ココナツミルク入り小麦平麺だけがカオソーイじゃない
「カオソーイ」と言えばチェンマイを代表する名物で、本場のを食べるためにわざわざやって来る人も珍しくないが、一口にカオソーイと言ってもすごい数のバリエーションがあるのはあまり知られていないかもしれない。
そもそも名前が「カオ(ข้าว)=米」、「ソーイ(ซอย)=細かく刻む、引き裂く」で、タイ百科事典と言ってもいい「タイ日辞典」には「ウルチ米の粉で作ったウドンで汁にして食べる」と書かれていて、本来は現在最も一般的な平打ちの小麦(中華)麺ではないかもしれないことも想像がつく。
実際チェンマイにも、小麦(中華)麺ではなく溶いた米粉を薄く伸ばして蒸したもはや麺ですらないもの(カオソーイノーイ)や汁なし(カオソーイヘーン)、雲南式(カオソーイユーンナーン。下の写真)といった変わり種を食べることのできる店もある。

スープも、ココナツミルクの入らない「ナムサイ」を出す店はチェンマイでは珍しくない。
そして、こうしたことを踏まえると「ミャンマー発祥」としばしば言われることにも自分は違和感を覚えてしまう。
個人的にはチンホー(隊商ムスリム雲南人)が元々食べていた米麺に、移動の過程でその土地土地の食材や味を取り入れつつ総称として「カオソーイ」と呼んだのではないだろうかと想像している。
そうでなければ「カオソーイ」と呼ばれる料理すべてに共通する点(素材や調理法、味など)が見つからない、なんてことは起こり得ないのではないだろうか。
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余談はさておき、そんなバリエーションが数えきれないほどあるカオソーイでも自分が住んでいるチェンマイではお目にかかったことのないものがある。
それが、中国雲南省西双版納のタイルー族式カオソーイだ。
西双版納は日本ではシーサンパンナと呼ばれることが多いが、実際はタイ語で「12の千の田んぼ」を意味するシップソーンパンナー(สิบสองปันนา)の音を漢字にあてたものになる。
チェンマイを含むタイ北部にも多く住んでいるタイ系諸民族が暮らし、現在のタイ人のルーツもこちらにあると言われる自然豊かな亜熱帯の楽園だ。
そんな西双版納のタイルー族式カオソーイが食べられるのは、チェンマイから北東に車で4時間半ほどのところにあるタイ最北部、メコン川沿いのチェンラーイ県チェンコーン。
ラオスとの国境のメコン川に橋がかかったことで一躍交通の要衝となり、現在建設中のバンコクからの高速鉄道の終着駅ができることから今後ますます旅行者の増加が期待されている街だ。
店の名前はズバリ「パーオーンカオソーイシップソーンパンナー(ป้าอ่อนข้าวซอยสิบสองปันนา=オーンおばさんの西双版納式カオソーイ)」。
この街を日中訪れる機会があれば、ぜひ立ち寄ってほしい店だ。
市内だが一本裏道にあり目立たたない店構え
「パーオーンカオソーイシップソーンパンナー」はチェンコーンの街のほぼ中心部だが、メインの国道1020号線沿いではなく1本メコン川と反対方向(南)に入った道沿いにある。
自分のようにラオスとの国境橋方面から自動車を運転してチェンコーンの街に入った場合、チェンコーン郵便局のはす向かいの路地(ソイ6)に左折して入って行く。
道は車がようやくすれ違える程度の幅だが、200mほど進んだところにある十字路の右向かい角が店だ。

かなり年季の入った建物で、道路沿いには大きな木がたくさん植わっていてパッと見にはここが店だということにも気づかないかもしれない。
十字路の角に置かれている、大きな標識を目印にするといい。

ここには「オーンおばさんの店に到着 チェンコーン0km チェンセーン54km」と書かれている。
余談だが、店の前の大通りと並行に走っている道はたぶん古~い街道なのだと思う。
この道はチェンコーン市内中心部の入口の信号(角にワットシードーンチャイという大きな寺院がある)と、街の反対側のもう中心部を抜けチェンセーンへの山越えが始まろうとする国道1290号線との間を結んでいるのだが、途中ものすごく古い木造住居や商店などがポツポツと残っているからだ。
もし店に来るのなら、この細い道をなるべく長く通ったほうが昔の街の雰囲気とかがわかっていいかも。
自動車でも行き来するにはぜんぜん問題ない道幅だ。
店の入口には、目立たない看板がかけられている。


看板には左上から「オーンおばさんの店 ヨーン族の跡をたどる カオソーイ シップソーンパンナー」を書かれている。
もう、期待できる雰囲気が看板から漂っている。
店内はチェンマイでも見かける、少し大型の食堂風の造りになっている。


キッチンはシンプルだが、基本的にここではカオソーイ一択(メニューにはガパオとかもある)なのでこれで十分用は足りるのだろう。

店の一角ではみやげ物が売られている。

織物は、チェンコーンとチェンセーンの中間ほどの幹線道路からはずれたメコン川沿いにあるタイルー族の村「バーンハートバーイ」で作られたものだ。

現在、この手の布製品は織り手が高齢化してどんどん少なくなる一方若者は織物など興味がなく技術継承が進まないため数が極端に減っており、いずれ入手困難になると思われるので興味のある人はぜひ手に取ってみよう。
肉味噌カオソーイとタイルー族式おにぎりをセットで
メニューは、店内の何か所かに掲げられている。

