ネパール人は四川料理よりコルカタ中華が好き
カンボジアのように日本ではニュースになることもないが、ネパールも中国の植民地化が進んでいる。
カトマンズの街には自分が住んでいた頃には皆無だった漢字の看板を掲げた中国人が経営する会社や店が数多くあり、コロナ禍前は旅行者も非常に多かった。
2015年の大地震で崩壊した街の中心部の旧王宮の修復では、アメリカと中国がそれぞれの国旗を描いた大きな看板を掲げて競うようにアピールしているのに対し、日本のは裏の目立たない場所に追いやられていてこの国での影響力の低下を象徴するようだ。
北隣のチベットの人々が中国によってどれだけひどい目に遭わされているかを目の当たりにしているにもかかわらず、ネパール人の中にはそれ以上に影響力が強いインドへの嫌悪感からか、中国を支持する人もいるのだから呆れるというか考えさせられる。
ちなみに、ネパールで一時期殺戮と略奪の限りを尽くしていたマオイスト(毛沢東主義者)は中国とは関係がなく、インドの同勢力の庇護を受けていてその指導者たちはインド国内に別荘を構えるくらい裕福な暮らしを送っている。
そんな中国の進出で、カトマンズの市内にも中華料理レストランがすごく増えた。
その多くは四川料理の店で見たところ客は中国人が多いようだが、自分の友人のネパール人たちは「四川料理は辛すぎておいしくない、好きじゃない」と口を揃えて言う。
では、どんな中華料理が彼らに人気かと言うと、昔から当地にある「コルカタ中華」だ。
「コルカタ中華」とは、その名の通りインド東部の大都市コルカタから伝わった中華料理で、ウィキペディア(インド中華の項)によれば
インド風にアレンジされたチャーハンやチャウメン、チャプスイ、エビチリ、あるいは「マンチュリアン(満洲風)」「シェズワン(四川風)」と名前につく料理を指す。
<中略>
料理の傾向として、ニンニク・ショウガ・醤油・唐辛子・チリソースなどインドで中華料理の特徴とみなされる調味料を使う
<中略>
18世紀末、イギリス東インド会社により国際都市となったコルカタに、インド初の華人コミュニティが形成された。1912年に中華民国が成立すると、華人が増加し、1920年コルカタを皮切りに、各地に華人経営の中華料理店ができた。
とある。
カトマンズは古くからインド(コルカタ)、チベット(ラサ)との3点交易の一角を担う地として栄えており、中華料理は大陸からではなくコルカタから伝わっていて自分がカトマンズに住んでいた1980年代も中華と言えばコルカタ中華であった。
また、確かに大昔インドを旅していてコルカタ(当時はカルカッタと呼ばれていた)に行くと小さいながらもチャイナタウンがあって、そこで中華料理を食べるのがお決まりになっていた。
北部郊外にある人気店China Cooks(中国厨師餐庁)
そんな背景を持つカトマンズのコルカタ中華だが、近年自分の友人たちの評判がよく自分も連れて行ってもらっている店が「China Cooks(中国厨師餐庁)」だ。
店は、カトマンズ中心部から3.5kmほど北東にある。
エリアで言えばラジンパットになるのだろうか、カトマンズからブッダニルカンタに続くマハラガンジ通りをひたすら進んだところにある米国大使館のほぼ向かいだ。
「アメリカ大使館の真ん前にある中華料理レストランって、中国のスパイ活動の拠点とか何かヤバイことはないの?」と友人に聞いたら、この店のオーナーシェフはコルカタから来た中国人で、中身はほぼインド人みたいなものだからだいじょうぶ、との答えが返って来た。
店はおそらく普通に建てられた一軒家を使用している。
帽子をかぶったコック(ジョン・リウさん)の顔のイラストがユニークだが、実際にそっくりだ(笑)
メニューは写真付きで英語のみになっており、料理の数は非常に多い。
いわゆる中華料理だけでなく、モモやトゥクパなどのチベット料理もある。
辛いものにはちゃんと「spicy」と書かれているので、苦手な人にも親切なつくりだ。
住宅を店舗に流用しているので部屋をそのまま個室として使用しており、中には日本でもおなじみの円卓が置かれている。
やさしい味付けで日本人好みの料理が並ぶ
料理は全般的に日本人になじみやすいやさしい味付けのものが多い。
メニューには「spicy」と書かれているものでも、チェンマイに住んでいて普段からタイ料理を食べ慣れている自分から見ると、ぜんぜんマイルドな辛さだ。
自分が行く時にはいつもお友達に注文はおまかせなのだが、出て来たものでハズレと思うようなものはない。
魚の素揚げのネギ炒め
コルカタ式(?)ローストポーク
白身魚のネギソース和え
麻婆豆腐
タイにもある魚の素揚げ唐辛子ソースがけ
肉野菜炒め
炒麺
人数が揃わないと辛いがわざわざ行く価値あり
旅行者にとっては少々不便なロケーションだが、市内からはバスやテンポ(乗り合いタクシー)も走っているので、アメリカ大使館の前で降ろしてもらえば店は目と鼻の先だ。
カトマンズでは自分はネパール料理か洋食を食べることが圧倒的で、長くいるとどうしても飽きが来てしまう。
そんな時には、友達を誘ってコルカタ中華を食べるとどこかホッと癒された気分になる。
コルカタ中華はおそらく日本でも自分が住んでいるチェンマイ(タイ)でも食べる機会はまずないと思うので、せっかくカトマンズに来たのなら話のタネにもなるのではないだろうか。
もちろん、味のほうは間違いなしだ。
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