サワディーチャオ(สวั๋สดีเจ้า)は、チェンマイ語の女性の挨拶(標準語はサワディーカ)です
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連続ノンフィクション小説 ダムロン物語~あるチェンマイやくざの人生~ 第31話~第35話 by蘭菜太郎

ダムロン物語
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これは、私が民芸品やルビー、サファイヤなどの色石を買いつけるために、チェンマイを頻繁に訪れているうちに縁あって知り合い、後に私の親友となったタイ人のダムロンとその家族の話である。
彼の波乱万丈の人生はいまだに続いており話は完結してないが、彼と知り合ってから39年の途中経過として、この話を記することにする。【蘭菜太郎】

>>>登場人物紹介

≪注≫本文中に登場する人物などは、すべて仮名です。また、写真と本文とは一切関係ありません。【ガネッシュ】

第31話:おめでた続き

3月、この時ダムロンの家ではいろいろなおめでたが続いて、人の出入りが多かった。まずはダムロンの末妹、ニーパポンのにぎやかな結婚式があった。「これはちょっと約束が違うのではないか!!」と冗談半分に言いだす奴もいたくらいに、盛装したニーパポンの美しさにみんなが驚き、感動した。25歳という婿殿もえらくハンサムで、カッコいい。これは、誰もがうらやむ似合いのカップルであった。そして5日後、続いて話題の若年カップル、ウイとコップの結婚式があった。ウイは15歳、コップは17歳である。着飾ったウイはまるで天使のようであった。ふたりとも、「見るからに若々しい」を通り越して、とても子供っぽい。こんな子供同士が本当に夫婦としてやって行けるのだろうか、とみんな心配そうだった。

ウイの結婚式の3日後、ソムサックにふたり目の子供が生まれた。女の子であった。長女のノーンラップは障害を持って生まれたので、今回は五体満足であったことを誰もが喜んだ。ダムロンやケオがいないので、お祝いはごく内輪で行い、大げさなパーティーはしないと決まった。いや、もうダムロンは逮捕されてしまっているのだから、そんなことをしても何の意味もないのだ。
翌日、私も家族・知人らとともに病院へ行き、赤子を見てきた。奥方のニンの産後も順調で喜ばしいのだが、誰もが肝心な当の父親であるソムサックのそのふがいなさを案じて、手放しでは喜べなかった。「おそらく、ソムサックはこの妻娘をえらく苦労させることになるだろう」と、誰もが考えた。その朝も、家族・知人の多くが病院へ行くというのに、ソムサックは二日酔いで起き上がることもできなかったのである。ダムロンの仮釈放まで半年足らずに迫ったが、ダムロンはこんなソムサックをどうするだろうか……。お祝い金はソムサックに渡しても酒を飲んでしまうだけなので、みんな病院で直接ニンに渡していた。そして、もちろん私もそうした。

5月の中旬、久しぶりにチェンマイに行きダムロンの家をのぞくと、ケオが出所して戻って来ていた。顔色もよく、元気そうである。奥方も子供達も揃っており、見かけは以前通りであった。「ダムロンがよく帰してくれたものだな。」と冗談を言うと、なぜかそこにいた全員が意味ありげに笑った。私はその笑いの意味を察して、「バカなことをして、ダムロンにさんざん叱られたんだろう?」と聞くと、ケオの隣にいたブンが「ケオが戻ってもう10日以上になるんだが、まだ体中アザだらけだぜ。ダムロンは、今でもケオのことを許してくれていないそうだ。ダムロンは「ダメだ!!」と言ったのに、ティップが身元保証をしたもので、仮釈放されてしまったんだよ。」と言って笑っている。「だって、ボアライがかわそうじゃないですか。子供達だっているのだし。少しでも早く帰って来てほしいのは当然ですよ。決してケオのためを考えたわけじゃありませんよ。」と、ティップが言う。
ダムロンに対してはいつも絶対服従の姿勢を崩さないティップの、珍しい反抗であった。

後に、ダムロンはこの一件でティップを責めることになるのだが、この時はやはりここは奥さんと子供達のためを考えるのが妥当であろうと思い、私もティップの考えに同調した。しかし、そんな考えはまるで甘かったことが、ずっと後でわかる。

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