どんなホテル?
ピン川右岸を走るチャルンプラテート通り沿いにある、チェンマイを代表するといってもよい高級ブティックホテル。
20世紀の初頭、この一帯はチークの取引でたいへんにぎわっており、そのビジネスで財を成した人の邸宅やイギリス領事館などのコロニアル様式の建物が並んでいたそうで、今でもクリスチャンスクールが多く残っていたりするが、このホテルを建設するにあたってもそれらのスタイルを参考にしたという。
かなり大きな建物であるにもかかわらず客室はわずか19しかなく、ホテルの中は周辺の賑やかな雰囲気から完全に隔離されており、まさに「大人のためのホテル」と呼ぶにふさわしい。
特に、結婚記念日とか何かのアニバーサリーをチェンマイで優雅に過ごしたい、というようなカップルにおすすめだが、ホテル全体がチェンマイではまだ数が少ないバリアフリーになっており、足の不自由なお年寄り(自分は杖がないと歩けない母親と車イス持参で一緒に宿泊した)とかでも安心して滞在できる。
ロケーション
チェンマイ市内中心部、ピン川右岸を走るチャルンプラテート通りをアナンタラホテルのあるシードーンチャイ通りとのT字路から南に250mほど行った左手。
TEL:053-252999
WEBSITE:www.pingnakara.com
ため息が出るような外観とロビー
チャルンプラテート通りから見ると真っ白な壁が印象的で30~40mは続いているかと思われる建物からはこのホテルがわずか19室であることが信じられないくらいだが、敷地の奥行きはそれほどなく、実際は非常に細長い建物になっている。
上の写真でもわかる通り、道路に面しても出入口があるのだがそれはスパのもので、メインエントランスは敷地の一番南側だ。
通りからホテルの正面玄関前にに入っていくと右側は駐車スペースになっており、オーナーのものと思われるいつもピカピカに磨き上げられているベンツのクラシックカーが2台止まっている。
建物に目を向けると、思わずため息が出るようなたたずまいだ。
真っ白な3階建てで、上部に半円形の装飾が付けられた窓、四角形の柱が支える数段の階段がついたエントランスを眺めているだけで、これからの滞在がどんなものになるのだろうか、という期待でわくわくすることだろう。
これまた真っ白なコスチュームに身を包んだベルボーイにうやうやしく迎えられて中に入ると、大きなシャンデリアが吊るされた吹き抜けのロビーになっている。
中央には胡蝶蘭の鉢植えが乗せられた木製の大きなテーブルが置かれ、右手には天井から大きな布がかけられており、正面にカウンターが設けられている。
部屋数が少ないのでフロントといってもこじんまりしたもので、常時座っているスタッフは2人程度だ。
チェックインの手続きをしている間に、冷たいおしぼりとウエルカムドリンクが運ばれてくる。
飲み物はレモングラスティーだったが、ほんのりと甘さが付けられた非常に上品でナチュラルな味だった。
部屋には右手の木製の階段を使って上がってもいいが、その先にエレベーターもある。
ロビー左奥には、3~4席の小さなカウンターバーと大きなソファが置かれた絨毯敷きのライブラリーがあるが、おそらくあまり使われることはないだろう。
いつのぞいて見ても隅々まで掃除が行き届いていて、特にライブラリーの居心地はいいのだが……。
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落ち着いた雰囲気の客室
宿泊したのは「ロイヤル・グランデ・デラックス」というグレードの2階の部屋であった。
エレベーターを降りてところどころに大きな鉢植えが置かれ天井にはファンがついた廊下を進んでいくと、クラシカルな雰囲気の取っ手で上が木彫で飾られた開き扉が並んでいる。
扉を開けて客室の中に入ると、洋服かけが置かれたエントランスになっており、小さな植物が置かれた木製のシェードのかかったガラス窓の先に客室が見えるようになっている。
実際の客室に入るには、左手にあるもうひとつの木製の扉を開けなければならない。
内扉の奥の寝室は、およそ20畳ほどであろうか。
右手に、頭上の壁に美しい緑の木が描かれ、幅が広い山岳民族の布のベッドスローのかかったクッションの効いたマットレスがセットされた大きなダブルベッドと足元に2人がけの高級感あふれるソファ、左手にはアンティーク風のデザインの時計とライト、ココナツミルク・キャンディーが入ったガラス瓶が置かれたライティングデスク、バスローブがかけられ床にはホテルのロゴ入りの袋に入った使い捨てのスリッパが入った竹製のカゴが収められたクローゼットがある。
また、右手の壁側にはバスルーム入口のこれまた上部に木彫のついた開き扉、冷蔵庫にお菓子、インスタントコーヒー、電気ケトルやコーヒーカップが置かれたミニバー(エントランスの植木が置かれた部分の下にあたる)の小さな扉が見える。
冷蔵庫の中には紙パックのフルーツジュースが2本と缶のビールに炭酸飲料、チョコレートが2個入っている。
また、その上には豆類のスナック菓子が3袋とビスケットやクラッカーの小さな袋が置かれているがここにあるものはすべて無料となっており、夜のベッドメイキング時に毎日キチンと補充される。
ミネラルウォーターは、ホテルの名前の入ったパッケージのプラスチックボトルに入ったものが寝室と浴室に2本づつサーブされる。
浴室は、これまた真っ白な壁でとても広々としており、バスタブにはジャグジーがついている。
