急激に普及した街のコインランドリー
記憶は定かではないが5~6年前だろうか、チェンマイ市内に初めて日本にもあるタイプの大型コインランドリーが登場すると、あれよあれよという間に街の至るところで見るようになった。
タイ人向けの安いアパートなどには昔から洗濯機(を置くスペースや給排水設備)がないためチェンマイに住むかなりの人たちは「家で洗濯する」という習慣が元々なかったが、家に洗濯機のある人にとっても特に雨季には乾燥まで一気にやってくれるコインランドリーは間違いなく便利なのだろう。
洗濯と乾燥で1回100THB近くかかるものの、それを簡単に出せるだけの経済的余裕のある人が増えたというのも理由かもしれない。
以前ならホテルのサービスを使うしかなかった旅行者にもこの手のコインランドリーは大変便利で、ロケーション的に彼らをターゲットにしたと思われる店も市内中心部に何軒もあって店内には外国人も多く見られる。
そんなチェンマイのコインランドリーだが、複雑なサービスではないので実際に行ったら使い方がわからず途方に暮れた、などということはないだろうが、やはりローカルルールのようなものも存在する。
そこで、この記事ではそんなチェンマイのコインランドリーの使い方について解説する。
最後はおまけで、チェンマイ(タイ)の洗濯屋の形態の歴史みたいなものも紹介しよう。
おすすめは英語説明もあり一番見かける「Otteri」
チェンマイにはチェーン、個人経営を問わず数えきれないほどのコインランドリーが営業しているが、おそらく一番数が多いブランドは「Otteri」ではないだろうか。
店舗の正式名称は「Otteri Wash&Dry」といい、経営母体のK-Nex Corporation社はウェブサイトによれば2012年の創業で元々はホテルや病院などに工業用の洗濯機や乾燥機を販売していたが、2015年から一般生活者に向けたコインランドリービジネスに参入した。
ヘタウマっぽい動物キャラ(店名からしてカワウソ?)のイラストと水色のカラーリングが目印で、気をつけて見ていると本当に至るところにある。
個人的に「Otteri」をおすすめする理由は、店舗数が多いだけではなく店内に英語の利用説明があることが大きい。
しょせんはコインランドリーなのでそんなに複雑なことはないのだが、やはり旅行者にとっては英語があるのは心強いだろう。
「Otteri」以外でも、大手チェーンならこれと同じような英語併記の使い方説明が掲示されていることが多い。
必要なのは洗濯ものとお金だけ。無料Wi-Fiもあり
自分は日本でコインランドリーを使ったことがないので、チェンマイ(タイ)のそれと細かな使い方に違いがあるかどうかわからないが、持って行かなければならないものは基本的に洗濯ものと料金だけだ。
頻繁に使っている地元の人たちは洗剤と柔軟剤はスーパーなどで売っている大きな容器のもの(人によっては飲み終わったドリンクのペットボトルに移し替えている)を持参している人も多いがそれ自体が持ち運ぶのに重たいし、旅行者はそもそもそんなにたくさんは必要ないので店のもの買ったほうがよい。
洗濯から乾燥までのおおよそのプロセスは
(1)両替機でコインに両替する
(2)洗剤と柔軟剤を購入する
(3)ドラムに洗濯もの、洗剤と柔軟剤を入れる
(4)水温を選択し料金投入、スタートボタンで洗濯開始
(5)洗濯が終わったら乾燥機のドラムに洗濯ものを移動
(6)コース選択は不要、料金を投入しスタートボタンで乾燥開始
(7)乾燥後は必要ならテーブルで畳む
まずは店内に入ろう。
たいていはホンテウ(タイ式のタウンハウス)の1区画を店としているので広くはないが、店内は意外にきれいに保たれていて安心して使う気になる。
なお、店内に入る時には靴を脱がなければならない店も多い。
このような掲示(英語併記のところも多い)が入口付近に出ていたら、あるいは入口に靴が脱ぎ置かれていたらその店は土足禁止ということなので注意しよう。
