旅行者だった時代を含めて、チェンマイで新年を迎えるようになってから33年がたっている。
日本と違って西暦の正月はそれほど新年、という感じはしないチェンマイだが、今年はプミポン国王が崩御された関係でより一層静かな年末年始となっているようだ。
そうした中でも、やはり新年にまつわる特別な行事というのはある。
自分がチェンマイ市内北西部のサンティタムという地区に家を借りていた時にはワット(寺院)・サンティタムが、元旦の朝に限ってハーイェーク(5叉路)・サンティタムと呼ばれているロータリーを閉鎖して住民と僧侶が一堂に会して行う特別タムブンに参加していて、9年前に引っ越してしまってからもそれは続いている。
タムブンは、「タム(ทำ=積む)」、「ブン(บุญ=功徳)」という意味で、日本語では積徳行と訳されるようだ。
自分がタイを理解するためによく利用している「タイ事典」によれば、
とのことだ。
今年の元旦だった昨日も、早朝6時前に起きてシャワーを浴び身を清めてからバイクに乗って会場へと向かった。
が、家を出てしばらくすると何と雨が降って来た。
乾季の間でも数日は雨が落ちて来る日もあるのだが、今年はそれが運悪く元旦にあたってしまったようだ。
会場に着いても、やはり小降りながら雨は続いている。
そのせいなのか、例年に比べて参加者が少ないようだ。
いつもなら用意されたイスに座り切れない人達がその後ろに二重三重になって立っているのだが、今年はまだイスが空いていて座ることができた。
少しすると僧侶たちがやってきて、ロータリーを取り囲むように用意されたイスに座った。
中には、傘をさしているお坊さんもいる。
例年通り、まずは読経から特別タムブンは始まる。
読経は、お坊さんだけがする時、マイクを持ったMCが唱えた後に参加者が続く時、皆が一緒に唱える時などいろいろあるが、基本はパーリ語(一部普通のタイ語の時もある)なので意味はさっぱりわからない。
こちらに住んでいると色々な機会に耳にするので、何となく覚えてしまっているが。
雨をよけるために、ビニール袋を頭にかぶって読経に加わる人もいた。
雨にぬれるのがイヤで、ロータリーの周囲の店の軒下に避難している人も多い。
読経が終わると、いよいよタムブンが始まる。
MCのおじさんの指示にしたがって、僧侶たちの通り道を開けるようにして人々が並ぶ。
手には、サンカターン(สังฆทาน=供え物)を入れた籠を携えている。
【動画】人々の間を通る僧侶の鉢の中に供え物を入れていく
動画を見ていただければわかるのだが、鉢の中に入れられたものはお付きの寺男が次から次へと取り出してずだ袋に放り込んでいく。
あまりにも雑に取り扱うので「こんなやり方で本当にブン(徳)が増えるのだろうか?」などと自分は思ってしまうのだが。
ずだ袋に入れられまとめられた供え物ピックアップトラックに積まれ運ばれて行く。
供え物の多くはインスタントラーメンや紙パックの飲み物など保存がきくものだが、中には菓子パンやビニール袋に入ったおかずなどすぐに食べなければダメになってしまうものもある。
ワット・サンティタムに何人くらいの僧侶がいるのかわからないが、当然彼らだけではとても食べきれる量ではない。
なので、余った分はタイでは毎年1月の第2土曜日に制定されている(祝日ではない)こどもの日に孤児院などの施設や恵まれない人達に分け与えられるのだそうだ。
1時間ほどで新年の特別タムブンは終了したが、雨で身体がぬれてすっかり冷え切ってしまった。
それでもやはり心はすっきりとして、「今年も無事に新年を迎えられたな~」という気持ちになったのだった。
コメント