昔の村の中心にある老舗「雲南麺餃館」
第2次世界大戦後に勃発した中国共産党との内戦に敗れミャンマー経由で敗走してきた段希文将軍率いる国民党93師団第5軍の兵士とその家族によって作られたタイ最北部チェンラーイ県の標高およそ1,100mの山の中にある小さな村メーサローン。
当初、人々はケシ栽培など麻薬製造および密輸などに携わっていたが、タイから居住権を与えられ国籍を取得するとつながりの深い台湾から寄贈された苗木を使ったお茶の栽培を生業とするようになると観光地化が進み、現在は風光明媚な景色と合わせて茶葉をお土産として買って帰るというのがこの村を訪れるツーリストの典型的な行動パターンだ。
現在、旅行者が集まり開けているのは学校や銀行の集まる標高が一番高いエリアになっているが、自分が初めてこの村を訪れた1989年、中心部は現在の7-11やタラート(市場)があるあたりだった。
今回紹介する「雲南麺餃館」は、その昔の村の中心部にある、名前の通り雲南風の麺と餃子がいただける食堂だ。
さすがに1989年にこの店があったかどうか記憶にはないが、村が今のように大観光地になる前からあり「老舗」と言っていい存在だと思う。
中国色がいっぱいのシンプル造りの店内
上記の通り、店は昔の村の中心部にある。
店の外観は中国風のたたずまいで目立たないが、通り沿いに出ている赤いのぼりが目印になる。
自分のように自動車でアクセスする場合、店の敷地内に駐車スペースはあるがたいていバイクなどが止まっており空いていない。
また、前の道はかなりの急坂になっておりそこに自動車を止めるのは非常に危険。
坂を少し登ったところにある7-11のあたりに路上駐車できるスペースがあるので、そこから歩こう。
店の入口には、歴史を感じさせる雰囲気満点の看板がかけられている。
店内はテーブルが並べられただけの殺風景な造りだが、中国式の漢字のインテリアがあったりして一般的なタイの飲食店とは大きく異なっている。
メニューは2種類のみ。麺に合わせるナムプリックが絶品!
キッチンは、超シンプルだ。
それもそのはず、この店の品書きには2種類の料理しか書かれていない。
上から、バミーキヨウ(ワンタン麺)が普通盛り(40THB)と大盛り(50THB)、それに餃子(40THB)。
これだけだ。
バミーキヨウ(ワンタン麺)
自家製の麺に細く裂いた鶏肉とネギが乗っているだけのシンプルな一品だ。
この手の雲南麺はどこもそうだが、味付けはすごく薄くてそのままだと日本人には少し物足りなく感じるかもしれない。
が、この店には必殺の調味料が用意されているのだ。
それがこのナムプリックだ
メーサローンから25kmほど離れたさらに山深いところにあり、かつてはクンサーの秘密軍事基地が置かれていたヒンテーク(トゥートタイ)村からわざわざ持って来ているというこのナムプリックは、見た目は唐辛子ベースのただのふりかけ状だが辛さはそれほどでもなく、さまざまなスパイスなどがミックスされているのか奥深い味わいだ。
そして、それをどんぶりに入れて混ぜ合わせるとより一層風味が増し、バミーキヨウ(ワンタン麺)としての完成度が一段どころか二段三段と高くなる。
それほど辛くないので、「入れ過ぎかな?」と思えるくらいドバッと入れるのがおすすめだ。
ちなみに、このナムプリックは時々品切れを起こすのだが、ないとわかると店の客の入りが激減してしまうくらい人気なので、ここに来たら食べる前にあるかどうかをぜひ確認してからにしよう。
餃子
メーサローンに限らず、タイ北部にある国民党の落人村の店で出て来る餃子はたいてい油を大目に使いなかば揚げのようになっていることも多いが、ここのは油をあまり使わずにフライパンの上で焼いているのが特徴だ。
逆に油が少なすぎて、しかも蒸し焼きにするわけでもないので日本の餃子のような皮のパリパリ感はあまりないが、個人的には油を使い過ぎたものよりもずっとマシだと思う。
麺にもワンタンが入っているのでダブってしまうところがないわけでもないが、スープに入っているのと焼いたのではぜんぜん食感も違うので、ぜひ両方試してみてほしい。
市場散策の後の朝食にピッタリ
メーサローンはメーサーイやチェンセーン、ソップルアック(ゴールデントライアングル)などと組み合わせてチェンラーイから日帰りで訪れる人が圧倒的に多いが、村の雰囲気をしっかり感じたいのであれば1泊したほうがいい。
特に、付近に住む独自のコスチュームに身を包んだ山岳少数民族が野菜などの作物を路上に並べて売る朝市は他の場所にはない雰囲気で、個人的には村一番の見どころでここを見なければメーサローンに来た意味がないと思うくらいだ。
今回紹介したこの「雲南麺餃館」は朝市から300mほどの至近距離(ただし道は傾斜がきつい)にあり、市場を散策した後にここで朝食(店は朝7時ごろから営業している)をいただく、というのがおすすめだ。
非常に素朴な風味で、これを食べていると観光地化するはるか昔、それこそ雲南からミャンマー経由でこの地にたどり着いた頃から守り続けているのではないか、と思うようなどことなく懐かしい気持ちになってくるから不思議だ。
メーサローンは標高が高くタイとは思えないほど冷え込むことも多いが、特にそんな陽気の日はこの店の熱い麺が一層おいしく感じられることだろう。
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