メーサローンで食事なら雲南中華の「平平飯店」がおすすめ
チェンラーイから車で2時間、標高約1,100mの山中にある小さな村メーサローン。
元々は第2次世界大戦後に勃発した中国共産党との内戦に敗れ雲南から敗走してきた段希文将軍率いる国民党93師団第5軍の兵士とその家族によって作られ、タイ政府の力が及ばない半独立国のような状態で一部の元兵士とその家族はケシ栽培など麻薬製造および密輸などに携わりながら大陸の中国共産党への反攻に転じることをもくろんでいたものの、最終的には武装解除と引き換えにタイ政府から居住権を与えられ国籍を取得した。
現在は、同じく中国共産党との戦いに敗れた人々が多く住む台湾から援助された木で栽培したお茶の産地ととともに風光明媚な場所として有名観光地となっている。
そんな来歴を持つ村なので、ここで食事をするならタイ料理よりも雲南中華のほうが絶対におすすめだ。
街には立派な造りでグループツアーのワンボクスカーが何台も停まっているようなレストランから麺だけしかないような食堂まで幅広い雲南中華料理を食べさせる店があるが、毎年お茶を買い出しに当地を訪れている自分が行くのは「平平飯店(ผิงผิงโภชนา=ピンピンポーチャナー)」だ。
店構えは殺風景だが、特産品の茶葉を使ったものを含めどの料理もいい味を出しており、いつも満足感が高くておすすめできる。
なお、店名は平平飯店ではなく「萍萍飯店」と書かれることもある。
村の中心部にありアクセスは簡単、車も止めやすい
「平平飯店」は、新旧に分かれているメーサローンの村の中心部の新しいほうにある。
一般的なチェンラーイから村へのルートになるメーチャーン経由国道1130号線で来ると、7-11のある旧中心部を通り越して1kmほど進むと、道路沿いに土産物屋が建ち並ぶ広々とした新しい村の中心部へと行き着く。
そこにはタイでよく見かける道路脇に立つ距離標識の巨大なモニュメントが置かれているが、店はそこから50mほど先の左手になる。
道路に面して看板が出ているので、それを目印にするといいだろう。
車は店の真ん前に止められるが、そこがふさがっていても手前を左折して小さなゲートをくぐった先が広場のようになっておりそちらにいくらでも駐車スペースがある。
店の手前に案内看板が出ていることもある。
東屋風の店内、メニューは一部写真付き
初めて来た人は、店の造りはシンプル、というよりは殺風景な印象を受けるだろう。
店の2方向は壁がない東屋風で、通りに面して饅頭の蒸し器が無造作に置かれてたりする。
店内は結構広く、料理を乗せる回転台のついた8人がけのテーブルが10以上置かれている。
少人数用の席とかはないようなので、2人とかでも遠慮なく座ろう。
席につくと、すぐに店主のおばさんがメニューを持って来てくれるだろう。
タイ語のみ(こういう店なので中国語併記のものもありそうな気がする)だが、一部写真付きなので心配無用。
また、店内の壁一面に写真つきの料理が貼られているので、そちらを指さしてオーダーしたほうが楽かもしれない。
店主のおばさんも、中華レストランではありがちな不愛想な感じには見えるものの、話してみると意外に親切で、おすすめ料理などを教えてくれるし「2人ならそのくらい頼めば十分でしょう」とかアドバイスもくれる。
自分はいつもタイ語で会話するが、おそらく中国語(雲南語)も通じると思われる。
おすすめは雲南式豚足煮込みや茶葉料理
店の看板の漢字の店名の上に「ขาหมู(豚足)หมั่นโถ(饅頭。たぶん正しいスペルはหมั่นโถว)と書かれていることからもわかる通り、この店のイチオシはこの2つの料理のようだ。
というか、メーサローンの雲南中華料理の店はほとんどがこれらをウリにしているのだが。
店主のおばさんにおすすめを聞いても、真っ先にこの2つをあげる。
なので、まずはこれを頼んでみよう。
メニューに書かれている料理名は「カームーユーンナーン(雲南式豚足煮込み)」となっている。
「雲南式」というのが一般的にどのような特徴を有するのか自分は知らないが、フードコートなどで出て来るカームーと比べるとご飯に合わせるわけではないということもあるだろうがずっと薄味であっさりしている。
肉もよく煮込まれており、口に入れるとホロホロと簡単に崩れていく感覚がよい。