両替機でコインに両替する
洗濯機も乾燥機も支払いは硬貨かQRコード決済しか使えない。
一番小さな機械でも両方使えば80THB、洗剤と柔軟剤を買えば各5THBで最低90THBは必要になるので、QRコード決済ができない人はまず小銭を用意しよう。
店内には必ず両替機があるはずだ。
ここで必要な分を両替する。
普通は10THB硬貨が出て来るが、たまにこの店の洗濯機と乾燥機(洗剤の自動販売機とかは不可)でしか使えない「Otteri」と刻印されたコインが出て来ることがある。
両替が終わったら1枚1枚チェックしたほうがいい。
洗剤と柔軟剤を購入する
次に洗剤と柔軟剤を購入しよう。
これも自動販売機が店内に設置してあるはずだ。
柔軟剤は絶対に入れたほうがよい。
タイが硬水だからか知らないが、柔軟剤を入れずに洗濯をしたものはひどくゴワゴワになってしまう。
自分は一番小さい13kgの洗濯機を使っているが、洗剤は2袋使っている。
1袋だと洗濯中にほとんど泡が見えないし、自宅の洗濯機で使う洗剤の量と比較してみてもやはり1袋では少ないと思うので。
ちなみに、洗剤を持参しているタイ人を見ているとかなり大量に投入してドラムの中で異常に泡が発生してるケースが多い。
逆に柔軟剤は1袋に抑えておいたほうがいい。
タイの柔軟剤は香りの強いものが多く、2袋入れると例えば服を着ていても気になってしまうくらいなことがあるので。
ドラムに洗濯もの、洗剤と柔軟剤を入れる
間違えることはないと思うが、青色が洗濯機で赤色が乾燥機だ。
洗濯機は容量10kg、13kg、17kgの3種類が設置されている店がほとんどで、これと水の温度によって料金が決まる。
ドラムに洗濯ものを入れたら、機械の上か正面横のほうに洗剤と柔軟剤の投入口があるので、それぞれ指定された方に入れよう。
この写真の場合、青が洗剤で赤が柔軟剤だ。
なお、店内には「洗濯してはいけないもの」という掲示が出ている。
ペットの服、ドア・フロアマット、靴、油やゴムのついた衣服などがあげられているが、実際のところ見張っている人はいない(監視カメラはある)ので基本は客の良心にまかされているといったところだろうか。
水温を選択し料金投入、スタートボタンで洗濯開始
洗濯もの、洗剤と柔軟剤を入れ終わったら実際に洗濯だ。
まず最初に、洗濯に使う水の温度を決定する
温度はCold(冷)、Warm(温)、Hot(熱)から選べるので、希望の温度のボタンを押す。
すると、液晶画面に料金が表示されるので出た金額を投入する。
硬貨を入れるたびに表示されている料金が減っていきゼロになると音が鳴るので、そうしたら「スタート」のボタンを押す。
液晶画面の表示が残り時間に変わって洗濯が始まるので、後は終わるのを待つだけだ。
店内では無料Wi-Fiが提供されているので、暇つぶしには困らないだろう。
壁には、禁止事項が掲示されている。
基本的に一人で来ている人が多いのでたいていはスマホを見たりして静かにしており、ここでの飲食などは慎んだ方がいいだろう。
「Otteri」はたいてい周囲が商店の中にあるので、洗濯(所要およそ30分。乾燥は25分)中に近くで食事したりコーヒーを飲んだりするくらいはできる。
洗濯が終わったら乾燥機のドラムに洗濯ものを移動
洗濯が終わると機械からピーピー音がするので、ドラムを開けて洗濯ものを取り出す。
これを乾燥機に移すのだが、店に備えつけのカゴがあるのでそれを使うと楽だ。
隣に写っているステップは洗濯機や乾燥機が2段に重ねられていて上を機械を使う時に手の届かない人のためのものだ。
コース選択は不要、料金を投入しスタートボタンで乾燥開始
乾燥機は大きさ(容量)が1種類しかなく、温度はデフォルト値(ミドル)に設定済なので料金も初めから液晶画面に表示されていると思う。
洗濯の時とまったく同じで液晶画面の料金の硬貨を投入して残が0になって音が鳴ったら「スタート」のボタンを押す。
