4月13日から15日はソンクラーンだった。
タイ暦の新年にあたり、仏像や年長者の手に水を注いだりする慣わしが転じて今では街なかは誰彼お構いなしに水鉄砲やホースを使って水をかけあうことから「水かけ祭り」とも呼ばれている。
チェンマイはこの水かけが特に派手なことで知られている一方で、コンムアン(คนเมือง=都人=チェンマイ人)はソンクラーンを「ピーマイムアン(ปีใหม่เมือง=都(昔の城壁都市国家)の新年)」と呼び独自の風習を守って祭りを祝っている。
例えば、当地のタイヤイ(シャン族)の人達は普通は4月15日とされる元旦が1日ずれて16日となりお寺詣りもその日に行ったりしている。
自分はというとソンクラーンの時期は大気汚染もあって国外に出ることが多く、久しぶりにチェンマイにいた去年も3日間丸々完全に自宅に引きこもっていた。
だがそれもあまりに不健康だし、今年は幸い大気汚染がひどくなくて酷暑季特有のチリチリと肌を刺す痛いくらいの日差しが感じられるので外に出て水かけに参戦することにした。
「参戦」と言ってもスクーターを運転しているので一方的に水をかけられるだけだが。
旅行者が中心で単なる乱痴気騒ぎと化し水が臭いこともある(何年か前にはお濠の水をかけられて通称「殺人ウイルス」に感染し数名の死者が出て、それ以来祭り前には水をさらってはいるが)お濠沿いは避け、4月13日は市内南部のチェンマイ・ラムプーン街道の並木道、翌14日は東部郊外の街サンカムペーンと30km南にある古都ラムプーンに行ってみた。
どこも思いっきりローカルな水かけ祭りが見れたという意味では面白かったけど、やっぱり体力気力を使うのでもし来年以降この時期にチェンマイにいたとしても、もう水かけはいいかな。
南部郊外の国道106号線の並木道のローカルな水かけ
チェンマイ南部やや郊外になる、国道106号線(チェンマイ・ラムプーン街道)での水かけの様子。
市内からほんのちょっとしか離れていないにもかかわらず、いつ来てもまったく外国人を見かけない。
基本的に道路のピックアップ同士かピックアップと道路沿いの地上部隊の戦いになるのでなかなか激しく、スクーターは気をつけないと転倒の恐れもある。
まったく何も行われていないサンカムペーン中心部
チェンマイの東15kmほどのところにあるサンカムペーンの街。
ここも普段日中であれば国道1006号線沿いの中心部は買い物客をはじめ大勢の人でにぎわっているので、水かけが行われているのではないかと思い行ってみたが残念ながら何も行われていなかった。
というか、人自体がすごく少ない。
路面がところどころぬれており水かけをやった風ではあるのだが、みんなでかけ合うといった雰囲気は皆無だ。
もしかしたら水かけの場所が指定されてるのかと思って街の中をウロウロしてみたのだがまったく普段と変わらなかった。
もしかしたら、サンカムペーンの人達はチェンマイ市内に行ってしまうのかも。
というのも、自分がサンカムペーンに向かう途中で荷台に何人もの人と水を入れたポリタンクを積んだピックアップトラックと頻繁にすれ違ったので。
距離が近いぶん過激さも増大!?古都ラムプーンの水かけ
サンカムペーンから南西に進路を取りチョムプー郡を抜けて向かったのはチェンマイから直線距離だと30km南になる古都ラムプーンだ。
ハリプンチャイ王国の都が置かれ歴史はチェンマイよりも古く、話す言葉も微妙に違ったりしていて住む人々はこの土地に誇りを持っていることがチェンマイに住んでいると感じられる。
ラムプーンの旧市街もチェンマイ同様お濠に囲まれていてその中にはいくつもの寺院があるという構造だが、規模は小さくせいぜい1km*400m四方と言ったところだ。