普通のクエティオ(米麺)やガパオ、カーオパット(炒飯)などもあるが、ここに来てカオソーイ以外のものを食べるのはまったく意味がない。
写真以外のメニューボードには、最初からカオソーイしか載っていないものもある。
ボードとは別に、外国人用と思われる英語併記の小さなメニューも用意されているので店の人が気づけばそちらを持って来てもらえるかも。
自分はいつもタイ語でやり取りしてしまうのでパーおばさんや店員が英語を喋れるかどうかはわからないが、注文する程度なら問題なく通じると思う。
おばさんが「ビザラン(「ビザラン」とそのまま言っていた)の外国人が結構店に来る」と言ってたので。
カオソーイは以下の5種類から選べる。
*タムマダー(ธรรมดา。普通=追加具材なし)
*ピセートルークチン(พิเศษลูกชิ้น。つみれ追加)
*ピセートカイ(พิเศษไข่。ゆで卵追加)
*ピセートカイルークチン(พิเศษไข่ลูกชิ้น。ゆで卵とつみれ追加)
*ピセートカイルークチンムー(พิเศษไข่ลูกชิ้นหมู。ゆで卵、つみれと豚肉追加)
理由はわからないが、豚肉単独での追加はできない。
せっかくチェンマイからはるばるここまで来たので、自分はいつも少し奮発(というような値段ではない)してゆで卵とつみれを追加したものをオーダーしている。


日本語に意訳すると「西双版納タイルー族式肉味噌米麺」となるだろうか。
正式な名前は「カオソーイナムナー」と言うそうだ。
チェンマイなどで普通に食べられているカオソーイとは、まず麺が違う。
冒頭に記した通り、平打ちの小麦(中華)麺ではなくやや幅広(センヤイほどではない)の米麺が使われている。
いわゆるクエティオとも少し食感が異なり、もしかしたらラオスの米麺(カオピアック)に近いかも。
モチモチ感はあるがコシはなく、日本の麺とは大きく異なる食感だ。
そして、スープにココナツミルクは使われていない。
スープそのものにはそれほど味がついておらず、上に乗っている肉味噌をほぐしてスープと混ぜそれに麺をからませて食べるというスタイルだ。
その肉味噌。
見た目はナムプリックオーン(ミートソース風唐辛子味噌)に似ているが、実際はそれほど濃い味がついているわけではなくどちらかというと肉の元々の味を生かしたスタイルだ。
少し甘さも感じられ、これがスープに混ぜると効いて来る。
ココナツミルクの入ったカオソーイは自分にはくどくてチェンマイでも普段はほとんど食べないのだが、このスタイルなら飽きが来ることもない。
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そして、カオソーイと一緒にぜひ味わってほしいのがカオギアオ(タイルー族式おにぎり)だ。

カオギアオは米に豚の血と脂身を混ぜてバナナの葉に包んで蒸したもので、タイヤイ(シャン族)をはじめとするタイ系諸民族の間で広く食べられている。
チェンマイでも、北タイ料理のおかず屋やノムセン(カノムチ=タイ素麺)の店などで普通に売られているので口にしたことがある人も多いと思う。
たいていのカオギアオは豚の血や脂身のせいでで少しネットリしているのだが、ここのはなぜかパラッとした感じが強いのが特徴だ。
血の味とかはまったくせず、ちょっと柔らかいおにぎり(握ってないけど)と言えば近いだろうか。
カオソーイとセットでいただくとちょうどお腹いっぱいになる。
なお、カオギアオはメニューに載っておらずキッチンに置かれているだけなので、料理の注文時にはそちらをチェックしてみよう。
国境越えでチェンコーンを訪れる人はぜひ立ち寄って
今回紹介した、タイ最北部メコン川沿いの街チェンコーンにある「パーオーンカオソーイシップソーンパンナー」。
残念なことに自分はまだ西双版納には行ったことがないので、本場(?)のものとの違いなどはわからない。
もしラオス経由でそちら方面に向かう/から来た人は、ここと食べ比べをしてみてはいかがだろうか。
また、そうでなくてもここのカオソーイはチェンマイ(タイ)の普通のカオソーイとはまったく別物だし、少なくともタイ国内では簡単に食べられるものではない。
「こんなカーオソイもあるのか」ということで貴重な食体験になると思うので、チェンコーンに来たらぜひ立ち寄ってほしい。
チェンコーンで泊まるなら客室から雄大なメコン川が一望の中級ホテル「フォーチューンリバービューチェンコーン」がおすすめ
ラオスと行き来するためにしかたなく一泊するようなバックパッカーなら街にある安いゲストハウスとかがいいと思うが、せっかくメコン川沿いの街チェンコーンに来たのなら時間によって変わりゆく川の様子を一日中眺めることのできるリゾート風のホテルもおすすめだ。
「フォーチューンリバービューチェンコーン」は、まさにメコン川を眺めるためのホテル、と言ってもいいくらいのロケーションで設備的にも普通の外国人ツーリストが十分満足できるだけのレベルを兼ね備えていて、おすすめだ。





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