すぐに乾燥機が回り出すので表示された時間が経過するまで待とう。
乾燥後は必要ならテーブルで畳む
乾燥機が止まればこれですべて終了だが、乾燥させたものをその場で畳みたいなら店に置いてあるテーブルを利用しよう。
裏技:すべてを店員にやってもらう
以上が「Otteri」の使い方なのだが、店によってはこれをすべて店員にやってもらうこともできる。
「Otteri」の中には掃除や片付けなどを行うスタッフがいる有人店舗があるのだが、そのスタッフに洗濯ものとお金を預ければ乾燥から最後の畳みまで全部やっておいてくれる。
写真は預かった山のような洗濯ものと畳む作業をしている「Otteri」のポロシャツを着たスタッフだ。
しかも、料金は無料(チップを渡したほうがいいかも)。
店にそのようなサービスの案内が出ているわけではないし、あくまでも何回か通ってスタッフと顔見知りになったりする必要があるのかもしれない。
自分の場合はとある店で他に客がおらずスタッフと雑談してたらこの話が出て、スタッフがいる他の店で「こういうのやってくれる?」と聞いたらOKだったので存在を知ったのだが。
おまけ:チェンマイの洗濯屋の形態進化史
冒頭に記した通りチェンマイに住むかなりの人たちは「家で洗濯する」という習慣が元々なかったのだが、今のコインランドリーが登場する前はどんなところを使って洗濯していたのだろうか。
自分がチェンマイに初めて部屋を借りたのは1995年ごろでその当時洗濯はいわゆる普通の洗濯屋に出していた。
看板には「ซัก(洗濯)อบ(乾燥)รีด(アイロンがけ)」と決まり文句が書かれている。
これは最も原始的なスタイルで、家庭用の洗濯機をヘタをすると1台だけ置いてそれで洗い乾燥は天日干し、最後はこれまた普通の家庭用のアイロンで仕上げるというものだ。
特別なノウハウや技術も不要で初期投資という点では極端を言えば洗濯機とアイロンが各1台、あとはせいぜい物干しとアイロン台があれば足りるので誰でも始めることができ、一般庶民の日銭稼ぎにはもってこいのビジネスだったのだと思う。
昔はアパートやコンドミニアムの1階(そこそこの規模のところは住人相手の小さな店が入っていることが多い)にもこのような洗濯屋が入っていて、苦労して洗濯物を運ばなくても済むようになっていてとても便利だった。
店は出された洗濯ものには全部アイロンをかける(そのほうがお金になる)ため、下着とかにまでピシッとアイロンがかかって戻って来るのには最初の頃は驚いた。
しかし実際はかなりの肉体労働で、特にアイロンがけを長時間やっていると腕やひじへの負担になるらしく(日本のクリーニング屋だとスプリングをつけて自動的に上に跳ね上がるような業務用のアイロンを使っている)、自分が長く利用していた洗濯屋のおばさんもひじを痛めて仕事ができなくなり最終的には廃業してしまった。
ほかにもっとよい仕事もあるのだろう、最近ではめっきり見かけることが少なくなってしまったタイプの店だ。
そして、次に現れたのが日本だったら絶対にあり得ない形態のコインランドリーだ。
一般の家庭用洗濯機に料金のコインを収受するチャチな機械を取りつけただけのシンプルなスタイルだ。
こちらは普通の洗濯屋とは違いまだまだ現役で活躍しているところが多く、特に学生とかが多いタイ人向けの安アパートの入口近くに並んでいる。
洗濯だけで15THB~25THB(料金は洗濯機の大きさによって変わる)程度なので、自分で干す手間を惜しまなければコインランドリーと比べてずっと安上がりなのがまだ支持されている理由だと思う。
このようにタイの洗濯産業(というほど大げさなものではない)は、すべて人力のフェイズ1、家庭用洗濯機プラス料金収受機のフェイズ2と進化を遂げ、今回紹介した大型コインランドリーがフェイズ3ということになるのだろう。
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