その旧市街の入口で派手に水をかけられると、お濠沿いでは激しい水かけが展開されていた。
チェンマイと同じお濠沿いでもラムプーンは道幅が狭いのでお互いの距離が近く戦いが白熱するので、スクーターに乗っている自分はその余波を受けて前日のチェンマイ・ラムプーン街道以上にずぶぬれになってしまった。
ここでも外国人はまったく見かけなかったのが本当に不思議だ。
最終日は寺院にお詣りして砂の仏塔を作る
ソンクラーンの最終日、4月15日は本来であれば水かけはせずにお寺にお詣りする日となっている。
ただの乱痴気騒ぎに成り下がった今のソンクラーンではそんなことはお構いなしで水かけをしてしまう人が多いが。
特にタイ北部(ラーンナー地域)ではこの日を「ワンパヤーワン(วันพญาวัน)」と呼び新年の元旦の縁起のよい日として過去の1年の自分の行いを振り返り新しい1年を始める日として大切にしている人が多い。
ソンクラーンのお寺詣りで特に大切とされているのが、砂のチェディ(仏塔)を築く儀式だ。
この習慣は大蔵経の中の菩薩が仏様への崇拝として捧げるために砂のチェディを築くという善行をした、という記述に由来しているが、過去1年の間に寺院から出る時に砂や土を足につけてしまっていたものを砂のチェディ(仏塔)という形で返す、という意味もある。
タイ人はこの習慣を仏教の中の因果応報の信仰の教訓として結びつけているとのことだ。
自分もこの日は朝早起きしてシャワーを浴びたりして身支度を整えると、市内の寺院に向かった。
いつも行くのは以下の2か所の寺院と決まっている。
ワットチェットリン
最初は、お濠の中の旧市街にあるワットチェットリンだ。
20年くらい前までは廃寺で、漆喰がはがれ無残な姿のご本尊が残る本堂と壊れたチェディ(仏塔)などが打ち捨てられていたのだが再建、今ではご本尊と本堂はきれいにお色直しして多くの観光客が訪れている。
ラーンナー王国時代は由緒正しい寺院として王族から愛され、特に寺院の奥にある池は彼らがしばしば沐浴する場として使っていたという記録も残っている。
楼門をくぐってすぐの場所に、チェンマイで最も大きいと言われる砂のチェディ(仏塔)が作られソンクラーンが始まる前から多くの人が訪れているが、中でも4月15日は朝早くからチェディ(仏塔)に砂を返し、旗を立てて1年の祈願をするひとでにぎわっている。
15日でも朝早ければ水かけにも遭わずに済む。
立派な寺院の楼門
通りからはこの仏頭がアイキャッチになっている
寺院に入ってすぐのところにある砂の仏塔
奥で旗を買い砂をバケツに入れたら仏塔へ
お祈りをして旗を刺し仏塔に砂を返す
お詣りが終わるとみんな記念撮影
ワットチェットヨート
続いて出かけたのは、市内北西部のスーパーハイウェイ沿いにあるワットチェットヨートだ。
「7つの尖塔」という名のこの寺院は15世紀に第8回世界仏教徒会議が開催された名刹で、名前の通り尖塔を持つ仏塔はインドのブッダガヤにある大塔を模して作られたはずが間違った遠近法で描かれた絵を基にしたため似ても似つかない形になったと言われている。
こちらは、さすがに有名寺院ということもあって駐車場は自動車とバイクでいっぱいだった。
ただ、見ていると砂の仏塔にお詣りに来たのではなく奥にいるお坊さんにタムブン(徳積行)しに来た人が多いようだった。
それでも仏頭の周囲はお祈りする人や「仏教を支える」という意味を込めて奉納する色を塗った先が分かれた長い木を奉納する人が大勢いてにぎわっていた。
ワットチェットヨートの仏塔
同じように旗と砂をいただいて仏塔へ
その後は仏塔の正面で再び祈る人、仏像に水をかける人、色を塗った先が分かれた長い木を奉納する人など思い思いに信仰していた
コメント