台北南西の老街が有名な街、三峡
三峡は、台北から南西におよそ20kmのところにある小さな街で、清の時代には街の中心部を流れる大漢渓から淡水河へと続く水運の物資の集積地として栄えたそうだ。
が、現在は美しく整備された日本統治時代の建物が立ち並ぶ老街が有名で、台北市民にとっては日帰りで手軽に遊びに来れるスポットとなっている。
桃園国際空港からだと10kmほどなので、日本への帰路に(時間調整、もしくは渋滞を避けるために?)立ち寄るツアーも多い。
ガイドブックなどを見ると、台北市内からだと台鐡(台湾国鉄)で鶯歌へ出てそこからバスやタクシー、またはMRTの板南線で永寧まで行きそこからバスに乗ると書かれているが、自分とカミさんが泊まっているホテルがある府中(板橋)の駅前のバス停に三峡行きのバスが止まっているのを見ていたので、そこから出発することにした。
ノンビリとバスに揺られることおよそ40分ほどで、三峡に到着。
バスの終着点は少し街はずれだったようで、グーグルマップを使いつつ中心部へと向かう。
この街の見どころは上記の老街と清水祖師廟という寺院がメインのようだが、これらは大漢渓の左岸(東側)、現在の街の中心部は右岸(西側)にある。
が、街自体は非常にこじんまりとしており、どこに行くにも徒歩で十分アクセス可能だ。
三峡の街の中心部は台湾中部のどこにでもある小さな街という感じで、非常ににぎわっていた。
大漢渓にかかる三峡橋は日本統治時代にかけられたらしく、遠目からも風格が感じられる。
まるで、日本の東北地方のどこかの小さな町に残された古い橋のようだ。
傷みが激しいのか、自動車通行禁止になっていた。
日本統治時代の街並みの美しさはピカイチの三角湧老街
三峡の街最大の見どころは「三角湧老街」だ。
幅5mほどの小道の両側に、主に日本統治時代に建築されたものを中心とした商店などの家屋がずらりと並ぶ様は、これまで自分が見てきた台湾の老街の中でも最も美しいと思う。
とりわけ屋根に近い部分の細かな装飾には目を奪われるものがあり、もし歴史建築について詳しい知識があったなら、いくら見ていても飽きないのではないだろうか。
レンガ造りのアーケードは再建されたものと思われ歴史を感じさせる風ではないが、日本統治時代の雰囲気をそのまま残している。
もっとも、その美しさは台北から遊びにくる観光客を見込んで整備された、という側面も少なからずあるようで、現在では建物の多くが土産物店になっており、特に土日祝日には原宿の竹下通りのようなにぎわいを見せるらしい。
そのため、自分がこれまで見て来た老街とは異なり、「在りし日の姿に想いをはせながらまったりと雰囲気に浸る」という気分になれないところは少々残念であった。
が、昔の日本の民間建築がこれだけ美しく保存されているところは台湾国内はもちろん日本でもおそらくないだろうから、台北を旅する機会がある方はぜひ訪れることをおすすめしたい。
台湾のサグラダ・ファミリア「清水祖師廟」
三峡の街のもうひとつの見どころは三角湧老街のすぐ脇に建つ「清水祖師廟」だ。
台湾交通部観光局のサイトと廟に置かれていたブロッシャーによれば、500坪強の敷地を有しており創建は西暦1767年。
その後、1833年の地震で損壊したもののすぐに再建、また1895年には日本軍によって焼き払われたが、これまたすぐに地元の人々によって再建されている。
日本軍の焼き討ちからの再建では、三峡出身の芸術家として知られる大学教授、李梅樹氏が企画・設計に携わり、「寺廟建築の殿堂に」という考えのもと台湾各地から名匠と言われる人たちが集まってきたという。
李梅樹教授は1983年に亡くなったが、その遺志は生き続けており現在でもまだ再建工事が続いている。
いつ再建工事が完了するのか判然としていないことから、スペインのバルセロナにあるサグラダ・ファミリアの名をかぶせて「台湾のサグラダ・ファミリア」と、同時に李梅樹教授を「台湾のアントニ・ガウディ」と呼ぶ人もいるらしい。
ちなみに、祭られている清水祖師は本名を陳昭應といい、北宋の開封府出身の高僧。
福建省泉州安渓地域一帯が大干ばつに見舞われた際、清水祖師が雨乞いをするとすぐに雨が降ったことから、とりわけ天変地異や災いに対する霊験があらたかであるとされている。
そのご利益を受けて、人々が福建省安渓県清水巌に祠を建てそこに隠居したことから「清水祖師」と称せられるようになったらしい。
廟への参道は大漢渓の対岸から続いている。
500坪強もあるので、廟の内部は広々としている。
この三峡の清水祖師廟は五門三殿様式で、そのすべての部分に緻密で精巧な彫刻が施されていることから台湾三大祖師廟のひとつに数えられている。
その言葉が嘘ではないように、廟の内部は彫刻を中心とした緻密な芸術作品でびっしり覆われており、圧巻だ。
廟の装飾に比べると、ご本尊の清水祖師像はごく普通な感じ。
平日でも大変人が多いので静かにお詣りするという感じではないが、日本に帰るため桃園国際空港に向かうツアーがたくさん立ち寄っており、運がいいと(?)それについて行けばガイドの説明をタダで聞くことができる。
名物クロワッサンはちょっと微妙だった
三峡の観光的な見どころは上記2か所なのだが、もうひとつ名物がある。
それは、街を歩いているとやたらと目につく「金牛角」という看板だ。
何かと言うと、クロワッサンだ。
確かに、金色の牛の角のように見えないこともないな~
小さな街の中心部の至るところにこのクロワッサンを売る店が立ち並んでおり、店先からはバターの甘くていい香りが漂ってくる。
ホテルでしっかりと朝食をとって来たのだが、やはりこれだけ有名なら食べないわけには行かない(笑)
人が多く群がっている店で買ってみることにした。
牛の角の形をした帽子をかぶった女性店員が手渡ししてくれる。
店にはチョコレート味、抹茶味など10種類くらいが並べられていたが、原味(プレーン)をいただいた。
食べてみた感想は……う~ん、微妙
日本でクロワッサンと言えば表面がパリパリで中はパイのように生地が層をなしているのが普通だが、ここ三峡の金牛角は外側はかなり固いバターロール、中はバターロールそのもので普通のパンと形以外はほとんど変わらなかった。
最近かなり進歩したとはいえ、全体的にはまだまだ日本人の口には合わないものが多いチェンマイ(タイ)のパンに比べると台湾のパンはずっとレベルが高いのだが、この金牛角はイマイチだった。
形を見てクロワッサンだと思い込んで食べたのがそもそも間違いで、牛の角の形をした焼きたてパンだと思えばじゅうぶんおいしかったのだろうが。
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