開店してすぐに人気、市内に支店もできた郷土料理レストラン
チェンマイ南部郊外の殺風景な場所に2017年にオープンしたが家族伝承レシピで作る料理がすぐに人気となり、ついにはミシュランでも紹介(星つきやピブグルマンではない)されたチェンマイ郷土料理のレストラン。
場所柄旅行者がたくさん来るようなこともなく落ち着いた雰囲気で居心地のよい中、ゆっくり料理を楽しむことができる穴場的な存在でもある。
自分はこれまで数え切れないくらい店を訪れているが、何を食べてもハズレがないどころか非常にエッジの効いた目がさめるようなハイレベルな料理ばかりですっかりお気に入りとなっており、店内の雰囲気もいいので日本から友人知人が来た時には真っ先に案内する店になっている。
なお現在はお濠の中の旧市街のワットプラシン近くに支店があるので、旅行者はそちらのほうが利用しやすい。
郊外で自前の足がないと辛いロケーション
「チュム」レストランは、チェンマイ南部郊外の辺鄙な場所にある。
住所:1/1 Moo.7 T.Tha Wang Tan A.Sarapee
TEL:053-106530
WEBSITE:https://www.facebook.com/chumlannarestaurant
営業時間:10時~21時
南部郊外の第3環状道路(国道121号線)沿いなので道に迷ったりすることはないのだが、レストラン周辺は自動車がものすごいスピードでバンバン走っており速度を落として店を探したりするとちょっと危険を感じるくらいだ。
市内からだとチェンマイ-ラムプーン通り(国道106号線)とマヒドン通りが交わるノーンホーイ交差点から南下して2つ目の信号(約4km)のゴーンサーイ交差点を右折、第3環状道路(国道121号線)を約2km行った右手なのだが中央分離帯があるので店に直接は入れない。
なので、7-11を過ぎたすぐ先にあるUターン車線を使って少し戻る感じになる。
あるいはピン川右岸を走る国道4032号線をひたすら南下し、第3環状道路(国道121号線)へ左折して入り2.5km進むという方法もある。
こちらのほうが土地勘のない人にはわかりやすいかも。
いずれにしても、通り沿いにあるこの看板が目印になる。
自動車で行った場合、大通りから入ったすぐの店の前に2~3台、さらに店を通り越して裏に回り込んだところに広い駐車場がある。
駐車場に面している建物(店舗ではない)の壁には、店のアイコンとなっている写真のイラストが描かれている。
店は平屋の目立たない外観だ。
レストランの来歴
レストランのメニューには、店の簡単な来歴が載っている。
それによると
チュライおばあちゃんは料理を作るのが大好きでした。
おばあちゃんを助けるためお母さんは一緒に市場に行ってよい食材を選び調理の準備をしておばあちゃんが食事を作るのを手伝い、家族みんなが戻って来ると一緒に夕食を食べるのが習慣でした。
お母さんはチュライおばあちゃんから料理の技術を教えてもらい、家に友人や親戚が集まる時はいつもみんなのために料理をしていました。
彼女が得意としていたのは、豚レバーのクワ、ゲーンハーンレーなどでこれらは必ず作っていました。
バンコクの学校を卒業した真ん中の子供がお母さんが作った料理には価値あると考え、チェンマイに戻るとレストランを開くよう説得しました。
まず最初は「チュムデリバリー」として日中に食事の配達を開始し、同時に「チュムラーンナーカレー」という名前でさまざまなイベントに料理を持ち込んだら、どちらもとてもいい評判を得ました。
そして、2017年12月5日、この場所にレストランをオープンしました。
多くの人が「チュム」という店名がどこから来たのか疑問に思うかもしれません。
それは私たちの苗字がチュムサワットで、それを短縮してチュムと名づけました。
とのことだ。
どうやら、この店の経営者はチュライおばあちゃんのお孫さんということらしい。
以前食事をしていたら「宮崎で3年ほど働いていたことがある」という経営者ファミリーの一人と思われる女性が出て来て少し日本語も混じえて話をしたことがあるのだが、その方が直接経営に関与しているかどうかはわからない。
落ち着いた店内、メニューは英語併記写真付き
店内は小学校の教室をひと回り大きくしたくらいの屋内席と国道側に作られたテラス席がある。
屋内席はそれほど凝った店内というわけでもないが、落ち着いた雰囲気だ。
テーブルも二人がけから大人数が座れるものまで用意されており、間隔も広く取られているのでゆったりと食事をすることができる。
