チェンマイ市内中心部のワローロット市場やターペー通りからもほど近い、チャンモーイ通りとラーチャウォン通りの交差点付近は、自分がチェンマイに通い始めた1990年代初めころは、主に卸売を行う店が立ち並び、市内でも最も活気あるエリアのひとつであった。
が、時が経つにつれてどんどんさびれていき、現在では夜ともなると人通りも少なくて、道を歩いていると何となく不安を感じるほどだ。
そんなエリアのソイ(小道)を入った奥まった場所に、とても流行っているカーオトム(お粥)の店がある。

店はチャンモーイ通りとラーチャウォン通りの交差点のすぐそばなのだが、かなりわかりにくいと思う。
一番簡単なのは、前者をお堀のほうから来て交差点にぶつかる10mくらい手前にあるソイ(路地)を右折するほうほだろうか。
ソイ(路地)に入ったら少し進んだ左手だ。
ターペー通りからラーチャウォン通りを経由して、逆方向からソイに入って来ることもできる。
店は意外に広く、間口、奥行ともに10mくらいはあるだろうか。
向かって右手にはお粥を作るキッチン、左手には生春巻のショーケースやお土産用であろうか、お菓子などが並べられた安っぽい棚が置かれている。
テーブルは4人がけのものが12~13はあるだろうが、夜10時以降のお粥屋にとってのピーク時ともなると、満席状態になることも珍しくない。

しかし、いつ行っても感じるのだが、店内が汚い。
もちろん客が帰った後にはちゃんと店員はテーブルを拭いたりはしているのだが、床にはゴミがいっぱい落ちていたり店内奥のほうにある従業員用と思われるテーブルには食べかけのお菓子や新聞・雑誌などが無造作に放置されたりしていて、あまり気分がいいものではない。
もちろん、料理を作っているキッチン周りなどはとても清潔に保たれているようだし、食器が汚れていたりするわけではないので、食事をするのにはまったく問題はないのだが、日本的な感覚を引きずったままこの店を訪れるとちょっと驚くかもしれない(くどいようだが、食事をする分には何の問題もない)。
メニューはキッチンを見れば一目瞭然だが、基本的にカーオトム(お粥)一本勝負で、客は具だけを指定して注文することになる。
メニューは店内の壁に大きなボードで張り出されているがタイ語のみで、外国人観光客が来るようなタイプの店ではないので英語とかもまったく通じない。
具は、シークローンムー(豚スペアリブ)、クラパオムー(豚の胃)、サイオーン(豚腸)、ムーサップ(豚肉団子)、ヘットホーム(しいたけ)などがある。
個人的にはクラパオムーが好みなのだが、店のイチオシはシークローンムーのようで、たまに迷っている客がいるとそれをすすめている、というシーンを何度か見たことがある。
店員は、注文が入ると丼を用意し、そこに蒸篭から蒸されたご飯をおたまでひとすくいして丼に移し替え、同時に具材を鍋で湯がき、火が通ると丼のご飯の上に乗せるとともに揚げニンニクやキザミネギなどをふりかけ、最後に熱いスープをサッとかけまわして料理を完成させる。
その手際のよさは、特に混み合っている時などは見ていてほれぼれするほどだ。

肝心のカーオトム(お粥)だが、スープの中に投入されていながらパラパラとしてしっかりとした歯ごたえを保っているご飯がすばらしい。
これは、お米の選び方とかもあるのかもしれないが、おそらく、ご飯を炊くのに蒸篭を使用しているところに大きな理由があるのではないだろうか。
蒸篭で蒸したご飯は水分が少なく、そのまま食べるのにはパラパラすぎて向かないのかもしれないが、スープの中に入れて食べると、逆にご飯が水分を含みすぎて食感を損ねることがなく、「カーオトム(お粥)の中の米飯」という役割をしっかりと果たしている。
スーパーマーケットのフードコートなどで出されるカーオトム(お粥)が、しばしば炊飯器で焚いたご飯を使っているためにスープの中に入れられた時に必要以上に水分を含んでしまい食感を失ってしまっていたり、ひどい店になると、炊飯器の釜の角の形のまま固まったご飯が丼に沈められていたり(ひどい手抜きだ!)いうことすらあるのと比較すると、雲泥の差だ。
スープはスープで、全体的な印象としては比較的薄味(少々化学調味料の使いかたが気になるが)で、夜食としては適度な味加減になっていると思う。
現実にオーダーすることはできないのだが、このスープで臓物たっぷりのガオラオ(麺やご飯の入っていないスープ)を作ったら、さぞかし美味なのではないだろうか。
あっさりした味で量も少ないので、腹具合によっては具を変えて2杯トライするのも楽しいだろう。

ナイトバザール、ターペー門、ワローロット市場(夜市が開かれる)のいずれの場所からも楽々徒歩で行ける距離にあり、ロケーション的にもよい。
夕食を済ませ、ナイトバザールを散策していたら小腹が減ってきたとか、旅行中タイ料理が続いて今日はあっさりと夕食を済ませたい、などという場合には特におすすめできると思う。
だだし、前述の通り店内はお世辞にも衛生的とは言いがたいので、そのあたりに神経質な方は行かないほうがいいだろう。
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