シャワーブースは独立してあり、クラシカルなハンドル式のコックになっているがレインシャワーではない。
アメニティは、シャンプー、コンディショナー、シャワージェルはもちろん、ボディーローションやバスソルト、身体を洗う用のヘチマまでが布製の袋に入れられている。
客室の一番奥は大きなガラスの開き扉になっていて、その先は木の床のベランダになっている。
ラタン風の網目模様のビニールチェアとテーブルが置かれており、眼下にはプールが見える。
正面のホテルの敷地の境界線に沿っては高い木があるので、ほとんどホテル以外の人工的な建造物は目に入ってこない。
大通りとは反対側なので、このベランダに座っていると日中でもほとんど大きな音は聞こえず、実にリラックスした気分になれる。
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北タイ料理セットもある朝食
朝食は、フロントとは反対側の建物の一番北側1階にあるレストランでとる。
客室からだと、フロントの脇を抜けてプールサイドを横切るようにして向かうのだが、その途中にはイスとテーブル、冷たい水の入ったガラスの給水器とカップ、民芸品が入った飾り棚などが適度な間隔で置かれており、プールを眺めながらのんびり過ごすことができるようになっているほか、柱には「ピンナカラの起源」、「象の浮き彫り(ホテルのあちらこちらにある)」といったタイトルの文章が刻まれた額に入った銅板などもかかっていて興味深い。
レストランは、屋内席と白いパラソルがかかった木の床のプールサイド席に分かれているが、おそらく宿泊客以外に利用する人はいないのだろう、とてもこじんまりしている。
従業員も2~3日通えば顔をおぼえてくれるくらいだ。
屋内席の左手にはパンやサラダ、フルーツ、牛乳やオレンジジュースなどの飲み物が置かれていて自由に取れるようになっているが、主要な料理はきれいな皮のカバーの付いたメニューから選ぶようになっている。
大きくは洋食とアジア料理に分かれていて、前者は卵料理5種類、サイドディッシュがソーセージ、ベーコン、ハムなど8種類用意されているほか、フルーツとメープルシロップが添えられたフレンチトースト、パンケーキ、ワッフルもある。
後者はお粥が米粒あり(カーオトム)と米粒なし(チョーク)で具材が豚肉、鶏肉、エビから選べるほか、中国ソーセージや塩漬け卵、小魚などが添えられた白粥もある。
さらにカーオニヨウ(もち米)と焼いた豚のタイセット、ナムプリックヌム(チェンマイ唐辛子味噌)にサイウア(チェンマイソーセージ)、揚げたムーヨー(チェンマイハム)などの北タイセット、エビとチャーシュー入りのワンタンメン、豚肉、鶏肉、エビから具材が選べる焼きそばまであり、ある程度の期間滞在しても飽きることはない。
自分は10日ほどの滞在でほとんどすべてのメニューを食べてみたのだが、どれもたいへん洗練されて上品な味付けになっていた。
特に、ウエイターからすすめられて食べたバナナの葉にくるまれたカーオニヨウ(もち米)がついてくる北タイセットは、ほどよい辛さに調節されているもののしっかりと味の芯は残っているナムプリックヌム、パリッと揚げられたムーヨー、香りがよくいい素材が使われていることがわかるサイウアとどれもが素晴らしい味で、外国人向けのレストランで出されるような腑抜けた味になってしまっている北タイ料理とは明らかに一線を画した出来ばえだった。
このレストランで朝食を取るのであれば、ぜひ一度は試してみてほしい。
従業員のサービスもてきぱきとしており、気持ちのいい朝のひと時を過ごすことができるだろう。
アジアのトップホテル25に選出されただけのことはある
おそらく、たとえば柱の太さや壁の厚さといった基本的な工事やドアの立てつけの調整などのメインテナンスをしっかりやっているのだろう、木製の扉2枚を隔てた外は交通量も多いチャルンプラテート通りであるにもかかわらず、昼夜を問わず部屋の中にいても騒音はまったく聞こえないだけでなく「ホテルの中に、今ほかの宿泊客はいないのかな?」と思ってしまうくらい物音や人の声などが漏れてこず、重厚感がある雰囲気が醸し出されていた。
実際、宿泊客も自分が滞在していた時には裕福そうな白人の中高年夫婦ばかりで、いつも大声を出して騒がしくその場の雰囲気を台無しにする代表格の中国人がまったくいなかったのも、ホテル全体の雰囲気をいいものに保つことに貢献していたと思う。
チェンマイにブティックホテルと名の付くところは星の数(は大げさだが)ほどあるが、徹底的に細部まで造りこまれた芸術と呼んでもいいと思うくらいの建物のシェイプとセンスのよいインテリア、そして落ち着いた感じの従業員のサービスと、これほどまでに素晴らしいところはなかなか見つけるのはむずかしだろう。
2013年には日本のグッドデザイン賞を獲得、2012年にはトリップアドバイザーのアジアのトップホテル25にも選出されているというのもうなずける気がする。
もちろん宿泊料もチェンマイではトップクラスだが、それに見合っただけの素晴らしい滞在できることは間違いない。
お濠の中の旧市街までは少し距離があるものの、ナイトバザールやピン川左岸のレストラン街などは十分徒歩圏内で、日本人ツアー御用達のチェンマイプラザホテルも近いため、日本人向けのレストランやマッサージ店、カラオケなども少し歩けば見つかる。
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