テラス席は建物に沿った細長いスペースになっており、手すりの先には小さな川が流れている。
それほど解放感もあるわけでもないので、個人的には屋内席のほうが好きだ。
メニューは簡単な料理の説明もついた英語併記で写真も豊富に使われており、タイ語ができなくても注文に困るようなことはない。
ただし、手稼ぎのタイヤイ(シャン族)と思われる店員に英語は通じない。
かなりの数の料理が載っておりチェンマイ郷土料理になじみがないと何を注文していいか迷ってしまうかもしれないが、その場合は下のコーナーを参考にしてほしい。
おすすめ料理はこちら
チェンマイの郷土料理レストランというとバンコクから来たタイ人旅行者相手のところが多く料理もグループ用にボリューミーだが、ここは一品の量が少ないので色々と試すことができる。
基本的に何を食べてもハズレはないので、気になった料理があればどんどん注文してもよほどの数でなければ食べ切れないということないだろう。
これまで自分はおそらくメニューに載っている大半の料理を食べたことがあるが、その中でも特におすすめのものをあげておく。
チンルン
自分がこの店に行くと必ずオーダーする料理だ。
一般的には「ネーム」として知られているが、タイ北部の一部地域では「チンソム」と呼ばれチェンラーイ県メーカチャーンの特産品として有名な発酵豚生ソーセージにハーブなどを混ぜて丸め揚げたもの。
発酵しているので独特の風味があり好き嫌いが分かれるかもしれないが、表面はサクサク中はしっとりとした食感がたまらない。
他の郷土料理レストランではあまり見ることのない料理で、ぜひトライしてみてほしい。
チンソムモックカイ
チンソム(ネーム=発酵豚生ソーセージ)をバナナの葉で作った器に入れ、溶き卵を流し込んで蒸したもの。
一般タイ料理ではホーモックと呼ばれている料理法に近い。
チンソムの発酵風味に卵の柔らかな甘みが加わり、すばらしい出来ばえの一品だ。
お好みで、添えられている生ニンニクと唐辛子をかじりながら食べてもよい。
ガイバーンヌン
地鶏のカレー蒸し煮。
これを一番のウリにしているレストランも多いくらい、チェンマイを代表する郷土料理だ。
普通は鶏肉がスープに浸された状態で出て来ることが多いのだが、この店では鶏肉とスープを別々にして提供される。
カレースープはいわゆるタイのゲーンとはまったくの別もので、どちらかというとインドのカレーに近い。
もしかしたら、ミャンマーの影響を受けた料理なのかも。
地鶏のしっかりとした身とピリ辛のカレースープが絶妙の取り合わせでいつもあっという間に平らげてしまう。
スープはカーオヌン(カーオニヨウ=もち米)をつけて食べてもよい。
ゲーンパームアン
チェンマイ式「森のカレー」。
ケー(白胡蝶)の花やタイ茄子などのさまざまな野菜やハーブがたっぷり入った風味豊かな一品だ。
カレー(ゲーン)といってもココナツミルクは使っておらず、素材の味がダイレクトに伝わって来る。
辛味が強いので苦手な人は避けた方がいいと思うが、個人的にはこの店に来たらぜひ試してみてほしい料理のひとつだ。
ゲーンオムムー
タラート(市場)の北タイ料理系おかず屋には必ずある、豚肉と内臓の唐辛子ハーブスープ。
おかず屋では安く売る(経費節減)のためハーブ系を少なくした単純な味のものが多いが、この店では写真を見てもわかる通りレモングラスやバイマックルー(コブミカンの葉)、トンホーム(タイねぎ)などが豊富に使われていて複雑な味わいを作り出している。
辛いものが苦手でなければ、これもおすすめの一品だ。
ゲーンパクワーンプラーヘン
パクワーンという名の青菜の北タイ式辛味スープ。
理由はわからないが、この野菜を使ったスープは必ず干し魚(プラーヘン)で出汁をとっており、春雨も入った日本人にはなじみのあるやさしい味つけになっている。
ゲーンパクワーンは庶民的な料理で普通のレストランではメニューに載っていないことが多いので、少し変わったものを試したいというような人にはおすすめだ。
ゲーンパクチェンダープラーヘン
パクチェンダーという青菜の干し魚出汁辛味スープ。
パクチェンダー自体はそれほど風味が強いわけではなくあまり特徴が感じられない青菜だが、そこに上記パクワーンのゲーン同様干し魚で出汁をとったスープにナムプリック(唐辛子味噌)を入れて仕上げている。
パクワーンよりも葉っぱが固いので、食感をより楽しみたいのであればこちらをオーダーするほうがいいと思う。
ゲーンケーガイ
鶏肉のケーの花入り唐辛子ハーブスープ。
ケーは日本では白胡蝶と訳されているようだ。
