ラムプーンの「川向こう」はタイヨーン族居住エリア
チェンマイの南30kmほどのところにある古都、ラムプーン。
チェンマイが建都される以前からモン族によるハリプンチャイ王国が栄え、独自の文化を誇る街としてチェンマイからの日帰り観光スポットとして人気が高い。
最大の見どころはワット・プラタート・ハリプンチャイで、いつ行ってもタイ人、外国人の観光客を乗せた大型バスが何台も停まっているが、あとはワット・チャーマテウィーやハリプンチャイ博物館などお濠の中の旧市街やその西側のエリアしか訪れない旅行者がほとんどだ。
一方で、旧市街の東側を流れるクワン川の向こう側は、「ウィアンヨーン」または「バーンヨーン」と呼ばれるタイヨーン族の居住地域になっている。
彼らの多くは、200年近くのビルマ(ミャンマー)支配によってほとんど打ち捨てられたようになって衰退していたこの地域を再興しようとしたカーウィラ王にしたがって、18世紀末に現在のミャンマー・シャン州にあるモンヨーン(ムアンヨーン。リンクはグーグルマップ)から移住してきた。
博物館と機織り場、ショップを併設する寺院ワット・トンケーオ
このタイヨーン族が居住するウィアンヨーン地区にはいくつかの美しい寺院があるのだが、ここで紹介するワット・トンケーオは寺院そのものよりも、併設された博物館と機織り場、布製品ショップのほうが見どころだ。
もし、ワット・プラタート・ハリプンチャイからここに来るのであれば、寺院の正面(東側)を出て通りを渡ると、クワン川にかかるお土産物屋が左右にずらりと並ぶ橋があるのでそこを通って川を渡り、まっすぐ100mほど行った左側に寺院はある。
チェンマイから直接来る場合はお濠(城壁)の信号を左折ししばらくお濠沿いに進むとロータリーの先左手に白い橋(ターナーン橋)があるのでそれを渡る。
すぐに右手に寺院があるのでそれを通り越したところにあるソイ(路地)に右折し道なりに200mほど進むと左手に半分壊れたチェディ(仏塔)があるが、これがワット・トンケーオだ。
寺院の入口はさらに少し進み、十字路を左折したところだ。
ワット・プラタート・ハリプンチャイから来てもチェンマイから来ても、通り沿いは洋服や布をたくさん並べたショップになっているのですぐにわかるだろう。
寺院としての特徴はない
ワット・トンケーオは裏手に古い崩れかけたチェディ(仏塔)があることからわかる通り、歴史のある寺院だ。
このチェディ(仏塔)の近くから発掘された石碑によれば、寺院はタイ歴21世紀にハリプンチャイ王国のサワティティ王によってワット・ケートワンとして建立され、その後スワティシットカルパナ王の時代に修行場や仏教を学ぶための学校が造られて大いに繁栄したという。
唯一この時代の建築物として残っているのが、裏手にポツンと建つチェディ(仏塔)だ。
その後ランナー王国の衰退に伴いいったんは没落したものの、カーウィラ王がチェンマイを再建したことに伴い西暦1825年に再建された。
そのため、寺院の中に入ると右手にウィハーン(本堂)があるが、ここは後年建て替えられたものなのだろう非常に真新しく、内部も含め見るべきものはない。
ヨーン族の文化風俗がわかる博物館
この寺院最大の見どころは、寺院に入って左手奥にある高床式の建物に造られた博物館だ。
おそらく古いタイヨーン族の住居を移築したものだろう、西暦1987年にオープンしたこの博物館は寺院の僧侶プラ・クルー・パイサーン・ティーラクンによって設立されたもので、当初は馬車の車輪などを置く程度のこじんまりとしたものだった。
が、その後この地域に住む人々が様々な生活用品や民族衣裳、布地などを寄贈して現在の形ができ上ったという。
靴を脱いで階段を登って博物館の中に入るのだが、おそらく普段は訪れる人もいないのだろうライトは消され真っ暗になっていることが多い。
特に説明をしてくれたりする人もいないので、勝手に照明のスイッチを入れて中を見せていただこう。
展示の中心は、タイヨーン族の伝統的な民族衣装だ。
ほとんどの衣装はただ展示されているだけで、中にはちょっとした説明がぶら下げられてはいるもののタイ語のみという状態なので、自分のようにタイヨーン族についての知識がない者にとってはちょっと残念だ。
布地を収めたガラスケース、糸繰り機や調理器具などの家庭用品を並べたスペース、さらには、祭りごとや儀式を行うのであろうスペースを模した部屋もある。
博物館は地元有志のボランティアで運営されていると思われ、入場料を取ったりすることもないので正直言って掃除なども十分行き届いていない感じなので、自分はいつもここに来た時には少額ながら寄付をするようにしている。
集会場的な役割も果たしている機織り場
博物館の向かい側、通りに面したショップの裏手には機織り機が並んでいる。
機織り機はかなり大きなもので、日中はおそらくこの寺院の周辺に住むタイヨーン族のおばちゃんたちだろう、何人もがおしゃべりをしながら手を動かしている。
女性たちはかしましくおしゃべりをしながら機織りに勤しんでおり、時折お寺のお坊さんも巻き込みつつ楽しそうにしている様子は、日本の地方でお年寄りの女性たちが集まって農作物などを加工しているのとまったく一緒だ。
格安で洋服や布地が買えるショップ
寺院の通りに面した場所は、洋服や布地が買えるショップになっている。
売っているのはここで機織りしたものばかりではなく、近所の家で作った洋服なども並んでいるようで、たまに女性がバイクなどで商品を持ち込んで展示などの作業をしていたりする。
布地はかなり手の込んだ高価なものもあるが、洋服類はチェンマイ市内で売られている同じようなものに比べるとかなり格安だ。
店にちゃんとした店員はおらず、商品を見ていると機織りをしているおばちゃんが手を止めて相手をしてくれるという感じだ。
当然英語はまったく通じないが、商品にはすべて値札がつけられていて値引きなどはできないので買い物をする上ではあまり困ることはない。
ショッピングだけでも気軽に立ち寄れる
タイヨーン族の風俗文化にはあまり関心はないが、布地などの買い物だけがしたい、というような場合でも、ショップは通りに面して店を開けているので簡単に立ち寄れる。
ラムプーン最大の見どころ、ワット・プラタート・ハリプンチャイからお土産物屋が立ち並ぶアーケードになったクワン川にかかる橋を渡ってくれば300mほどしか離れていないので、街のまた違った一面を見るためにもぜひ訪れてほしい場所だ。
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