タイ最北の街メーサーイから国境を越え、ミャンマー(ビルマ)に入りタチレク(タキレク)の街へ。
そこから車で30分ほどのところにある友人の奥さんの実家で、タイヤイ(シャン族)料理の食事をごちそうになったのが、朝の10時という微妙な時間だった。
食事の後は高床式の家でノンビリと昼寝をしたり、近所の親戚の家を訪問していたりして過ごす。
食事が遅かったのでお昼時にはお腹が空かず、タイ側へと戻る前の14時ごろになったら空腹を感じ出す、というこれまた中途半端な展開になってしまった。
友人の奥さんの親戚の女性が車で再び迎えに来てくれ国境へと戻りながら雑談の中で、少しお腹が空いたので何か食べてからタイ側に戻ろうと思うと話すと、「親戚が国境のすぐそばで食堂をやってるから、そこで食べて行ったら?」と言ってくれた。
店のあてがあるわけでもなく、親戚ということはタイヤイ(シャン族)なのでまた何か変わった料理が食べられるのではないかという期待もあり、「ぜひ行きましょう!」と応えて連れて行ってもらうことにした。
店は国境まで車で5分ほどのところの住宅街の中にあった。
住宅街は、チェンマイの郊外にもあるような感じで割とできたばかりのこぎれいな家が立ち並んでいたが、道路は舗装工事の真っただ中で車が通ると土ぼこりが盛大に巻きあがる。
しかし、表通りだけでなくこんな普通の道まで舗装が進められているなんて、ミャンマー(ビルマ)の急速な発展ぶりには驚くばかりだ。
店は道路に向かってテーブルを出して営業していた。
食堂というだけで何を出す店なのか聞かずに来たのだが、テーブルの上を見回してみると……見たことのあるものが置いてあった。
タイヤイ(シャン族)の伝統料理、カーオフンだ。
名前にカーオがついていることからわかる通り、原料は米粉らしいのだが、葛餅を少し固くした食感で、麺のようにスープを入れたり一口大に切って辛いタレをつけて主食のように食べる。
早速いただくことにする。
出てきたのは、スープに細長く切ったカーオフンを入れたものだった。
料理の名前を聞いたら「カーオフン・カーオ」と言われたのだが、これはおそらく入っているカーオフンの種類だと思う。
カーオフンには、白い色をしたカーオフン・カーオと茶色いカーオフン・トゥリンというものがあるので。
かなり薄味の、生暖かいスープが張ってあった。
しばらくすると、もう1種類料理が運ばれてきた。
「ノムセン・ナムチュア」という料理だそうだ。
ノムセンはカムムアン(คำเมือง=都言葉=チェンマイ語)でカノムチン(タイ風素麺)のこと、ナムチュアはおそらくチュアという名前のスープ(น้ำ=ナム)だと思う。
タイヤイ(シャン族)のノムセン(カノムチン)というと、チェンマイでも普通に食べられているギヨウという名の花を使ったスープの「ナムギヨウ」がよく知られている。
が、このナムチュアはナムギヨウと異なりスープにほとんど味がつけられておらず、唐辛子ベースのふりかけのようなものとパクチーのみじん切りがかけられている。
テーブルの上の調味料で自分の好みの味に仕上げるようだ。
タイの一般的な食堂に比べて調味料の種類が多く、チェンマイでは見かけないものもあった。
ひと通り入れてみたが、それでもまだシンプルであっさりとしており、カーオフンを食べた後だったがサラリと食べることができた。
コップにはミャンマー(ビルマ)語が書かれていて、ここがタイではないことを感じさせる。
車でほんの5分も走ればタイなのだが。
店の横に座って出された食事を食べていると、次から次へと客がやって来た。
見ていると、テーブルに置かれている卵を注文している客が多い。
ただのゆで卵かと思ったのだが、店のおばさんがケースから取り出した卵を見ると、下には穴が開けられていた(写真では見えない)。
殻を割って半分に切った卵には黄身が入っておらず、おもむろにそれを炭火の上に乗せた。
あ~、これはチェンマイでも時々売ってるやつだ。
卵に穴を開けて中身を出したら白身だけを分離して、出汁と混ぜてから殻に詰め直して火を入れて固めた「カイ・ソンクルアン」という料理だ。
タイヤイ(シャン族)語で何と呼ぶのか聞いたら「カイ・ソンクルアン」ということで、名前は同じだった。
これは、もともとタイヤイ(シャン族)料理だったのだろうか???
ものほしそうに見えたのか、客からの注文が一段落すると店のおばさんが自分のために焼いて出してくれた。
テーブルの上に置いてあるミャンマー(ビルマ)醤油をかけていただいた。
チェンマイだと何もかけず白身に混ぜられた出汁の味だけで食べることが多いと思うが、醤油をかけると香ばしさが口の中に広がって、卵というよりも焼き餅の一種を食べているような錯覚にとらわれた。
ノンビリと食事をいただいていたら国境が閉まる時間が近づいて来て、お礼を言って少しあわてて車に乗り込んでタキレク(タチレク)に戻ったのだった。
しかし、タイヤイ(シャン族)料理もまだまだ奥が深いな~と思わせる、今回の旅であった。
次回は、タイヤイ(シャン族)の藩王国があったチェントゥンまで足を伸ばしてみたいなあ……
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