マメ科の木の花で、写真ではわかりにくいが三日月のような形をしている。
それ自体にはほとんど味はなく、どちらかというと柔らかな食感を楽しむ食材だ。
他にもいろいろな野菜が入っており、少しほろ苦い風味が自分は好き。
ラープムークワ
豚ひき肉と内臓の唐辛子ハーブ和え。
ラープというとイサーン(東北タイ)やラオスが有名だが、このラープクワは北タイ式でチェンマイの南東にあるプレー県のものが有名だ。
クワは「炒る」という意味で、ほかの地域のものよりも味つけが濃い目になっているのが特徴だと思う。
この店のものも同様で、そのまま食べるにはあまり向かないかもしれないが酒のつまみとして向いているほか付け合わせのケープムー(豚皮のカリカリ揚げ)やカーオヌン(カーオニヨウ=もち米)と一緒に食べるといい。
バリエーションで豚レバーバージョンの「タップムークワ」というのもある。
こちらもおすすめだ。
クワホ
ホは「あまりものを放り込んだ」という意味で、北タイでは一般的な調理法だ。
実際に、昔はそうして作っていたらしいが今では一つの料理として確立されている。
有名なのはゲーンホというごった蒸し煮だが、この店はゲーンではなくクワ(炒る)にしている。
ホにはゲーンキヨウワーン(グリーンカレー)などいくつか必ず入るものが決まっているが、この店もやはりそれに従っている。
野菜たっぷりでそれほど辛くない。
タムカヌン
ジャックフルーツの和え物。
チェンマイでは割とポピュラーな料理で、おかず屋でも普通に売られている。
カヌン(ジャックフルーツ)は少しねっとりとした食感があり、そこにニンニクの素揚げなどパリパリとしたものを加えていて口の中が楽しくなる。
辛さもあまり感じられず、誰にでも食べれると思う。
カイチヨウクンヤーイ
「おばあちゃんの卵焼き」という名の一品。
おそらく、この店を開くきっかけとなったチュライおばあちゃんのレシピを再現したものなのだろう。
卵焼きに入れる青菜というというとチャオムが一番メジャーだと思うが、これはたぶん違う野菜だと思う。
一度確認してみようと思っているのだが、いつも忘れてしまう。
それほどすごい特徴があるわけではないのだが、何かホッとするやさしい味で店に行くとついついオーダーしてしまう料理だ。
辛さがゼロなので箸休めにもなる。
エーププラー
魚の切り身に唐辛子ハーブペーストを塗り、バナナの葉で蒸し焼きにしたもの。
エープはその辺のおかず屋などでも普通に売られているくらいチェンマイではポピュラーな料理だが、この店のものは、ハーブペーストにかなり色々な材料を使っていると思われ、複雑な味に仕上がっている。
これもカーオヌン(カーオニヨウ=もち米)との相性が抜群な一品。
同じ料理で具材を豚肉にしたもの(エープムー)もある。
ホーヌンガイバーン
地鶏と小さなタイ茄子に香辛料やハーブを加え、バナナの葉で蒸したもの。
上のエープは魚の身以外はペースト状なのに比べ、こちらは野菜などが形のまま入っていてより食感が楽しめる感じ。
エープとほぼ系統が同じなので、もし頼むのであればどちらかにしたほうがいい。
個人的に選ぶのなら、こちらがよりおすすめかな。
カーオレームフントート
チェンマイ郷土料理というよりはタイヤイ(シャン族)料理だ。
カーオレームフンは、豆の粉をベースにしたタイヤイ(シャン族)の主食の位置づけにあるもので、ドロドロのペースト状になったものは麺の上にかけ、固めて葛餅のようにしたものは唐辛子ソースのようなものを上からかけて食べる。
この店のカーオレームフントートは後者を揚げたもので、薄味のタレをつけていただくスタイルになっている。
カーオレムフンは自家製で、店の裏側に行くと大きなパッドに流し入れたものを外で乾かしているのをたまに見かけることがある。
普通の店に比べると柔らかめだが、それがまたいい。
辛さはまったくなく、ちょっと豆腐にも似た食感なので日本人にはなじみやすいと思う。
ゲーンハーンレー
店のシグネチャーメニューと言ってもよい、豚バラ肉のミャンマー風カレー。
チェンマイおよびタイ北部を代表する料理のひとつで、どこの郷土料理レストランでも間違いなくメニューに載っているし、カントークディナーでも出される。
かなり油っこくギトギトになっていることが多いが、この店のゲーンハーンレーはそれほど油を多用しておらず、香辛料の風味を生かした割とまろやかな味わいに仕上がっている。
ただ、個人的にはここでゲーンハーンレーを食べるのであればすぐ下で紹介しているカーオパット(チャーハン)が絶品なのでそちらをおすすめしたい。
