一昨日は陰暦8月15日の満月にあたり、タイではアーサーラハブーチャ(三宝節)という、仏教の祝日であった。
アーサーラハブーチャ(三宝節)とは、お釈迦様が最初の説教を行い(初転法輪)最初の子弟ができた日で、これにより、仏・法・僧(三宝)が揃った日ということで、人々はそれを祝って寺院にお参りに行く。
ちなみに、タイで寺院などにお参りに行くと、人々が仏像の前にひれ伏して3回地面に頭をつけるようにしてお祈りをしているのを見かけることがあるが、この「仏・法・僧」に祈りを捧げるという意味がある。
この日は、多くの人々が朝早くから寺院にお参りに行くが、ここチェンマイではタイヤイ(シャン族)が特にアーサーラハブーチャ(三宝節)を盛大に祝うようで、自分は毎年市内中心部のお濠の外側北東角(チェーンシープーム=シープーム砦)近くにあるタイヤイ(シャン族)寺院のワット・パーパオに行くことにしており、今年も出かけたのだった。
バイクに乗ってチャーンプアック門方向から東に向かってマニーノパラト通りを走っていくと、寺院のかなり手前から車が渋滞を起こしている。
寺院の手前100mくらいから、路上にはソンテウがずらりと止まっていた。
チェンマイ市内だけでなく、地方からも大勢のタイヤイ(シャン族)がソンテオをチャーターしてこの寺院にお参りに来るのだ。
警官も多数出て整理にあたっているが、追いついていない感じだ。
寺院を通り越して少し離れた路地にバイクを止めて、歩いて寺院へと向かう。
寺院近くの路上には、お参り道具を売る店がずらりと並んでいた。
ワット・パーパオの門。
一般のタイ寺院とは明らかにスタイルが異なっている。
入口からすでに混んでいるが、境内に入るとさらに人が多い。
写真右遠景の尖塔を持つ屋根の建物が、本堂だ。
男女とも民族衣装に身を包み、お参り道具をかかえて本堂へと向かっていく。
自分も、用意してきたお参り道具を持って人々の後について進んでいく。
本堂入口の階段には、放生用の鳥を売る人もいた。
階段を登って何とか本堂にたどり着いたのだが……中はすごいことになっていた。
立錐の余地もないくらい、お参りに来たタイヤイ(シャン族)で埋め尽くされていた。
写真の一番奥にご本尊の白いタイヤイ(シャン族)顔(?)の仏像が安置されており、例年であればその前に何人ものお坊さんが座っているのでその前まで行ってお供え物を渡した後でラップポン(お経を唱えてもらう)するのだが、とてもではないが奥に進むことができない。
つい最近、プラユット軍事独裁政権が隣国からの不法労働者を取り締まる目的で彼らと彼らを雇った事業主に対する罰金を大幅に引き上げたせいで、人々が一斉に国に戻りメーサーイやメーソットなどの国境が大混雑になっているというニュースをテレビで何度も目にしていた(その後軍事独裁政権が猶予期間を設けることを発表)ので、今年は人が少ないかと思っていたのだが、いやいやとんでもない、過去のどの年と比べても人が多かった。
これではいつになったら奥に行けるかわからないので、自分はさっさとあきらめて本堂の手前のホールのような場所にあったテーブルにお供え物を置いて退散してしまった。
お参り(とは今年は呼べなかったが)を終えた後の楽しみは、境内に出ている露店を見てタイヤイ(シャン族)料理を食べることだ。
というか、自分にとってはお参りよりもこちらのほうが重要だったりする(笑)
本堂を取り囲むスペースにずらりと店が並んでおりこちらも大賑わいだ。
一番多いのは民族衣装を売る店だ。
多くのタイヤイ(シャン族)はミャンマーからの出稼ぎで、彼らの平均的な給料を考えるとかなりいい値段で売られている。
乾麺やミャンマーからの食品などを売る店も多い。
唐辛子まみれの発酵食品は、タイヤイ(シャン族)ならではのものだ。
ちなみに、右上の白いものは小魚を米、塩で発酵させたもので日本のなれずしによく似ている。
日本風の固い豆腐や山形のだしに似たものも売られている。
露店をひやかして歩いたら適度にお腹が空いてきたので、いよいよ食事だ。
どの店も混み合っていたが、何とかそのうちの一軒で何とか席を見つけた。
メニューや品書きのようなものは用意されていないので、タイヤイ(シャン族)料理に多少なじみがないと何を頼んだらいいか困ってしまうかも。
自分がここに来て食べるのはいつもこれ。
米細麺の上から大豆ベースのねっとりとしたペーストのようなものをかけたもので、カーオフン・ウン(暖かいカーオフン)という。
どんぶりの底に米細麺があり、かき混ぜていただく。
黒く見えるミャンマー醤油(甘いのとしょっぱいのと2種あり)がかけ回してあるのだが、味はかなりあっさりとしており、あとはテーブルの上に置かれているタイの普通の麺食堂と同じ調味料を入れて自分で味を調えていく。
このカーオフン・ウンは、チェンマイでは金曜日の朝にナイトバザール近くで開かれる通称「チンホー(隊商雲南人)金曜朝市」でも食べることができるのだが、民族衣装を身につけたタイヤイ(シャン族)に囲まれて食べるとまた一味違う気がする。
大満足の食事を終えてバイクに戻るのだが、寺院の中を抜けて駐輪している路地に出ることにした。
ワット・パーパオは寺院内に大きな学校を併設しており、そこではミャンマーから来たタイヤイ(シャン族)の子供たちにタイ語を教えている。
校舎は立派で大きいものが複数ある。
建物のひとつは、どうやら日本のODAで建てられたらしい。
今年は天気がよく、かなり暑い中でのアーサーラハブーチャ(三宝節)のお参りであった。
翌日のカオパンサー(入安居)で、タイは暦の上でも本格的な雨季入りである。
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