チェンマイを建都したマンラーイ王の故郷チェンセーン
チェンマイから直線距離にして北北東に約200km、自動車で4時間半ほどのところのメコン川沿いに位置する小さな街チェンラーイ県チェンセーン。
すぐ近くにあるタイ・ミャンマー・ラオス3国国境の大観光スポット、通称「ゴールデン・トライアングル」(観光用につけられた地名で本来の意味とはまったく異なる)の陰に隠れてしまって近年はあまり目立たないが、この場所はタイ北部の歴史や文化を語る上では絶対にはずせない場所だ。
チェンセーン王国のマンラーイ王は、ここからチェンラーイ、ファーンなどの小王国を次々に征服し、チェンマイにたどり着くとそこを王都として1296年にラーンナー(百万の田んぼという意味)王国を建設したことから、ある意味チェンマイの起源とも言える場所であり、今でも街の中や周辺にはチェンセーン王国の遺構が点々と残っている。
そうした遺構は今はきれいに整備されているほか街周辺の小山の上にはメコン川や対岸のラオスを一望できる寺院も建立されており、自転車をレンタルしてノンビリと観光するのがおすすめだ。
街最大の寺院遺跡ワット・プラタート・チェディルアン
チェンセーンに残るいくつもの遺跡の中で最も有名、かつ中心となっているのが今回紹介する「ワット・プラタート・チェディルアン」だ。
チェンラーイ(メーチャーン)から国道1016号線でチェンセーンに向かうとバイパスとの大きなロータリーにぶつかるがそのまま直進して旧市街の城壁を通り過ぎて200~300m行った右手に寺院はある。
隣はチェンセーン国立博物館だ。
メーサーイやチェンコーン、ゴールデン・トライアングルからメコン川沿いに来た場合は岸にあるT字路からだと700~800m進んだ左手になる。
通り沿いの入口には英語の寺院名がついたレンガ積みの門柱があるし、大きなチェディ(仏塔)も見えるので見過ごすことはまずない。
自分のように自動車でやって来た場合は、駐車場が門の両脇の道路沿いだけでなく門をくぐった中にある。
高さ18m、チェンセーン様式の美しいチェディ(仏塔)
チェンマイのお濠の中の旧市街にも同名の寺院があるが、タイ日大辞典によればルアンは「大きい」「王の」「国の」という意味で、その城都を代表するチェディー(仏塔)のある最上級の格付けの寺院ということになるだろうか。
遺跡に立てられている説明書きなどによれば、チェンセーンの城壁が築かれてから3年後の1291年にセーンプー王がワット・プラタート・チェディルアンの建立を命じ、完成したのは1332年というから実に40年近くかかっていることになる。
遺跡へは、基壇近くのみが残された立派な楼門跡から入って行く。
入ってすぐ正面にウィハーン(本堂)、その右手に寺院名の由来となっているチェディ(仏塔)が見える。
ウィハーン(本堂)は壁だけが残されており、そこに新しく屋根をかけて痛まないよう保存している。
内部はガラ~ンとしているが、奥中央に新しくご本尊が安置されている。
この寺院のシンボルとも言えるチェディ(仏塔)は高さ18m。
周囲24mの8角形の基壇の上に建ち、上部は鐘の形をした典型的なチェンセーン様式となっている。
このチェディ(仏塔)のスタイルがタイ北部に広まり、ラーンナー様式として確立されたらしい。
1950年代に修復されていてどのくらい原型をとどめているのかわからないが、特に雨季に行くと仏塔全体が写真のように苔(雑草?)むしていてより一層風情を感じさせる。
チェンマイにも数多くの立派なチェディ(仏塔)はあるが、なかなかこのような趣の漂っているものはそうは多くないと思う。
ウィハーン(本堂)の周囲には、ほとんど基壇しか残っていない小さなチェディ(仏塔)がいくつも点在している。
ウィハーン(本堂)の先、伽藍の最奥には小さなグティ(僧院)の跡もある。
わびさびにも通じる雰囲気を味わおう
チェンセーン遺跡群の中では最も有名なスポットだが、スコータイのように観光客がウジャウジャいるようなことはなく、いつ行っても静かな雰囲気の中に遺跡がたたずんでいるという印象を受ける。
周囲には大きな木が多数あり緑が多く、特に雨季に行くと日本の古跡のようなわびさびに通じるものを感じることもできるので、自分はチェンセーンに来ると必ず立ち寄るお気に入りのスポットにもなっている。
チェンラーイから日帰りで来ようとするとなかなか難しいと思うが、できることなら早朝に散策するとこの寺院遺跡の魅力を一層味わうことができるのでおすすめだ。
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