市内中心部やや西寄りにあるチェンマイ最大の総合病院マハーラート・ナコンチェンマイ(スワンドーク)病院の敷地の中にある廃寺。
病院の中、というとちょっと訪れにくい雰囲気があると思われるかもしれないが、この廃寺の前を通る道は、病院を訪れた自動車やバイクがお濠沿いのブンルアン・リット通りに出るために通っているので、あまりそういった心配は必要ない。
以前は荒地のような場所にチェディ(仏塔)だけがポツンとたたずんでいるような状態だったと記憶しているが、近年その脇に新しく同名の寺院が建てられ、周囲には芝や花が植えられすっかりきれいに整備されており、廃寺というよりは普通の寺院に見える。
寺院名のパンサオは、カムムアン(チェンマイ語)の「1,000の窯」という言葉が転じたものと考えられている(1,000の窯を意味するカムムアン(チェンマイ語)のパンサオと、現在の寺院名のパンサオとは綴りが異なる)。
この寺院は、ワット・スワンドークのウィハーン(本堂)に安置されている「プラチャオ・ガオトゥー」として知られている仏像を製作したとされるプードンという名の仏師によって寄進されたと言われている。
写真でもわかる通り、現在はチェディだけが残されているが、これは外側の仏塔で、内部には14世紀以降のハリプンチャイ様式の影響を受けた八角形の基壇に据え置かれたもうひとつのチェディが存在しているらしいが、それを実際に見ることはできない。
また、外側のチェディには溝が掘られた蓮をかたどった基壇の上に建てられており、2つの円環線で飾られていたらしいのだが、仏塔はあちらこちらが崩れて失われてしまっており、どちらも確認することはできない。
頂上部は、おそらくそれと同じような形をしているのであろう円環線の飾りで囲まれている。
この寺院そのものの歴史は、ラーンナー王朝初期のパー・ユ王(ワット・プラシンを建立した)からその息子のクー・ナ王の間にまでさかのぼることができるが、現存するチェディ(仏塔)は、おそらくそれよりも若干後の時代に建立されたものであろうと考えられる。
病院の中にこうした廃寺がある、というのがいかにもチェンマイらしい、という気がするが、この街には役所や学校、動物園や一般の民家の中にも廃寺があり、ここのロケーションが特段珍しいというわけでもない。
何か特に際立った特徴があるわけではないのでわざわざ訪れる価値はないかもしれないが、非常にきれいに整備されており、また再建された寺院のウィハーン(本堂)などもなかなか趣がある。
もし、チェンマイ市内で廃寺をどこか1か所だけ見たい、というような人は候補にしてもいいと思う。
有名寺院ワット・スワンドーク観光から市内に戻る時には通り道沿いにあるので、アクセスもしやすい。
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