チェンマイにも雲南料理レストランは何軒もあり自分も時々食べるのだが、主食としてはご飯よりもこのマントー(饅頭)を食べる機会が多い。
いかにも手製という感じで大きさは不ぞろい、中には指で押した(こねた)ような跡が形にはっきり残っていたりするが、ほのかな甘さがあって蒸したてということも重なって自分は好きだ。
カームーの薄味のスープに浸して食べると、いくらでもイケちゃう感じ。
メニューにはご飯ものもあるし、麺類もいくつも載っているので苦手な人はそちらを食べてもいいだろう。
これ以外の料理も何を食べてもおいしいが、やはり山の中の雲南料理レストランということもあるので、平地とは少し違ったものをここではおすすめしたい。
まずは、メーサローンの特産品を使った茶葉料理だ。
ヤムバイチャーソットという生の茶葉の和え物(サラダ)だ。
ヤム(和え物)と言ってもいわゆるタイ料理のヤムとは異なり、ほとんど辛味は感じられない。
茶葉料理は日本を含め他国でも何度か食べたことはあるが、正直言って「あ~、これはうまい!」と思ったことがない。
というか、茶葉そのものを料理に使っても、煎じて飲むほどの風味が楽しめないのだろう。
だからこそ、料理の材料としてよりも飲み物として普及したのだろうが。
このヤムバイチャーソットも、うまいうまいとバクバク食べられるようなものでもないが、茶葉をよく噛んでいると独特の風味が口の中に広がって来て楽しい。
メーサローンの郷土料理と言ってもいいようなものだと思うので、どちらかというと話のタネとしていただいてみてはどうだろうか。
ガイダムトゥンタンクイヤーチン(烏骨鶏の中国薬膳スープ)もおもしろい。
日本では高級中華料理レストラン以外あまり見かけることがない烏骨鶏だけど、タイではずっと一般的で値段もそれほど高くない。
烏骨鶏の肉は普通の鶏肉に比べるとおいしくなく、これは純粋にスープを楽しむ料理なのだが、シンプルにハーブやスパイスを使っただけな分余計な雑味がなく、口に入れるとまさに薬膳が身体にしみこんでいく感じがする。
標高1,000mを超すメーサローンは、乾季はもちろん雨季の真っただ中でも陽が出なければかなり肌寒く感じる日もあり、そんな時には特にこの料理はおすすめしたい。
ヘットホームオプシーユー(しいたけの醤油蒸し)も味わい深い一品だ。
料理名は上記の通りなのだが、見た目のシンプルさと異なりなかなか複雑で深い味わいだ。
推測なのだが、干ししいたけを戻す時にはいくつかの調味料を加えた醤油を使い、サッと油通ししてから蒸しているのではないだろうか。
しいたけは全体的に小さく日本だったら安売りに用にしかならないような感じのものだが、逆にフニャフニャした柔らかさがあまりなくしっかりとした歯ごたえが楽しめるので行くとついつい頼んでしまう料理だ。
パットヨートマラワーン(ハヤトウリの芽の炒め物)もシンプルだが味わい深い。
タイ語でマラはニガウリのことだがマラワーンはハヤトウリを、ヨートは頂上部=(新)芽を意味するので、直訳するとハヤトウリの(新)芽の炒め物ということになる。
が、実際には茎や蔓、葉を唐辛子で炒めている。
似たような料理にパクパックブンファイデーン(空心菜の唐辛子炒め)があるが、この店のものには豆鼓は使われておらず、唐辛子もかなり少なめなのであっさりとした味つけになっている。
写真だとハヤトウリは硬そうに見えるかもしれないが、実際には結構柔らかくて口に入れた時の印象はかなり違う。
苦みなどクセがほとんどなく、誰にでも食べられる料理だと思う。
2人でも結構色々食べられるので恐れずトライしてみよう
この店が自分にとって都合がよいのは、中華料理と言ってもそれほどボリューミーでもないことだ。
ほとんどの場合夫婦2人で訪れるのだが、一品料理3種類にスープ、それに饅頭とかを頼んでもたいてい食べ切れてしまう。
店構えは決してオシャレでもないし、サービスもそっけない印象を受けるかもしれないけど、味のほうは間違いないし値段もチェンマイやチェンラーイのような都市に比べればかなりお得感があるので、当地を訪れる人に広くおすすめできる
なお、本当に軽く食事を軽く済ませたいのであれば、村の旧中心部の7-11近くにある「雲南麺餃館」もおすすめだ。
コメント