材を売る店が多い
唐辛子まみれの高菜漬けとか実は結構好物なのだが、さすがに買えないよ。
中央の円盤状のものは、タイヤイ(シャン族)の納豆(トゥアナウ)だ
強烈なにおいで、そのままではとても食べられたものではなく(自分は日本の納豆も食べられない)、普通は料理に入れて使う。
右下に白く見えるカーオラム(竹筒に入ったおこわ)も、一般に売られているものと異なり、米粒がまったくなくて日本の餅そっくりの食感だ。
粉状にした小豆のような豆と砂糖も入っているので、汁のない餅入りお汁粉を食べているような感じもする。
お茶を売っている店を見つけたので、少しだけ買ってみた(青いカゴの中)
どこで取れたものかたずねたら、「チェンローン」という答えが返って来た。
聞いたことのない地名なので聞き返してみたが、やっぱり「チェンローン」としか聞こえない。
お店の人が言うには、メーホンソーンのほうらしいのだが。
昔懐かしい感じがする、射的ゲーム屋やおもちゃを売る露店も出ている
お腹が空いてきたので、出ているタイヤイ料理の店で朝食を取ることにした。
店の看板はやはり2か国語で書かれている
後でお店の人に聞いたのだが、文字はミャンマー文字だが書かれている言葉はタイヤイ(シャン族)語とのことであった。
上にはタイ語で「カーオソーイ・タイヤイ」と書かれているので、たぶんその下のミャンマー文字もそうなのだろう。
境内に設けた臨時の店なので、正直言って衛生状態はかなりよくないと思われる
隣に座っている人が食べているものがおいしそうに見えたので、同じものを頼んでみた。
カーオフン・ウン(暖かいカーオフン)だ
カーオフンは、タイ最北端にしてミャンマー国境の街メーサーイや、国境を越えた反対側のタキレクで食べたことがあるのだが、多くはイェン(冷たい)で葛餅のような形状をしている。
上に見える黄色いものがカーオフンで、たぶん大豆のような豆で作ってあり、ビヨ~ンと伸びるペーストみたいになっている。
暖かいので、固まっていないのだろうか。
その下にはノムセン(カノムチン=タイ素麺)が入ってるが、タイのカノムチンとは異なりほとんど弾力がない。
揚げニンニクとタイヤイ(シャン族)醤油が上にかかってて、この状態から混ぜて食べるのだが、これがかなりおいしい。
あっという間に平らげたのだが、何となく物足りないので、今度はまた別の人が食べているものを追加オーダーだ。
ヤム・ミー・ルアムというらしい
ヤム(混ぜ合わせる、和え物)・ミー(麺)・ルアム(ミックス)というような意味だろうか。
上にかかっているタレのようなソースのようなものは、ナムプリック・オーンに似たトマトベースのミートソースのようなもので、ほとんど辛くない。
逆に辛くて酸っぱい付け合わせの高菜漬けがよく合う。
久しぶりの人ごみで少しだけ疲れたが、最後においしいものを食べ終わったら満足感でいっぱいになり、まだ陽が高くなっておらず少しだけひんやりとした空気を感じながら、バイクにまたがって家路についたのだった。
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