チェンマイで借りている家には1,100リットルという大容量の水タンクが設置されているのだが、ある日突然タンクに注入される水が止まらなくなり、上ぶたからあふれだす騒ぎとなった。
最初のうちは水道の元栓を閉めて水を止めたりしていたのだが、とてもいちいちそんな作業を繰り返してはいられない。
タイでは、ほかの物価と比較すると電気代はかなり高く感じるが、水道代はべらぼうに安い。
自分の家では、乾季で特に庭の水まきを多くしたりしなければ100THBかかるかかからないかだ。
なので、「多少なら水があふれててもいいかな~」とのんきに考えていたら、家に来た友人が「このままあふれっぱなしにしておいたら、次の水道代は大変なことになるぞ」とおどかすように言う。
とはいえ、今まで水回りの修理など自分でできる範囲のことしかやったことがなく、修理業者のあてとかがあるわけではない。
で、この友人に知り合いがいるかたずねたら、近所に住んでいる家周りの細々した仕事をしてくれるという男性を連れてきた。
ちなみにこの男性、定職はなく、こうした手間仕事で食べているという。
日本でも、昔はこういう人が結構いたという話を聞いたことがあるが、それでも暮らしていける人たちがいる社会って、何かいいものだと思うな。
さて、この男性、早速タンクの中を見て、浮き玉を支える鉄の棒が曲がっていてうまく水を止められないと言う。
最初は、この棒をタンクからはずして曲がりを調節して何とか直そうとしていた。
が、ガチャガチャやっているうちに、浮き玉と鉄の棒をつなぐ金具が折れてしまった。
「こりゃ、新しい浮き玉一式を買ってこなくちゃだめだな」ということになり、急きょ自分がバイクを運転して彼の案内で2人乗りして水道工事用品店に出かけた。
こんな店には、よっぽどのことがなければ入る機会がないので、なかなか楽しい。
修理人さんは、浮き玉以外にもビニールテープのようなものなど必要な材料を買い揃えると、家に戻って作業再開だ。
まずは、浮き玉が入った袋からL字型の金具を取り出す
そして、一緒に購入したビニールテープのようなものをネジの部分に巻き始めた
店で買った時にはビニールテープのように見えたのだが、薄くてビヨ~ンと伸びるゴムのような素材で、これをネジになっている部分に巻き付けることで防水の役割を果たすようだ。
プロの水道工事屋さんではないのでもっとアバウトな仕事をするのかと思っていたが、かなりキチンと仕事をしてくれているぞ。
ネジ部分に防水ゴムテープを巻き終わると、つなぎ目に黒いゴムパッキンをセットして、水道管とタンクとをつなぐパイプにも同様に防水ゴムのようなものを巻きつけ双方をしっかりと接合させた。
そして、最後にタンクにねじ込む側にも念入りに防水ゴムテープを巻いた
さあ、いよいよ浮き玉の固定だ。
しかし、浮き玉以外のパーツはかなり年季が入っており錆びついたりしているのか、なかなかうまくネジが噛み合わず、かなり苦労している。
途中までは入っていくのだが、奥までキッチリと止まらない
はめようとしては失敗してはずし、そうこうしているうちにネジ部分に巻いていた防水ゴムテープがはがれてまた巻き直しをして再度トライ、というようなことを30分以上続けていただろうか。
修理人さんの顔や身体から汗が流れ落ち、買ってきた防水ゴムテープもなくなりかけ、「この先、どうなるのかな……」と不安感が頭をもたげ始めたころ、奇跡的に(?)何とか無事にキッチリ固定することに成功した。
その瞬間、脇でずっと見ていた自分と修理人さんは思わず顔を見合わせて「やった~っ!!」と歓声をあげて、ガッチリ握手(笑)
後には、取り外された折れ曲がった古い浮き玉がポツンと残された
家にやって来てかれこれ3時間近く、「手間賃は?」と聞くと100THB(現在のレートで約350JPY)だと言う。
「え~っ、そんなに安くていいの!?」とビックリしてしまい、もっとたくさんあげようとしたのだが、頑として受け取ろうとしない。
それじゃあまりにも申し訳ないので、ビールを飲むか聞いたら「飲む」と言うので、近くのよろず屋で缶ビールを買ってきて、お礼の気持ちとして渡した。
先日、門柱を修理した時にも書いたが、チェンマイで家を借りていると、コンドミニアムやアパートの一室を借りるよりも、はるかに色々と些細なものを含め困ったことが発生するし、大家に頼らず(頼れず)自力で解決しなければならないことも多い。
でも、そんな時にこそチェンマイ(タイ)人の真のホスピタリティーに触れられたり、彼(彼女)たちの生活の奥深い部分がかいま見えたりする。
自分がチェンマイでこんな体験ができるのも、当地であれこれと助けてくれる(日本人を含めた)友人知人がいてくれるからなのだが、こういう暮らし方はこれからも続けていきたいなあ。
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