カーオパットゲーンハーンレー
上記豚バラ肉のミャンマー風カレーを使ったチャーハン。
近年タイ料理レストランではゲーンキヨウワーン(グリーンカレー)を使ったカーオパットなどが非常にポピュラーになっているが、そのゲーンハーンレー版。
この店のゲーンハーンレーはもちろん普通に食べても十分おいしいのだが、カーオパット(チャーハン)にするとその風味が一層引き立つ。
初めてこれを食べた時にはあまりのおいしさに衝撃を受け、それ以来ここに来た時にはたいてい頼む料理になっている。
チェンマイ郷土料理レストランなので普通主食はカーオヌン(カーオニヨウ=もち米)なのだが、量が少ないのでそれを頼んだとしてもぜひ注文してほしい。
たぶん、ビックリすると思う。
ガイトートソースチュム
お店オリジナルソースのフライドチキン。
比較的あっさりめのソースで、辛さもほとんどないので誰でも食べられると思う。
ナムプリッククワサイカイチヨウ
秘伝レシピの唐辛子ふりかけの卵焼き添え。
写真だと卵焼きがメインに見えるが、あくまでも主役はナムプリックだ。
「どのへんが秘伝なのか?」と言われると説明がむずかしいのだが、似たタイプの市販のナムプリックナムヨーイとの比較で言えばより多くの材料が使われており、クワ(炒る)なので水分も少なくカリカリ、パリパリしている印象だ。
ナムプリック好きはぜひ頼んでみよう。
ナムプリックヌム
チェンマイを代表する唐辛子味噌で、バンコクなどから来る旅行者はお土産として持ち帰る人が多い。
大きな青唐辛子をベースにナス、ニンニク、ホームデーン(エシャロットの一種で日本では紫たまねぎと混同されることが多い)などを焼いてからつぶしペースト状にしたもの。
カーオヌン(カーオニヨウ=もち米)や一緒について来るケープムー(豚皮のカリカリ揚げ)につけて食べる。
青唐辛子が主な材料として使われているのでそこそこ辛い。
苦手な人は注意したほうがいいと思う。
ナムプリックオーン
ミートソース風の唐辛子味噌で、ナムプリックヌムと合わせてカントークディナーなどでも必ずついてくるチェンマイを代表する料理だ。
店によって味に違いがあり、それを食べ比べるのもチェンマイ暮らしの楽しさでもあるのだが、この店のものは辛さもほどほどで、味のバランスがいい。
一緒に出て来るゆで野菜やケープムー(豚皮のカリカリ揚げ)、カーオヌン(カーオニヨウ=もち米)をつけていただく。
カーオヌン(カーオニヨウ)
チェンマイ郷土料理レストランなので、主食は当然カーオヌン(カーオニヨウ=もち米)になる。
最近のチェンマイのレストランはカーオヌン(カーオニヨウ=もち米)というと写真のような黒もち米を出すところが多いが、チュムも同様だ。
カゴに入って出て来るが量が少ないので女性でも2つくらいはペロリと食べられてしまう。
ただし、後でお腹がふくれて来るので要注意ではあるが。
日によってはアンチャン(バタフライピー=蝶豆の花)で色をつけたものが出てくることもある。
お濠の中の旧市街の支店は予約必須
2022年に入って(たぶん)、旧市街のど真ん中に支店(CHUM Northern Kitchen@Old City)がオープンした。
住所:24 PhraSing T.Si Phum A.Mueang
TEL:085-5241424
場所はワットプラシンのすぐそば、寺院を背に左に進み最初の信号を右折して100mほど行った左側で、確か以前はカフェか何かだったように記憶している。
2階が骨組みだけの建物で、本店と同じ緑色の看板が目印だ。
店内はテーブル席、半円形の長イス風の独立したスペース、屋外席とバリエーション豊かだ。
メニューは本店と同じなので、注文する時には上記おすすめ料理を参考にしてほしい。
お濠の中の旧市街のど真ん中というロケーションなので、特に夜は予約絶必(運よく入れる時もあるが自分が見た限りではほとんどの客が断られている)。
自動車やスクーターなど自前の交通手段がある場合は本店まで足を伸ばす(Grabなどの配車アプリだと、市内に戻る車をつかまえるのに時間がかかることが多い)のもいいと思うが、そうでない旅行者など場合はこの支店のほうが圧倒的にアクセスしやすいだろう。
ぜひ、チュライおばあちゃんから家族へと継承されてきたレシピのチェンマイ郷土料理を味わってみてほしい。
営業時間は10時半~20時となっている。
Booking.com
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